10-11 エリクサーの種ですか?
10ー11 エリクサーの種ですか?
俺は、ハムたちを城の外へと使いに出していた。
城から少し離れたところにある城下町であるクスナの街の宿屋にアル兄とクロたちは滞在していた。
「きゅっ!」
俺が操るハムが人化したクロの前で立ち止まって後ろ足で立ち上がりクロをじっと見つめると、クロは、ハッとした表情になって言った。
「メリッサ、か?」
うん。
さすが、クロだな。
俺がどんな姿になっていてもわかるとは。
俺は、ハムスターの姿を変化させて小さな人形ぐらいの大きさの俺の姿になった。
「メリッサ!」
アル兄が俺を抱き上げた。
「連絡がないから心配してたんだぞ!」
「ごめん、アル兄」
俺は、アル兄とクロとクロノに城の中の様子と現状について話した。
「そうなのか・・」
アル兄が表情を曇らせた。
「奴等がもし、最初から暴力ではなく話し合いを選んでくれていたら、なんとかなったんだがな。もう、この状況では、平和的な解決は難しいな」
「たぶん、ね」
俺は、アル兄の膝の上にちょこんと腰かけて話した。
「それで、クロノに頼みがあるんだよ」
「ええっ?僕ですか?」
クロノが驚いて俺を見る。
「僕には、何もできないよ!」
「いや、できる」
俺は、クロノに言った。
「もし、この事態を丸く納めることができるとしたら、それは、クロノの力抜きではありえないよ」
俺の話をきいて、クロノは、目を丸くした。
「そんなこと・・僕にできるの?」
「お前ならできる!」
俺は、言い切った。
俺は、クロノに悪いと思ったけど、クロノにエリクサーの作り方を教えた。クロノは俺の頼みを聞き入れてくれ、すぐに、宿でエリクサーを作り始めた。
夕方には、クロノのエリクサーは、一瓶分だけ、完成した。
俺は、エリクサーの品質を確かめると、それを使って種子作成能力で一粒の種を作った。
種、というか球根か?
「これを育てて花が咲く頃に、城から1番近い湖の畔に植えて欲しいんだ」
チビ俺とクロノは、すぐに植木鉢を手に入れて、宿の裏の土をもらって種を植えた。俺たちは、たっぷりと水をやると、それを見守った。
種は、すぐに芽を出し、一昼夜のうちに成長しユリの花によく似た蕾をつけた。
「よし!これを湖の畔に植えて!」




