10-7 ゴブリン登場?
10ー7 ゴブリン登場?
ドアが激しく叩きつけられた。
アレイアスの足音が遠くなっていくのを、俺たちは、耳をすませて聞いていた。が、やがて、ラクアスが俺にきいた。
「いったい、何をしたんだ?メリッサ」
「何って」
俺は、静かにラクアスに微笑みかけた。
「シャラには、少しの間、眠ってもらってるんだ」
俺は、城のどこかに身を潜めてこの城の死人たちを操っているシャラの本体を見つけ出しその体を支配下においた。
シャラが完全な眠りについている今、城の中のアンデッドたちは、すべて、ただの動かぬ死骸と化していた。
つまり、城の中には、俺たちと奴等とラクアスの母ちゃん、姉ちゃんだけしか動くものはいないというわけだった。
俺は、アレイスタたちの慌てている様子を窺いながらほくそえんでいた。
奴等、だいぶん焦ってるな。
「キティ、腹へったし、そろそろ飯の準備するか」
俺は、キティに言った。
俺は、小さな巾着袋から干し肉の固まりといくつかの野菜と調味料を取り出し、それをナイフで切って、鍋に入れると生活魔法で炎を出して煮え立たせた。
その間に、キティは、パンを薄く切り分けていく。
俺たちは、死人たちの作る料理を食べるのに抵抗があったのでこの城に来てからは、こうして持参している干し肉とかしか口にしていなかった。
辺りにシチューのいい匂いが漂っていた。
そのとき、急に、日が陰ったかと思うと、何かの影が部屋の中を横切った。
「なんだ?」
俺たちがそれに気を奪われた瞬間に、ラクアスが叫んだ。
「ゴブリン、だ!」
ベランダに通じる窓の外を見ると、一面に緑の肌のゴブリンが張り付いている。
俺たちがそっちに気をとられている間に、背後でキティの悲鳴がきこえた。
「な、鍋が!」
はい?
俺は、キティの方を見た。
キティが震える指先で指し示す方を見ると、そこには、ひょこひょこと揺れながら宙を漂っている鍋が見えた。
俺は、ドア付近にはっていた罠を発動させた。
「わわっ!」
見えない魔方陣を踏んだ何かが罠にかかった。
罠にかかったものを見て、キティが声をあげる。
「あれは・・ゴブリン?」
そこには、鍋を抱えたまま動けなくなっている緑の肌の少女が立っていた。




