10-5 眷族を造ろう!
10ー5 眷族を造ろう!
俺は、生活魔法で水を出すと自分の持ってきた荷の中に入っていたポットへ入れ、それでお茶を沸かした。
キティがカップを用意するのを手伝ってくれた。俺は、カップにお茶をそそぐとそれをラクアスに渡した。
「どうぞ。安全なお茶だから、安心して」
ラクアスは受けとると、それをぐびっと飲み干した。
俺は、ラクアスにおかわりをそそぐと、自分達のカップにもお茶をそそいだ。
「これからどうするんだ?メリッサ」
ラクアスが小声できいたので、俺は、椅子に腰かけて顎の下で手を組み合わせた。
「まずは、庭に出て散歩したいんだが」
「はい?」
「あっ!いた!」
俺は、庭に出ると木の影や花の下などを探して、小さなスライムを数匹捕まえた。
ラクアスは、おかしな顔をしていた。
「なんでスライムなんか捕まえてるんだ?」
「いや、気にするな」
俺は、捕まえたスライムを瓶に入れながら答えた。
「ちょっと、ね」
俺は、部屋へと戻ると持参していた小さな皮の巾着袋を取り出した。
これは、ばあちゃんにもらった無限収納袋だ。
俺は、袋の中からガラスの器やら何やらを出して床の上に並べていった。キティが目をキラキラさせて俺のやっていることを見つめている。
「何をするつもりだ?メリッサ」
ラクアスに問われて、俺は、瓶に入れたスライムを見せて言った。
「俺たちの味方を増やすんだよ」
「なんだって?」
「まあ、黙って見てろよ」
俺は、スカートを広げて床の上に胡座をかいた。
まず、ガラスの器にスライムを1匹いれる。
そこに、特殊な溶解液を入れてかき混ぜ、それを火にかける。
グツグツ煮え始めたら、俺は、ナイフを取り出して自分の指先にちょっと傷をつけた。
「っ!」
俺は、指先から流れる血を煮えたぎる器の中の液体へと垂らした。
そして、呟く。
「我が眷族よ、姿を現し、我に仕えよ!」
煮えたぎる液体の色が黒く変化していく。
火を止めると、それは、ガラスの器の中から溢れだし床の上にタラリと流れ落ちた。
豪華な絨毯の上に黒いシミのように広がるそれを俺たちは、見守った。
5分、10分経ち、それは、徐々に小さく固まっていく。
粗熱がとれる頃には、それは、10センチほどの大きさの小さなハムスターに変化していた。
「かわいい!」
キティが声をあげてそれを両手で包み込み抱き寄せた。
ハムスターは、大人しくキティの手の中へと収まっている。
「これは、俺の分身。俺の眷族だ」
俺は、言った。
「これを何匹か造る。そして、この城を網羅するネットワークを作る」
「これを?」
ラクアスがきいた。
「これは、メリッサ、君の血を使わなくては造れないのか?」
「別に、俺の血じゃなくってもかまわないけど」
俺は答えた。
「ただ、ある程度の魔力を持つものでないとダメだ」
「私の血ではダメだろうか?」
ラクアスが俺に言った。
「何度も君の手を傷つけるのはいたたまれない」
そうなの?
キティも俺に頷いて見せた。
「わたしも、協力します」




