10-3 城で待っていたもの
10ー3 城で待っていたもの
城へと到着した俺たちは、すぐに玉座の間へと通された。
そこで俺たちを待っていたのは、玉座に腰かけた黒い髪に奇妙な赤い瞳の黒衣の若い男とその男の側に寄り添う金髪に青い瞳の美しい女性だった。
「おかえりなさい、ラクアス」
その美しい女の人は、ラクアスに歩み寄るとそっと彼を抱き締めた。
「心配してたのよ、あなたが帰ってこないんじゃないかって」
「ご苦労だった、ラクアス。お前は、もう、下がってゆっくりと休むがいい」
黒衣の男は、ラクアスにそう言うと、俺に向き直った。
「初めまして、ネイジア姫。私は、この国の摂政をしているアレイスタ・ダーク。このラクアスの姉であるグレイシアの夫でもある」
ええっ?
ラクアスの姉ちゃん、結婚してたの?
ハトマメの俺の前で男は、ラクアスに見せつけるようにグレイシアの体を引き寄せ腰を抱いた。
「羨ましい?」
グレイシアは、アレイスタにしなだれかかりながら言った。
「メリッサ、あなたもすぐにこの人のものになるのよ」
はい?
俺は、きょとんだった。
どういうこと?
グレイシアは、クスクス笑った。
「残念だけど、今すぐじゃないわ。まだ、お子様ですものね」
俺は、ムカついていた。
何、いってんだ?
この男は、嘘かほんとかしらないけど、ラクアスの姉ちゃんの旦那なんだろ?
なんで、俺がこいつのものにならなきゃいけないんだよ!
「そんなことは、させない」
ラクアスが固い声で言った。
「メリッサは・・お前には渡さない」
「あら?」
グレイシアがその美しい口許を歪める。
「あなたがどうやってこの子を守るっていうのかしら?」
「それは・・」
ラクアスが言葉に詰まると、グレイシアは、哄笑した。
「そうよね、お前にこの子を守ることなんてできないわよね。自分の家族すら守ることができなかったのですもの。あなたは、また、大切なものを守ることもできずに目の前で奪われていくのを黙って指を咥えて見ているしかないのよ」
「くぅっ!」
ラクアスが拳を固く握りしめているのを見て、俺は、そっとラクアスの背に手を伸ばして触れた。
「ラクアス」
俺は、囁いた。
「気にするな。俺は、大丈夫だから」
「メリッサ」
「それより、はやく部屋に案内してくれないか?」
俺は、ラクアスの手をとってチラッとアレイスタとグレイシアの方を見た。
「姉上さまたちには、失礼しますが、俺、少し、長旅で疲れてしまって。ご挨拶には、また伺いますから今日は、これで、失礼します」
「ふん」
グレイシアが不満げに鼻を鳴らした。
「本当に失礼な子ね」
「まあ、いい」
アレイスタが余裕の笑みを浮かべて俺を見つめた。
「この城の中にさえいれば、どこにいようとも構わん。ゆっくりと休むがいい、ネイジア姫」




