9-12 ラクアスの背負うものは
９ー１２ ラクアスの背負うものは
そうして悪夢は、始まった。
「まずは、兄上が殺された」
ラクアスが低い震える声を絞り出した。
「そして、母上と姉上が囚われた。私は、救おうとしたのだが、逆に奴等に取り押さえられてしまった。奴等は、私を見て言った。
『見つけた』と」
ラクアスは、続けた。
「奴等は、私に命じた。母上と姉上を救いたければ、ガーランド公国の王城へと行き、王女であるネイジア・メリッサ・フォン・デルム・ガーランドを連れてくるように、と」
「はい？」
俺は、ラクアスに訊ねた。
「俺？」
「そうだ」
ラクアスは、頷いた。
「あなたを連れてくるように、と私は命じられた」
「なんで？」
俺がきくと、ラクアスが答えた。
「わからない。ただ、奴等は、あなたを手に入れる者は、世界の王となると言っていた」
マジか？
俺は、愕然としていた。
そいつらの目的は、俺だったっていうのか？
なのに、関係のないラクアスの家族を巻き込んだっていうわけ？
俺は、ラクアスが俺に向ける冷たい目の理由がわかったような気がしていた。
ラクアスからすれば、とんだとばっちりだよな。
「勘違いをするな、メリッサ」
ルーラが、俺に言った。
「これは、お前のせいで起きたことではない。いまだ亜大陸を統治下に置くことがかなわない我ら天魔王連盟の不甲斐なさ故だ。それにラクアスは、あながち無関係とは言えんしな」
「えっ？」
俺たちは、みな、ルーラを見た。
「奴等が欲しがっているのは、『賢者の石』の宿主であるメリッサだ。だが、メリッサが手に入らない場合に奴等が『賢者の石』を手に入れる方法が１つだけある」
どういうこと？
俺は、ルーラを見つめた。
ルーラは、目を閉じた。
「『賢者の石』を別の宿主に移すこと、だ」
はい？
俺は、ハトマメだった。
そんなことができるんだ。
「どうすればできるんです？」
アル兄がルーラにきいた。
「このままだとメリッサの身が危険だ。はやく『賢者の石』をメリッサの中から取り出したい」
「それは簡単なことだ」
ルーラが答えた。
「メリッサが死ねばいい」
はいぃ？
俺は、ルーラの言葉に衝撃を受けていた。
マジですか？
「だが、ただ死んだのでは『賢者の石』は、取り出すことができない。その場合、メリッサは、『賢者の石』の力によってアンデッドと化して生き続けることになる」
ええっ？
俺、もう、普通に死ぬこともできないわけ？
