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男女逆転から始まる異世界冒険譚  作者: ペンちゃん
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盗賊の盗んだ物

 朝、ユウキはいつもどおり宿を出て職場へと向かう。

 早朝は人気が少なく太陽の光を受けながら歩くのは心地がいい。

 すると背後に気配を感じた。

 最近感じていた感覚…しかし、それはいつもとは違っていた。

 ユウキが後ろを振り向くと一人の女性がいつの間にか少し空いた距離に立っている。

 「ユウキちゃん…見つけた…」

 ユウキはすぐさま走り出し、ギルドに走り込んだ。

 ゼイゼイと息をする。

 何だったのだろう、先程のは。

 太った女性が途中まで走り追ってきていた。

 ユウキがギルドの更衣室に入ろうとすると声がかけられた。

 「ユウキさん!」

 振り向くと獣人のカルブが薔薇の花を持ちユウキを見ていた。

 「これっあげます」

 ユウキはそれを受け取ると以前カルブに薔薇が好きだと言ったのを思い出した。

 「これ、僕の為に?」

 カルブは頷き微笑んだ。

 「高かっただろうに、ごめんね。

 そんなつもりじゃ無かったのに」

 ユウキがポケットからなけなしの金を取り出そうとするとカルブが怒った。

 「ユウキさん! 子供扱いしないでください。

 ユウキさんが好きだからプレゼントしたんです」

 ユウキはそう言われ薔薇を見た。

 プレゼントか…

 それにしても…

 「ごめんごめん。

 ありがとう、大切にするね」

 そう言いカルブの頭を撫でた。

 カルブは嬉しそうに尻尾をブンブン振る。

 犬みたいで可愛い。

 更衣室に入る前に薔薇を花瓶に刺してから向かう。

 仕事を始めると、先輩は休みらしく更に上の上司と一緒に仕事をする事になった。

 「ユウキちゃん、今日皆で食べに行くけど来ない?」

 ユウキはポケットの中身を見て首を振った。

 チャラチャラと銅貨と銀貨が音を立てるのみで、食べに行く余裕がない事が分かる。

 「すいません、お金が無いので…」

 「そう…ユウキちゃんは付き合いが悪いわね」

 …

 帰り道、朝と同じく気配を感じる。

 ユウキは隠れながら帰っていたが無駄だったらしい。

 後ろを見るとあの女性がいる。

 どうゆうつもりかは知らないが、関わらないに越したことは無いだろう。

 ユウキは走って裏の路地に逃げ込む。

 そこなら撒けると判断してのことだ。

 が…しかし…ユウキの考えは甘かったらしい。

 結果、相手を撒くことができず徐々に奥へ奥へと迷い込んでしまった。

 「くそっどっちに行けば…」

 追っては足が早い徐々にではあるが迫って来ている。

 やばい…やばい…。

 右に左にユウキの視界が動く。

 「あっ…そんな…」

 行き止まり! 

 すぐさま後ろを向き一つ前の十字路に戻ろうとするが…横からストーカーの追ってが出てきて道を塞いだ。

 「もう…恥ずかしがり屋なんだから」

 女の声は低く首周りの肉でこもっている。

 「なんで追ってくる!!」

 ユウキがそう聞くと女はニターっときみの悪い笑顔を見せた。

 「なんでってそれは、ユウキちゃんが私を好きだからでしょ?」

 意味が分からない、こんな人あった覚えもない。

 「ほら、お釣りを手渡してくれる時手を握ってくれるでしょ。

 好きって事だよね…ユウキちゃん」

 どうするか…顔面に一発いっとくか…少し気が引けるが。

 ただ、相手が女性…魔力を持っており経験上、勝てないと言うことは自分の身で体験した。

 女は近づき徐々に詰め寄ってくる。

 背中に冷たい物が走るのを感じる。

 ユウキも下がり壁に近づく。

 「一応言うが、お釣りを渡すときに手が触れるのは他の客も同じだ!

 お前の勘違いだ」

 それを聞き女は立ち止まった。

 「こんな私に挨拶もしてくれた

 あなたと私は相思相愛…」

 やはりと、いうべきか…

 話が通じない。

 じわじわと迫ってくる女、もう駄目かと思った時に彼女が夜闇より姿を表した。

 「おい

  嫌がっているだろ…。

  その子から離れるんだ」

 その声に太った女が振り返り答える。

 「誰だ、お前…私とユウキちゃんの関係を邪魔するな!」

 フードを被った女性は女のパンチをスルリと躱し女の足を蹴った。

 するとズシャリと音を立てて倒れた。

 フードを被った女性は腰から短剣を取り出し女の首元に当てて脅す。

 「次、やってみろ。

  今度は殺すぞ。

 この男は私が貰う」

 最後の方の言葉は強く、倒れた女を震え上がらせた。

 ストーカー行為をしていた女は立ち去り走って逃げていく。

 「あのっ…ありがとうございます」

 ユウキが頭を下げてお礼を言い彼女の顔を見ると見覚えのある顔だった。

 「だから言っただろ…一人では危ないと」

 そう言いながらユウキに詰め寄る。

 「お前っあの時の!!」

 今、目の前にいる人物、彼女がユウキが現在金欠に追い込まれた現況。

 金貨を盗んだ人物だ。

 女性はユウキにそう言われても恐れもせず詰め寄りユウキを壁まで追いやると壁にドンッと顔横に手をついた。

 壁ドンっ。

 彼女の顔は先程の女性とは打って変わり、月明かりが彼女の美しくどこか奥深くに危険そうな顔を照らす。

 今、壁にもたれ掛かりずるずると下がった状態なのでちょうど顔が真正面にある。

 顔が近く、息が顔に触れる。

 「やっぱ、近くで見ると可愛いなお前」

 「なにを…」

 女性はそのまま近づきユウキの首筋の匂いを嗅ぐ。

 首元がゾクゾクとし顔が熱くなる。

 「いい匂い…」

 耳元でそう囁かれる。

 ユウキはそんな気がおかしくなりそうな状況の中でも金貨の事を思い出し言う。

 「そんなことより!お金をっむぐ……」

 夜闇の中ユウキは彼女に唇を奪われた。

 彼女はすっと離れまるで重力が無いかのように屋根の上まで壁を蹴り駆け上がった。

 「怒ると可愛い顔が台無しだぜ…」

 盗賊の女が去っていく。

 ユウキは一瞬ぼーっと呆けたが。

 「金を返せ!!」

 石を投げる。

 だが当たらない。

 

 なんだこの感情…心臓がバクバク言ってる。

  今まで生きてきて感じたことの無い感情……一体これはなんだ!?


 ニヤケが止まらず 顔が熱い。

 

 ユウキは両手で顔を隠し少しこの場で留まった。

 …

 ユウキは仕事中もどこか遠くを見つめ、ため息をつくようになった。

 先輩はそれを見てニヤリと笑いユウキをからかっては問い詰めた。

 「恋だね」

読んでいただきありがとうございました。

 m(__)m


 ヤツはとんでもない物を盗んで行きました。

 …あなたの心です

  (`・ω・´)ゞ



 ※イケメンに限る 壁ドン

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― 新着の感想 ―
[良い点] こういう恋の始まりもあっていいですね。
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