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男女逆転から始まる異世界冒険譚  作者: ペンちゃん
71/76

71 狼と盗人と

 とある小さな村…そこでは現在狼達の群れを退ける為、戦いを続ける者達がいた。

 

 森側の方角ではコトミが一人柵の外で戦いアイリーンが柵の内側で村人達の指揮を取り互いに一歩も引かない一進一退の攻防を繰り広げている。

 

 そしてそこから少し外れた場所ではリデル個体と呼ばれるブラックハウンドのリーダーが柵を破壊し内側に侵入。

 精鋭の個体を自ら率いり柵の内側の裏手より強襲をかけ村人達の守りを崩壊させんと牙と爪を顕にした。

 

 が…しかし…そこにまるで水を指すかのように一つの矢がその巨大で黒き魔物に向かい放たれた。

 

 …

 

 シーフとリデルは互いに睨みそして走り出す。

 

 そしてぶつかる直前…。

 

 動きを見せたのは両者同時。


 シーフは矢を背より取り出し弓に構えリデルは牙を剥き出しにし飛びかかり頭を砕かんと重心を前脚に移動させ構えた。

 

 もうお互いに引けず一瞬の油断で死が確定する距離。

 

 そんな中リデルが先にシーフの頭に狙いを定め飛びかかる。

 

 巨大な体躯、逃げ場がない上に力で押し勝つ事もできない。

 

 だがシーフは笑それを見て笑った。

 

 「馬鹿が…この私がまともに力比べするとでも思ったか!!」

 

 そうシーフは言い切ると噛まれそうになる直前。

 スライディングの様に足を滑らせ飛びかかってくるリデルを躱すと懐へと侵入した。

 

 空中に浮くリデルとすれ違う中、シーフは構えていた弓を上に構え力強く引き呪文を唱えた。

 

 「エンチャント…イグニス『火』」

 

 その呪文はヘレナの使用する魔法剣の様に属性を纏わせ威力を増大させる事は不可能だがシーフの矢は赤く輝き放たれ、黒い毛皮で守られた胸に深く付き刺さる。


 そしてシーフがリデルの体下を滑り抜けた頃…赤い矢より火が突如として吹き出しリデルの巨大な体を包み混んだ。


 体が燃えると同時にリデルの絶叫がこだます。

 シーフはもう終わりと視線を外し近くにいるブラックハウンドを見た。

 

 「さて残りを片付け…つっ!?」

 

 燃えているリデルから視線を外し背を向けた時。

 咆哮が背より聞こえ暗く巨大な影がシーフの体を覆った。

 

 その瞬間…駆け巡るは死の予感。

 そして次に体がまるで爆発したと錯覚する程の衝撃。

 

 気づくとシーフは空高くへと吹き飛ばされていた。

 

 空中で何度も回転し着地の体制を取ることも許されずそのまま地面へと叩きつけられ鈍い痛みと熱が体を襲う。

 

 「がぁ…クソ……痛てぇ…」

 

 過信による完全な油断。

 魔物との戦歴の無さ。

 それが今、シーフに襲いかかった。

 

 リデルは体を振るい一瞬で火を吹き飛ばし倒れているシーフを見て唸る。

 

 熱く痛い…腕を見ると血が溢れ出ている事が分かった。

 どうやら爪で攻撃されたらしい。

 

 リデルは少しこちらを見ていたがシーフは動かなくなったのを見て自分ではなくアイシャに目を向け足を動かす。

 

 その光景を見てシーフはヘレナなら今頃どうしているのかを想像した。

 ヘレナなら恐らく最初の一撃で倒していたのでは無いだろうかと…。

 それがシーフにとって腹立たしかった。

 

 「…どこに…行く気だ…。

 まだ私は死んじゃいねぇぞ!!」

 

 地面に手をつき起き上がるとシーフは目の前にいるリデルを睨んだ。

  

 血がポタポタと腕から指…そして地面へと滴り落ち血の水溜りができる。

 

 シーフは腕の傷を抑えフラフラと不安定ながらも立ち上がると短剣を握りしめ構えた。

 

 「エンチャント…ポイズン『毒』」

  

 シーフはそうつぶやくと短剣の刀身を薄い紫色を帯びさせ、次に腰の裏に手を伸ばすと煙玉を数玉、指の間に挟み取り出した。

 

 リデルはシーフへとふり返り紫に帯びた短剣とその指に挟まれた煙玉を警戒する様に唸り声を揚げ睨む。

 

 息も満足に出来ない緊張の中、唾を飲み込みシーフは覚悟を決め構える。

 

 先に動いたのはシーフ。

 彼女はまず最初に煙玉をリデルの足元へと投げ走りだした。


 煙玉は地面に落ちると共に煙を撒き散らし辺りを白い煙で包む。

 視界は失われ火薬や煙の匂いが充満していく。

 

 リデルはその煙によりシーフを目と鼻共々において完全に見失い困惑し辺り構わずに暴れ牽制する。

 しかしシーフは躊躇なく煙に紛れると同時に呪文を唱えた。

 

 リデルが煙の中で暴れているせいで煙はもう早くも散り始めている。

 視界や鼻を奪える時間は一瞬。

 

 「アクアドール『水人形』」

 

 リデルは未だ暴れ続けその影響により煙が薄れたらしく人影が瞳に映る。

 

 リデルにとって煙などひと吠えすればかき消せる代物だだがそうしなかった事には理由がある。

 

 誘い込みだ。

 敵が一番油断する瞬間。

 止めを刺したときと自らの敵が自分の策で混乱していると自惚れた時。

 それが野生的な直感で分かった。

 

 故に待つ。

 シーフの空きをつく為に。

 

 そうして人影を見つけたその瞬間。

 リデルは牙を剥き大きく口を開け噛みついた。

 

 口の中に液体が飛び散る。

 リデルは捕らえたと確信し更に力を強め噛みちぎる。

 

 しかしその味は血では無く水…それも肉の無い水の塊。

 

 陽動!?

 危険信号が電光石火の如く頭の中を駆け巡る。

 

 リデルがそう気づきその場から飛びのこうと身を屈めたときシーフは水人形の背後より水が破裂したと同時にナイフをリデルの瞳に向け突き立てた。

 

 「おわりだ…。

 それとさっきから…調子乗ってんじゃねぇぞ犬公!!」

 

 シーフはリデルの目に容赦なく突き刺し怯ませその毒による麻痺効果で動きが鈍くなった事を瞬時に感じ取ると最後に背に飛び乗り弓をリデルの首に構え弦を力強く引き矢を放った。

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