燃やせミニスカート
最近、背後が気になって仕方が無い。
何か付いてきているような気配がある。
振り返っても怪しい人は見当たらない、だけど居るような気がする。
あのセクハラ以来ユウキはこうして何度も振り返ったり唐突に走るという奇行を繰り返す様になった。
「大丈夫? 顔色悪いわよ」
受付嬢の先輩が日に日に疲れた表情になっていくユウキを見て話しかけてくる。
「大丈夫です……ただ、なんだか背後に気配があるような気がして…」
「なにそれ!? ストーカー?
気おつけなよ。
よし分かった、今日は私が一緒に帰ってあげる」
そんなありがたい提案をしてもらい少しユウキは元気になった。
一人で夕方、帰るのは一番怖い。
あのトラウマのせいか、おかげで食欲も低下した。
「本当ですか!? 助かります」
ユウキはその提案をすぐさま受け入れた。
一人より二人のほうが…マシだ。
出来ることならヘレナさんみたいな強い人だと完全に安心なのだが。
まあ、今は信用出来るのは自分一人。
自分でなんとかするしか無いだろう。
周りの環境は変わらない自分が変化するか変えるかだ。
そこで一つ僕も変えることにした。
それはもちろん……このミニスカートの件でだ………。
「あっユウキちゃん、食事に…」
「結構です!!」
ユウキはあの件があって以来、即断る用にしている。
もう…あんなのはごめんだ。
ただ職場で働いている時でさえ空きがあれば冒険者の客に尻を触られる。
もう、うんざりだ。
奴らと来たらこの尻をきっと取ろうとしているに違いない。
一番ひどかったのはお尻を触るのでは無く握られた時だ。
奴らは盗もうとしている!きっとそうだ。
今日!それを終わらせる!
ユウキは仕事終わりにギルドマスターの部屋に訪れていた。
「話があります!
この正装、やめにしてください!」
ユウキは机に近づきバンっと叩いてギルドマスターに詰め寄った。
「えっ? なんで?」
「なんでもかんでもです!
このスカートをズボンにしてください!」
ギルドマスターは頭をかきユウキを見た。
相変わらず太ももやお尻、胸をさり気なく見てくる。
「でも、規則だから」
「必要ないですよね、なら最悪スカートを長く…」
ユウキがそう言い続けようとするとギルドマスターはすっと立ち上がりユウキの隣まで来た。
「いやいや、もったいないよ。
せっかくこんなに可愛いんだから」
パンッ
「冒険者の人達を出禁に!!」
パパンッ
…
まじで、話にならん!
ユウキはあの後、交渉で敗北を喫した。
ここは駄目だ、職場を変えるしかない……しかし、再び見つかるとも、この状況では思えん。
「そういえば、ユウキちゃんは家族はいないの?」
先輩が話しかけて、ユウキははっと思考から戻った。
「あっすいません、ぼーっとしてて」
「もう、ちゃんと人の話は聞きなさい。
家族はいるのって話」
ユウキは少し考えた。
地球にいるであろう家族、親二人。
仕事が出来るようになった瞬間に自分が縁を切った二人。
「いえ、いません。
親は死にました。
今は一人暮らしをしています」
ユウキは真顔になりそう呟いた。
「ごめんなさい、私知らなかったからつい…」
「いえ…大丈夫ですよ」
二人は途中の店で食品を買いユウキの宿に向かった。
食事は出るのだがパンとスープのみしか出ないからだ。
正直あれだけでは辛い。
「ストーカーさんもいないみたいだし良かったわね」
先輩は後ろを振り返り指差し確認をして言う。
ようやく宿の前に付くと子供たちが遅くまで遊び回っていた。
きっと近所に住む子供たちだろう。
するとボールがコロコロと転がって来た。
当然この世界にサッカーボールなど無く、お手製のボールで布をクルクル巻にして縛った物だ。
子供はいい、この世界とは違い男女構わず遊んでいる。
「あっおじさんボール取って!」
子供が元気そうに走って近づきながら言う。
「お……おじ…おじ…さん」
先輩の方を見ると様子がおかしい。
子供が近づくとしゃがみボールを拾って笑顔で先輩はゆっくりとそしてどこか恐ろしく優しく言った。
「おじさん…じゃないでしょ。
お兄さん…でしょ?」
ええっ!…笑顔こっわ…
先輩を見ると笑顔なのだが何処か恐ろしい。
そんな…起こる事か!?
先輩はそんなユウキの気持ちに感づいたのかその笑顔のままユウキを見て言う。
「貴方はまだ若いから。
いずれ…分かるわ…。
男はね年齢が大切なの…」
怖いっ…なんだ…年齢ってそんな物だったけ?
その頃再び子供がボールを転がし今度は通りすがりの女性のもとまで転がって行った。
「あっおばさんボール…」
「誰が!!おばさんじゃあ!!」
あっ…これ
子供たちと一緒で男女関係ない…
これはどちらも通る道だと。
そう静かかにユウキは悟った。
「ふえっ…ふえええええええええええん」
子供が泣く声が大音量で響き渡る。
「いやっ、ちが…そんなつもりじゃ…」
女性があたふたとし、子供の鳴き声を聞いて男性が集まってくる。
「やだ…女の人が男の子を泣かせてるわ」
「誘拐じゃないかしら!」
「急いで! 兵士を呼んで!!」
男達が子供を匿い、女性を囲む。
「私はっ…違っ……」
「この!ロリコン!!」
「変態!」
「男の敵!!」
ユウキはそんな光景を見て、空を見上げ思った。
これからも生きていかねばならないのだろう。
このおかしな世界で……
「どこだー!! ロリコンで変態の誘拐犯は!!」
女性の騎士が風の様にすばやく駆けつける。
「ここよ!!」
「確保ーーー!!」
「いやっだから…私は違うっ」
「はいはい、犯人は皆そういうの!」
彼女は怒鳴った。だけだったのだが変態、ロリコンと汚名をかけられ何故か捕まった……。
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m(_ _)m