68 黒の群れ
ユウキは村を離れ森の中を走る。
この深く迷路の様な森の中、探していた少女イエナを見つける事は奇跡だった。
そして村の子供達に自分は森に向かう事を伝える様に言っておいた為いずれはコトミかシーフが来てくれる…はずだ…。
まあ確かに村がまずかった場合誰も来ないという可能性もあるのだが…今は考えないでおくが吉だろう。
そう…今はただ逃げる事を考えて走らなければならない。
後ろから迫る獲物を取られ荒ぶる黒い死神から。
…
荒廃し森の一部になろうとしている都市オリヒオ…。
そのかつていくつもの武器を産んだ都市の広場で、カルブとヘレナはそれぞれ背を合わせ剣を持ち。
周りを囲むブラックハウンド達と交戦していた。
周囲の景色は廃墟の石で出来た家が立ち並ぶ住宅街だがその家は今や狼の巣窟。
次から次へと出てくる黒い狼にヘレナとカルブは少しだけ苦戦。
ヘレナは剣に魔力を込め剣を光剣に変え素早くそして激しく次から次へと狼の体という体にまるで豆腐に包丁を入れるが如く切り裂いていく。
カルブは荒々しくそして力強く剣を振るい狼を蹴散らす。
そうして一時が過ぎた頃、広場には狼の亡骸が散乱としていた。
「どうした?」
ヘレナは剣の血を狼の体で拭き取りながら首を傾げてスキルカードを見ているカルブにたずねる。
「いえ…前使えたはずの魔法が使えなくなっちゃたみたいなんです…。
使えた時も急に現れたんですけど、消えちゃったみたいで」
ヘレナは少し手を顎に触れ少しするとカルブのスキルカードを受け取りそれを見つめた。
「私も詳しくはわかりませんがそれは恐らくその魔法を使える条件が揃った為では無いでしょうか?
このカードは魔導王が作った代物の一つ…そんな事があっても不思議では無いですから。
その時の感情や体の状態に場面。
もしまたその魔法を使いたければその時の状態を再現すれば出来るかもしれませんね」
そうヘレナは言い終わると歩き始める。
「さあ、行きましょう。
どうやら目的の獲物は足止めの個体を残し村へ向かったようですから」
…
ユウキが森に向かった後の村では緊張と恐怖が張り詰めていた。
村の人々はそれぞれ女も男も老人も関係なく老若男女が思い思いの武器を持ち柵で準備をしいつ襲われても大丈夫な様に身構える。
シーフは村の物見櫓の高台より弓を構え警戒しコトミは手をワキワキとさせながら大胆にも柵の外へと出て仁王立ちしあくびをしていた。
「さぁさぁ!さっさと出て来るっすよ!!」
「コトミさん!?
何してるんですか!
早く戻って来てください!!」
コトミは心配するアイリーンやアイシャの声を無視しあくびを噛み殺すと指ををクイクイと動かし余裕の様子で効果があるのかどうかは分からないが森の方へと挑発を行っている。
それが効いたのかそれとも効かなかったのか森はざわめきを始めとう吠えが森中の葉を震わせた。
総攻撃…。
言葉にすればそうだろう。
ザザザザッ…。
そんな音と共に森の中より黒く大きな狼の大群が現れた。
それはまるで黒い波の様に迫り一斉に柵へと迫ってくる。
コトミはその様子にニヤリと笑い息を吸うと呪文を唱えた。
「トランスフォーム!!『変身』」
コトミの周囲に風が舞い光が体を包み込む。
目の前には魔物の軍勢。
それとぶつかる瞬間、コトミは漆黒の鎧を身に纏いブラックハウンドの群れを空中に薙ぎ払いポージングを決めた。
開幕によるコトミの活躍により一番攻撃が厚く来るであろうと予想されていた箇所は遅い来るブラックハウンドの勢いを弱める事に成功した。
それでもブラックハウンドの攻撃は収まった訳ではない。
コトミが暴れる中央を避け狼達はまるで流れる川の水が岩を避けるが如く柵へと向かってくる。
黒い波はそのまま柵にぶつかる…直前に村人達は槍を柵から突き出し狼達に向けた。
前方で走る狼達はそれを察し止まろうとするが後続に続く狼は止まらずそのまま前を走る狼に直撃した。
それに対し槍に突き刺されそうになった次列の狼達は後ろへ下がり森側へと逃げそれぞれ左右、別の柵へ向かおうとまるでそれは渦の様に旋回を始める。
「今だ!矢を放て!!」
村長の娘アイリーンはそう支持を出すと村人たちは次に狼達に矢の雨を降らせた。
シーフは高台よりそれを見て満足げに笑い弓で矢を放つ。
村人に持たせた武器は木と紐で出来ただけのなんの魔力も持たない弱い武器だが数はある。
村の戦いの出だしは村人達が優勢…。
ブラックハウンドの群れは散らばり集の力を失った。
後は各個撃破していけば勝てるだろう。
そうシーフが思った矢先…森の中から大きな黒い影が現れた。




