66 駆けるティエラ
王都からの援軍は来ない。
そんな事を知る事もなく村人達はただただ王都からの援軍が来てくれる事を願い戦いを続けていた。
狼の遠吠えがあちらこちら…まるで村を囲うかのように広がって行く。
そんな村の中ユウキは戦闘をコトミとシーフに任せ目の前にいた子供達を安全な村の中央の家に連れ向かう。
しかし…子供の一人が言う事を聞いてくれずこの危機迫る状況の中ユウキは立ち往生をしていた。
「いや!私は行かない!
ここに残る!!」
そう叫び意地でも動こうとはしない。
なので仕方なくユウキは無理にその子を抱き上げ他の子供達を連れて避難場所まで向かう。
そうして抱き上げた時、その子供…パルダは怯えているのか震えていた。
そう気づいた時…ふと頭になぜ?と言葉が浮かび上がりパルダが泣いて暴れ振り解こうとしている様子に立ち止まる。
どうやら余程の事らしい…自分の身よりも大切な事があるのだろう。
「どうしたの?」
ユウキは落ち着かせる様にできるだけ優しくパルダに問いかけた。
パルダは涙を目に浮かべてユウキを見る。
「お姉ちゃんがいないの!」
ただその言葉をユウキを見て必死に伝えようとしている事が分かる。
「お姉ちゃん…お母さんの為に薬草を取りに森に行っちゃった。
止めたけど大人の人には、ないしょだって約束して、それでっ…」
それを聞き薬草が無いと話していた村の人達の会話が思い起こされる。
そしてユウキは考えるよりも先に感情を優先させた。
「その薬草が生えてる場所は!?
どこに向かったのか分かる!?」
…
村が狼の群れに襲われる数時間ほど前…王都の街にある冒険者ギルドでは最近現れた冒険者達…デビルウィングと言う新しいチームの噂で持ち切りだった。
曰く美しい男性がパーティーメンバーにいる事。
そのリーダーはおかしな黒い羽のアクセサリーをつけた子供である事。
そして何よりもあの孤高を貫いてきたヘレナ・ウルテゥムがいると言う噂は最も多く話に上がっている。
ティエラはそんなギルド内であたふたとしながら仕事をこなしながらもユウキの噂を冒険者達が話すたび、昨日の出来事を思い返しポケットの中にある白い布を触り微笑んでいた。
「どうしたの?ティエラちゃん。
何かいい事でもあったのかな?」
先輩がニヤニヤと笑いながら見たりと 後ろから抱きつき意地悪そうに問いかけてくる。
「いっいえ! なんでもないです」
ティエラは驚きとっさに白い布を背中に隠し先輩から目をそらす。
「なんにも無いわけないでしょ?
な〜に?
これ」
しかし…抵抗虚しくティエラの背で握られた布をつまみ指摘される。
「これはその…ユ…ユウキさんがギルドに来たら返そうと思って…その…」
「肌身はなさずに?」
「いえ…その…これは…」
ティエラはそれ以上言葉が出てこずはにかむことしかできない。
「それでその女の人はどんな人なの?
私にも紹介しなさいよ〜」
先輩はティエラの困っている様子を見て楽しんでいる様子だ。
「私がサポートしてあげるから女を知らない貴方でもきっと大丈夫。
大船に乗ったつもりでいなさい!」
先輩は腕まくりすると頼もしそうに細い腕でガッツポーズをして見せる。
「えっとその…男の人なんですけど…」
「え……?」
「でも、素敵な人で…」
ティエラは動揺する先輩をよそに頬を赤らめ顔を隠し恥ずかしがりながらそう話す。
「それは…どういう…」
そんな話をし受付の仕事をこなしているととある話しが聞こえてきた。
それはとある村が救援の赤い狼煙を上げているという話。
「おい!見たか? あの煙!!」
「ああ…さっき見たんだが確かに狼煙が出てたな。
あの方角から考えるに…オリヒオの方角だな…確かあそこには小さな村があったか…」
「え…!?」
突如、ガタンと音を立てティエラは立ち上がりその話を聞かんと冒険者達が座る机に向かった。
オリヒオ…かつて栄えた都市の名からつけらてた山脈の名前。
自然が多く深い森の中には廃都と化した大きな都市がある場所。
そしてそこは昨日いい仕事があるとユウキ達のチームデビルウィングに勧めた依頼があった場所…。
そう頭の中に考えが広がるに連れティエラの足は早くなってゆく。
「一体何があったんだろうな…。
話によれば騎士様方は助けに向かわないらしい…。
全く良いご身分だよ」
「まあ、何でもあの魔王軍がついにここ王都に攻めて来たって言ってるやつもいるしそれで動こうにも動けないんだろ」
「あの王子様を狙ってるって噂のやつか?」
それ以上は聞いてもいられずティエラはギルドを飛び出した。
ティエラは走り考える。
国は動かない。
もし魔王達がせめて来ていたとすればユウキさんは今頃…。
昨日お勧めの依頼を聞かれ手渡した依頼の一つ…。
そして今日その依頼にユウキさんは向かってしまった
もしこれでゆうきさんに何かあったら私っ…。
ティエラは走り続けある館にたどり着き力任せに宝石の散りばめられた扉を開け放った。




