65 王城にて
アレグリア王国の王都フィエリテその段々とした都市の頂上にはずしりと王城が都市を見下ろす様にして鎮座している。
その更に上。
城の東塔の最上階に王子の部屋があった。
部屋の内装は豪華だが床には本や紙が散らかり壁には無雑作に地図やメモが貼り付けられており窓は贅沢にも4方に取り付けられており部屋には一つの望遠鏡が備え付けられていた。
そこからは都市の隅々果ては王都を囲む草原…そのまた果てにそびえ立つ山々そして更にその部屋に備え付けてある魔導鏡を覗き最果てを見れば海が見える。
王子は城から一歩たりとも外へ出る事を許されてはいない。
来客に合うことすらも許されない。
故に彼の趣味はその部屋から魔導鏡を使い人々の生活や草原山々に潜む魔物や動物を隅々に至るまで観察する事だった。
そしてユウキ達がブラックハウンドを討伐に向かったその日一番に村の異変に気づいたのも頷ける話である。
「んん!?…黒い煙があんなに沢山…」
王子は白い紙に殴り書きメモと観察を続ける…。
「今までこの時期にあんな煙は見た事無いな…。
焼き畑の時期でも無いし…もしかしてお祭り!?
うわぁ…いいなぁ…私もいつか行ってみたいなぁ…」
そんな事を想像し窓の外を眺めるのがカイヤ王子の日常…。
観察を続けいると村に動きがあった。
赤い煙…救援を求める狼煙だ。
カイヤは珍しく事件が起こった事になぜか嬉しさを覚え扉をバーンと音を立て部屋を飛び出す。
部屋の前にいた二人の護衛は一瞬目を丸くしその後慌てた様子で王子に続いた。
長く続く螺旋階段を降り兵士達が常駐する部屋の横を走って駆け抜ける。
「カイヤ王子!?お待ちを!!
走っては危険です!」
「ごめん!…でも急ぎの用事なの!!
お母さん教えてあげるのー!」
しかし…廊下の直線を走り曲がり角に出た時…ドーンバサバサ…と音を立て何かにぶつかった。
「あっごめん、ルーナ!今急いでるからーー!!」
「ああ…王子様…前貸して欲しいと仰られていた剣の本を…って…。
行ってしまわれた…」
ルーナと呼ばれた女性は廊下の窓から射し込む日の光を浴びない様に影から手を伸ばしゆっくりと本の山をかき集める。
「本当に明るいお方だなぁ…うう…それにしても…。
太陽の光が…眩しっ…!
はぁ…これだから昼は嫌いです…早く地下の部屋に戻って寝たい…」
…
カイヤ王子は更に大広間の階段を降り王座の間に繋がる大きな扉を開け放つ。
「お母様!!大変です!村が救援を求める知らせを出して!!」
中を覗くとどうやら来客中だったらしく怒られる事を覚悟しカイヤはじっとその時を待つ。
しかし現在アレグリア王国の女王ニアーナは軽く手を上げ何事かと少し顔をしかめただけで怒りはしなかった。
来客相手の片目に眼帯をつけ二本の剣を帯刀した女性もまた振り返り綺麗な騎士の礼を見せるのみだ。
そして他に王の間に無言で並ぶ騎士や騎士見習い達もまたその礼に続いた。
カイヤも礼に応える為にスカートを両手で少しつまみ上げ礼に応える。
「あの…お母様…?」
「カイヤ…今は来客中です。
静かにしなさい…。
しかし…救援とは穏やかではありませんね」
女王はそう言うと頷いた。
「カイヤ…続けなさい」
「はい!」
カイヤは嬉しそうに返事を返し噺を続ける。
村から救援の狼煙が上がっていた…それだけを伝えたのだが。
王座の間はそれだけで騒がしくなっった。
「王!ここは私に出陣のご命令を下さい。
私がその場に直接、出向き王国の敵を討ち滅ぼして見せます」
そう一番最初に名乗りを上げた者…それは太陽の騎士と呼ばれ讃えられている戦騎士長、ソレイユだった。
ソレイユは王であるニアーナの前に進み出て膝をつき頭をさげ王の命令を待つ。
しかしニアーナ王女は首を振り周りにいる騎士達を一瞥すると王座に座ったまま口を開いた。
「なりません。
今は魔国との戦時です。
もしこの王都に住む騎士達を向かわせればこのフィエリテに攻め入ってくる恐れもあります。
それに何よりソレイユ…貴方はこのアレグリア王国が誇る最強の矛です。
貴方を失えばかなりの痛手になりえる。
つまり…貴方を誘い出す敵の罠の可能性もあると言うことです」
「しかし!王!
我ら騎士は確かに貴方様を守る盾。
そして人民を守る盾でもある…。
例え罠であったとしても見捨てる訳にはいかぬのです」
ソレイユは女王ニアーナに食い下がりなおも頭を下げ出陣の命令を待った。
それに対しニアーナはため息をつく。
「偵察を出し安全を確保し、ギルド協会の協力をあおいだ上で少数の騎士を派遣する。
これは決定事項だ…」
ニアーナの話を聞きソレイユは渋々「承知しました…」と呟くと玉座を離れ一礼するとツカツカと歩きカイヤ王子にも一礼すると数名の騎士を連れ王の間を後にした。
扉の閉まる音を聞きニアーナは次にと客人である片目に眼帯をした騎士を見る。
「すまないなスビア…久しぶりに顔を見せてくれたのに騒がしくしてしまい…」
「なに気にするなニアーナ。
今は何より戦時中だろう?
普段は騒がしくないこの王都の方が異常だ。
それにしてもその村の件、何なら私が出向いても良いが?」
それを聞き少しニアーナは困った様な迷う様な素振りを見せる。
それを見てスビアは話を続けた。
「何を遠慮する必要がある。
ウルティム家は代々王家を支え続けてきた家系だ。
確かに一番古くそして一番の力を持つが、なに…気にすることは無い。
我らはこのアレグリア王国の盾であり剣…。
王国の敵を討ち滅ぼそう」
「それでも…やはり駄目です。
ウルティム家も重要な戦力…失うわけにはいきません」
そんな話をしあっている二人の会話を聞きカイヤは目を見開く。
スビア・ウルティム…現在のウルティム家当主。
話には聞いていたけど初めて見た…。




