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男女逆転から始まる異世界冒険譚  作者: ペンちゃん
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64 戦いの合図

 やぐらの上で勇ましく弓を構える俺…。

 

 誰もいない遠くの木に構え…そして弓の弦をゆっくり…引く!!

 

 しかし弦はピクリとも動かない。

 

 「あ…あれ…?」

 

 ふふふ…ならば本気で!!

 

 「フン!!」

 

 しかし弦はびくりともする事は無くただ静かに風が吹くのみであった…。

 

 うむ…まず引くことすらできない。

 いや、まだだ。

 

 「ぬぉおおおおおお!!」

 

 俺はシーフとコトミが見守る中、全身の力を込めギリギリ…と音を立てながらゆっくりではあるがついに引く事に成功した。

 

 「お前が頑張っている姿は可愛いがあんまり無茶をして怪我をするなよ」

 

 そんなシーフの言葉を無視し狙いを定める。

 

 よし…後はこの手を放せば!!

 

 ピュンッ!ビィイン

 

 「ひぃっ……!?」

 

 次の瞬間なぜか矢は真後ろでユウキを笑い見物していたコトミの頭上すれすれを通り過ぎ櫓の木の柱に刺さりブルブルと震えていた。

 

 「あり?…俺の矢はどこへ???」

 「危なっ!? ちょっ危ないじゃ無いっすか先輩!!」

 

 後ろにいたコトミが頭を傾げるユウキの手から弓を取り上げると怒った様子で先程のユウキの様に構えて見せた。

 

 「もう下手くそですね先輩は、貸してくださいっす!!」

 

 そう言うと軽く弓の弦を引き…。

 

 「これはこうして…こうやるんすよ!」

  

 ビュンッ!  

  

 「はわわわ…」

 

 どういう訳か次の矢はコトミの横にいたシーフの頬スレスレをかすめどこか彼方へと飛んでいった。

 

 「あれ?…私の矢はどこいったすか……???」

 

 思わず変な声を出してしまった為かシーフは顔を赤くしコトミが持つ弓を慌てて取り上げ二人を見る。

 

 「お前らにもう弓はかさん!!

 危なっかしくて仕方がないからな。

 全く…」

 

 シーフは弓をもう取られぬようにと背に立てかけると再び魔導書を読み始めた。

 

 どうやら弓は無理らしい。

 ならどうすればいいのだろう。

 このままだと俺はお荷物確定だ。

 

 頭を抱えどうすべきかと困っているとシーフが口を開いた。

 

 「そういえば…ユウキ、お前この魔導書の表紙を読めてたな…。

 これは古代魔法文字で書かれてあるのだがどこで覚えた?」

 「へ……?」

 

 それは助け船…いや希望だ。

 

 まさか…いや…これは…。

 いつか読んだ事のある最強系主人公への道が切り開けたのでは無いだろうか…。

 

 だってそうだろう?

 良くは分かってはいないが俺は無学の状態で様々な文が読める。

 そしてこの世界には魔導書なる物が存在する。

 

 これはつまり……。

 

 勝った…勝ち組主人公確定だぁ!!

 

 「で…どうなんだ?

 私は学校に行く金や暇は無いから独学だが…お前は一体どこで学んだんだ?」

 

  シーフはユウキにそう問いかけ続ける。

 その問いに俺はこう余裕を持ってこたるのだ。

 

 「ふっ……それは天性の才能ってやつですよ…」

 

 神様バンザイ! たまには神様とやらも良い事をするではないか。

 

 そう考えこれからの第二人生を思い浮かべ想像を膨らませる。

 ピンチの女の子を救う俺…。

 魔王を一撃で倒しちゃう俺…。

 英雄となりちやほやされちゃう…そう俺!!

 そんな最強系主人公に俺はなる!!!

 

 「先輩よくそんなへんてこなミミズみたいな文字読めるっすね」

 

 そう妄想を頭の中で走らせていた時コトミがそんなおかしな事を口走った。

 

「いや…お前は読めるだろほら…神様の加護的な奴で言葉とか文字とかさ」

 

 そう俺だけでも無くこのコトミもそうなのだ。

 まあ俺と違い本物の主人公らしいのだが…。

 

 しかし…コトミは首をかしげこう言葉を続けた。

 

 「いや普通の文字は確かに読めるっすけどそんな字は読めないっすよ?」

 

 これは…?

 俺だけの特権?と言う事なのだろうか…。

 

 思考を巡らしながらコトミを見ると真っ直ぐ純粋な笑みと視線を見て嘘では無い事が分かった。


 「神?…なんだお前もそんな物を信じてるのか?

 本当に似ているな…」

 

 シーフがそんな気になる事を呟いた時…やぐらの真下にいた子供達の喧嘩が聞こえた。

  

 ただの子供の喧嘩…と思ったのだがどこか様子がおかしい。

 俺はすぐさま櫓から降りて子供達の口喧嘩を仲裁するべく割って入る。

 

 「だめだよ!今森に行くなんて!

 お父さん達が絶対に駄目って言ってたでしょ!!」

 「でも……」

 「そうだよ!大人の人達に任せよ…ねっ!

 パルダ。

 貴方はまだ小さいしそれに男の子でしょ?

 危ない事はしない方がいいよ」

 

 男女数名の子供に取り囲まれているのは一際小さい男の子だ。

 どうやらこの子が何やら問題の中心らしい。

 とにもかくにも殴る蹴るなどの喧嘩で無くて良かった。

 

 「どうしたんだい?」

 

 俺はしゃがみ子供たちの目線に合わせ柔らかな口調で話す。

 その行動は正解だったらしく子供達は我先にとぐちゃぐちゃに話をし始めた。

 

 正直分からない。

 だが…話は次の瞬間に収まった。

 

 それはなぜか…。

 

 それは…。

 

 ワオーーン!!!

 

 この村に再び危機が訪れたからだ。

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