63 廃都
森の中ではヘレナとカルブが歩き森の奥へと進む。
辺りに魔物の気配は無く小川の流れる音…木々のせせらぎの音が辺りを満たしていた。
「ヘレナさん、これからブラックハウンドを狩るわけですけどどうやるんですか?」
カルブは耳と鼻をピクピクとさせ周囲を警戒しながら聞く。
「話しに聞くところターゲットはかなり大きな群れで…んー。
…正直私達だけじゃ全部倒すのは厳しいんじゃないかなって…?」
ヘレナはそう心配するカルブを見ながら歩き落ち着いた様子だった。
「問題は無い、確かに私達二人では全てを狩りつくすのは無理でしょう。
だがそれが目的ではありません。
私達はアイシャ殿が見たと言う群れのリーダー核であるリデル個体とその周りにいる奴らを狙います。
そうすれば群れの機能は著しく低下しやがては崩壊するはずです」
そう聞きカルブはおおぉ…と目をキラキラとさせ尊敬した目でヘレナを見る。
「さすがヘレナさん!
確かにそれならできる気がします!!」
そう話をしながら進むと森を抜け不思議な場所をカルブは見つけた。
そこは古く巨大な遺跡。
「ヘレナさん…あの私達なんだかすごい所に来ちゃいましたね…」
「…遺跡ですね。
確か昔にこの周辺にはかつて魔鉱石が多く取れる場所があり、鍛冶に長けた者達が集う街があったと聞いたことがあった様な」
巨大な壁に囲まれた遺跡…かつてはこの壁が魔物を阻んでいたのだろう。
しかし今では所々崩れ落ちつるや根がめぐらされどこか寂しい雰囲気を感じる。
「きっと昔は賑やかだったのかな?」
壁の崩れた場所を抜け遺跡の中に入るとそこは石造りで作られた巨大な街だった。
中央には巨大な穴が開いておりその周囲には荒廃した家々が建ち並んでいる。
「こんな大きな街が森と一体化してる…本当に長い間誰もここに来てないんだ…」
カルブは廃墟となった家や施設を見て回り鼻を引く付かせる。
「近い…ヘレナさん!近いよ!
魔物の匂いがする…。
たぶんここもさっきまでいた見たい。
もしかしたらもう私達見つかっちゃったのかも…」
そうカルブが不安そうに呟く。
廃墟となった家の中を見渡すと散らかった食器に無造作に地面に落ちている埃かぶった人形を見た。
「もしかして…この街ってブラックハウンドのせいでこうなっちゃたのかな…?
あの村みたいに襲われて…」
カルブはそう考え剣を鞘の上から握り意思を硬める。
しかし…ヘレナは外の外壁や街を見渡しある話を始めた。
「いいえ…この街は昔突如として神喰らいと呼ばれた巨大な狼の獣が滅ぼしたと聞きます」
外壁や街は大きく崩れた跡が残っている…恐らく話に聞く様な巨大な魔物が暴れたのだろう。
オオーン…。
街を見渡していたその時…遠く?いや…近くで狼の遠吠えが聞こえた。
…
村では柵を作る音や人々の声が響き渡っている。
村人達は柵などの物を作る技術があるらしく柵を手際よく作っているのが目に見て分かる程に早く作り上げていく。
それどころかヘレナの指示以外にもどうやらスパイクと呼ばれるまるでヤマアラシの様なトゲトゲを木で作った防衛設備を柵の外側に作っている者達もいるらしい。
男や子供が担当している矢や槍も素材が壊れた家々から取った廃材にも関わらず良い出来だ。
そんな村を高所である櫓から見下ろし俺は心地のいい風を感じ見張りに努めた。
村では子供達が作業に飽きたのか走り回り遊んでいる。
どうやら死と隣り合わせ…。
隣人に死神がいる生活で慣れると人はかなり強くなれるらしい。
この非常時…いつブラックハウンドが襲ってきてもおかしくなは無い。
そんな状況にも関わらず世界は穏やかな時を過ごしているらしい。
空はからりと晴れ渡り森は風になびかされ歌う。
都会ではこんな景色…見た事も感じた事も無かった。
どこまでも続く森の緑に何も遮る物の無い空に音…。
しかし…こんなにも清々しいと心の悩みが顕になってしまうらしい。
自分は今何をしているのか…誰かに必要とされているのか…。
俺はこのデビルウィングなるパーティーのお荷物ではないのか…。
「何もしないでください…か…」
そう呟きふと横を見るとシーフの弓が目に入った。
弓…そう言えばこの世界に来て次の日にヘレナさんにクロスボウと冒険者セットを買って貰った…けか…。
これなら俺でも力に慣れると踏んで買おうと…いや…買って貰ったが結局1回も使うことも無く何処かに行ってしまった。
しかし…弓……弓か。
「シーフさん」
シーフは俺にそう呼ばれ本を開いたまま床に置き俺を見る。
「その弓と矢…」
「ん?…これがどうした?」
シーフは弓と矢の入った矢筒を取ると持ち上げて見せた
「少し貸してもらっていいですか?」
俺はそうして弓を貸してもらい試しにと誰もいない遠くの木に向けて勇ましく弓を構えた。




