61 リデル個体
ミシッバキバキ
「キャー!!!」
「やばい!こいつら家の中に逃がした人達を狙ってる!
手を貸してくれ!!」
「クソっ!
王都の騎士達を呼びに行ってくれたアイリーンは無事なんだろうな…」
今までこんな事は無かった…。
そんな思いが頭を巡る。
村に在留していた騎士はおそらく…やられてしまっただろう…。
奴らはずる賢い…最初に強そうな騎士…そして馬を狙った。
それも夜中に…。
最近…ブラックハウンドの目撃と家畜の被害が多発していたが人を襲う事は無かった。
おそらく理解しているのだろう…。
死者が出れば早急に人達は結束し自分達は狩り尽くされると。
故に彼らは待った…。
群れが大きく強大になる事を。
村は悲鳴と喧騒に包まれている。
男や子供、老人は家に逃げ込み女はそれぞれの武器を持ち黒い獣に立ち向かう。
しかし…黒い獣たちは数が多い上に一頭一頭が家の柱を食い千切ってしまう程に強い…。
現村長である若頭であるアリシャは槍を構え黒い狼が近づけない様にと火を放ち人を集め村の中で一番大きく頑丈な自分の家に守らなければならない人達を入れていた。
村人の女達は恐怖で顔を染めながらも槍を獣に向け勇気を振り絞り戦う。
彼女達も夜通し戦い疲労が蓄積してしまい今にも倒れそうな程に弱りきってしまっている。
もうこの戦線は長くは続かない…。
家族を守る為に死にものぐるいで戦う事のできた気力も今や付きかけている。
そんな中…。
いや…そんな中だからこそだろう。
アリシャは黒い獣達の中にひときわ大きく小さな小屋程はあるのでは無いかと思わせる程の動く巨大な黒い塊を見た。
ブラックハウンドのリデル個体だ。
リデル…いわば群れの中のボス…群れが大きくなる時は必ずリデルと呼ばれる比較的大きく強靭な強さを持つ個体がいる。
奴はあざ笑うかのようにそしてまそれはまるで王者であるかの様にゆっくりと周りに大きな個体を引き連れこちらに向かってくる。
「ちくしょう…」
終わりだ…。
奴らはこの時を待っていた…。
弱い個体達に夜中に村を襲わせ村人を一箇所に集めさせ弱りきった所に自らが率いる精鋭部隊で止めを喉元に突き刺す。
奴らは狩りをしていたのだ…。
そう絶望しきった時…。
遠くからあるワオーーンと同じブラックハウンドと思われる遠吠えが当たり一帯に静かに響き渡った。
…
村長の息子のアイリーンの馬に乗せてもらいユウキは村へと急ぐ。
馬は風を切り猛スピードで進んでいるのだが…それでも皆についていくのがやっとだ。
「今日の朝方…まだ暗い時に奴らが現れました!」
ヘレナに聞かれアイリーンは風の音に負けない様にと大きな声で叫び状況を説明していく。
急に襲われ村が混乱した状況に陥った事。
襲ってきたブラックハウンドの数えきれない程の数…。
そして唯一生き残った馬で自分にもなにか出来ないかと考え独断で村を何とか抜け出し逃げて来たこと。
そして追われていた時の恐怖を語った。
「分かった!!
それだけの情報が聞ければ十分だ!
ヘレナ、カルブ、コトミ!!」
ヘレナもまた走りながら速度を落とし走る馬と並走し全員に聞こえるように叫んだ。
「ユウキ様を任せたぞ!
私は先に向かい村の様子を見てくる!!
一刻を争う事態だ!」
そう言い切るや足に光を纏わせると再び…いや更にスピードを上げ駆け抜けて行った。
「速すぎだろ……」
ヘレナが走り去る姿を見てシーフはそうこぼす。
確かにあれは…速い…。
そんな事を思っているうちにヘレナは姿を消した。
それからしばらく走り続け数十分程。
遠くに黒煙を帯びた大きな煙を見つけた。
「あれです!
あの煙の下に私の村があります!
皆…お願い…。
無事でいて…」
…
村に到着するとそこは荒れ果て、未だに火が道で燃えていた。
そしてブラックハウンドの姿は無く。
人々は…。
「アイリーン!!無事だったか!」
無事だった。
村のあちこちから村人が集まりアイリーンとその周りにいる俺達を囲んだ。
…
アイリーンと村人…そして村長であるアイシャは共に無事を喜び…この襲撃で失った人々を心より嘆き悲しみ埋葬した。
そうした事を終え村に到着してから数時間後…。
村長のアイシャは簡易的なバリケードを作るようにと村人達に支持を出し本人は俺達に何が起こったのかを村の中を見て回りながら説明してくれた。
その話で分かった事は、どうやらブラックハウンドの群れはヘレナが到着するより前にこの村を去ったと言うことだ。
たった一匹の遠吠えを聞いた瞬間に群れのリーダー格であるリデル個体はいきなり自分も遠吠えを発し群れを率いて逃げ出した。
その説明を聞きカルブは目をぱちくりとし話し始める。
「それ、私達が逃した個体のものです。
強い奴が来たって言ってましたから…」
それを聞き皆も目をぱちくりとさせカルブを見据える。
「言ってた?」
「はい…?
言ってたじゃないですか…」
どうやら…カルブはブラックハウンドの言葉が分かるらしい。
狼の獣人だからだろうか?
耳も狼のようにツンとしてて遠くの音も拾うのだろう…。
「なんですか?
ユウキさん…私の耳を触ったりして…」
「いや…別に可愛いなーって思っただけ」
「かわいい…?むぅ…。
子供扱いしないでください!!」
かっこいいでは無くかわいいと言われカルブは不満げだったが。
カルブはそれでも頬を赤らめ。
まるでもっと触って欲しいと言っているかの様に頭を手にこすりつけ俺に近づいた。
なんだろう、なんだか懐かしいな…家の近所にいた飼い犬もこうして甘えて来たものだ…。
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