46 唸れカルブ
まだ…私は護れる…
カルブは、スキルカードを少し触るとカードを地面に捨て、自分の中に流れる変化を体で感じた。
ヴェルデスタは直感でそれを感じたのかすぐさまカルブに攻撃を加えようと再び突進の態勢を取る。
それに対しカルブは息を吸い大きく叫んだ。
「負けないって決めたんだ!
ユウキさんの前でもうかっこ悪い姿は見せられない!!」
それは自分に言い聞かせる、鼓舞する言葉…。
ヴェルデスタが再び消える。
「大切な人達を護る為に手に入れた力…。
もう ユウキさんが遠くに行かないように。
もう誰も…失わないように…」
カルブは剣を前に構え大声で叫ぶ…新たな力の名を。
「バーサークビースト!!…『狂獣』
モード…ベオウルフ!!」
そう唱えた突如、カルブの足元に赤く光る魔法陣が形成しその足元より煙が出現、カルブの姿を消した。
しかしそれでもなおヴェルデスタの突進は止まることも無くカルブに向け恐れを知らず狂気を纒い突き進む。
そしてヴェルデスタが煙に入った瞬間大きな音と共にその止まることの無かった攻撃が受け止められる事を悟った。
ブルルルル
ガルルルル
獣の唸り声が聞こえた突如、彼らの衝突による衝撃波で煙が晴れカルブの姿が露わとなる。
そこにいる少女…いや彼女は歳をとり、美しく成熟した女性の姿となっていた。
受け止められた上、更にその変化には驚かされる。
そして何より力だ、今の自分、戦場で暴れ敵を怯えさせ無敵とまで言わしめた力が止められた。
「くっならば!」
斧で! 粉砕するまで!
そう考え斧を振るったヴェルデスタであったがこれにも驚愕させられた。
今いる少女は振りかざされたその一撃を受け止め更には力の押し合いとなったそれを力で弾き飛ばす。
「っう、調子に乗るな!!」
ヴェルデスタは諦めずそのまま再び斧を振り回しカルブに向け連撃を放つ。
「悪いけど僕…ユウキさんの為にもここで負けるわけにはいかないんだ…」
静かにそして冷静にそう話すと
カルブは敵の攻撃を見て剣を斜め下に向け構えると同じく連撃を繰り出した。
弾け飛ぶ火花の嵐、剣と斧が高速で混じり合い爆音を響かせ合う攻防。
もはや二人の戦いに踏み込める者はおらずそしてやがて徐々にではあるがカルブが足をジリジリと踏み込ませヴェルデスタの斧を弾きその攻防を収めた。
なんだ…この馬鹿げた強さは…。
ヴェルデスタはすぐさま弾かれた斧を戻し再び連撃を行う。
そしてそんな一瞬でも集中が切れればすぐにでも決着がつく戦いの最中…昔の事を思い出していた。
…
私が復讐を喰らって世界に蔓延する怒りや憎しみを背負ってやるよホープ。
それをどうやるのか考えた事あるのか? ヴェルデスタ。
当然ある!私が魔王になったらまずこの世界を支配してさ、戦争を無くして怒りや憎しみを私の力で無くしていくのさ。
不可能は無いなんてったってこれが私達唯一の願い、二人の夢だからな。
神ってのが本当にいるなら叶えてくれるさ。
しかしその過程で行われた戦争は憎しみや怒りはさらなる怒りと憎しみを生み出し…更には友を多く失う結果となった。
絶望した……世界に蔓延るそれは強大でそれを消そうとする行いは個人などではどうする事もできない願い・夢だった。
どうしようもない他人の怒りが憎しみが…頭になだれ込んでくる…友が腕の中で死ぬたびに…世界と人間に向けた怒りと憎しみが膨れ上がっていく。
私もまた…彼らと同じだった…。
復讐に生きる獣。
私や魔族は人間を人間は私や魔族を憎んでいる。
…
復讐を纏ったヴェルデスタは復讐心をむき出しに力に任せ斧を振るい。
対するカルブはその逆で復讐心は消えユウキへの想いが心を満たしている。
目の前の子狼からはなんの怒りも憎しみも感じない。
それが痛いほどヴェルデスタには分かってしまう。
そしてそれを知るやヴェルデスタはブツブツと言葉を紡ぐ。
「憎しみ悲しみ怒りそして起こる復讐の連鎖…そんな物が渦巻く世界を地獄と呼ばずしてなんと呼ぶ…。
我が名はヴェルデスタ
この世界にはびこる全ての復讐を喰らい憎しみや悲しみの無い世界へと導く者…」
そして叫んだ。
「貴様如きにこの私を止められるものか!!」
「止める…止めて…みせる…!」
カルブは連撃のすえ、再び斧を弾き飛ばすと今度は間合いを詰め大きく腕を上げそのままヴェルデスタを斬りつけた。
その一撃はヴェルデスタのもう片方の角を斬り纏う鎧をも切断し大きな傷を追わせ致命傷を負わせる事に成功する。
「見事だ…」
ヴェルデスタは数歩よろめき…下がると斧を投げ捨てカルブに向かい歩き始めた。
「私の負けだ子狼……いや…カルブ」
カルブは警戒を解くことなく剣を構えるがそれには目もくれずヴェルデスタは歩きユウキのもとへ行くでもなくそのまま横を通り過ぎていく。
そしてその道中ヴェルデスタは自らの傷口に手を当て手の平を広げるとそこに広がる血を見た。
「争いとは惨たらしいものだな…。
剣を振るえば肉は裂け血が飛ぶ。
魔法を使えば多くの人が奪われ友が家族が死ぬ…なんて話になる。
だが…それらは良い事だ。
その悲しみや虚しさ、残虐さがなければ、我らは憎しみと言う名の化物に喰われ。
その快楽に溺れてしまうだろうから」
そうひとり言を呟き終えると王座を過ぎ中華の街並みが一望できる舞台へと足を踏み入れた。
「なっ!? 止まってください!!
死ぬ気ですか!?
まだ止血すれば…!」
カルブがはっと気づいた時にはすでに遅くヴェルデスタは高くそびえ立つ城の舞台から自らの身を投げ出し燃え盛る街の中へと消えていく。
復讐や憎しみが私を大きく変えた
復讐喰らいか…
笑わせる…
憎しみに喰われ夢を忘れ操れられていたのは自分だと言うのに…
数多くの戦争で仲間の死を前にし
世界を人間を呪った。
そして同時に多くの者に呪われた…最後くらい復讐喰らいらしく…。
ホープ…そして共に夢を描き語り合いそして共に戦った勇姿達…今…お前たちのもとに行く…。
やっと私は復讐から解放されたのだな…。
ヴェルデスタは体に風を感じながら魔力を解き…穏やかに笑った。
我が名は魔王軍幹部十二星龍が一人ヴェルデスタ 復讐を喰らい復讐無き世界を夢見る者なり…
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