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男女逆転から始まる異世界冒険譚  作者: ペンちゃん
44/76

44 砦の攻防

 カルブとヘレナ。

 彼らが王宮にて戦いを繰り広げている中。

 シーフは一人、門の前にいた兵達を弓で狙いを定め一人…また一人と姿を見せず影より仕留め続けていた。

 

 シーフに力は無い。

 だが、隠れる事と逃げる事は得意だ。

 それ故シーフは堂々と表には出ず砦の下にいる兵を狙い撃ちにしては消えてを繰り返している。

 

 結果、それは混乱を誘い出す事に成功した。

 シーフは姿を見せない上、攻撃をしては移動を繰り返していた為、敵の数その位置が掴めない。

 兵士達は次は自分ではないかと恐怖し攻めにも守る事にも対応出来ておらず指揮は見るからにガタ落ちだ。

 

 そんな状況を受け敵である魔王陣営の指揮官は砦にいた兵を一時的に下へ移動させ、対処せざるを得なかった。

 

 「くまなく、探せ!

 敵が複数はいるはずだ! 探し出して仕留めろ!」

 

 しかし…シーフはそれを砦の中より見て笑う。

 

 「全く馬鹿な連中だ。

 本命はこいつだってのにな…」

 

 人の家に忍び込むはシーフの十八番と呼べる所。

 シーフは砦の兵が少なくなった所を見るや否やどうやって入ったのか不明だが砦の中にある目的の部屋に誰にも気づかれず実際に侵入して見せた。

 

 「さて…下に兵が集まった事だし……。

 開戦と行こうか!!」

 

 シーフはそう言うとグイと木でできたレバーを引く。

 

 するとゴゴゴ…と地響きを鳴らし重く分厚い鋼鉄の扉がひとりでに開き始めた。

 

 …


 「これは一体何事だ!?」

 

 砦の上でハルモニアの軍勢を見ていた指揮官のクエルは叫んだ。

 

 すぐさま兵を扉を開門させる部屋へと確認に向かわせたがそこには黒猫が一匹窓際に座っていたのみで他には気絶している兵士が数名。

 そして門を閉める設備は壊されており修復は不可能の状態であった。

 

 …

 

 軍が駐屯する草原。

 そこではカルブが何時でも戦闘が開始できる様にと兵に武器を持たせ待機していた。

 いつ戦いが始まるのかと待ち続ける兵士達の指揮は高く、門が開く様子が見えた時にはハルモニアの旗を高らかに掲げこの軍を指揮する団長であるガルフの指示を待った。

 そしてガルフは満を持し声を上げる。

 

 「時は来た!!

 獣騎士団 突撃体制!!」

 

 馬が嘶き声を上げそれに続き獣の咆哮そして人々の叫び声が辺りに響き渡りさらなる指示を待った。

 

 「勇敢なる同胞の戦士達!

 そして友や家族を守るために集まってくれた勇敢なる兄弟達よ!

 私の背を見てついてこい!

 正義は我らにある!!

 全軍!突撃ーーー!」

 

 ガルフの声は戦場に響き渡り誰もがその声を耳に聞く。

 さらにガルフの声は重く、この戦いがいかに重要かをわからせてくれる。

 

 そしてその鼓舞は獣騎士団だけでなく連携が取れるかどうかわからなかった周辺の街や村から集まった民衆の人達もまた声を上げそれに応えた。

 

 指揮は高まった…これなら行ける。

 

 ガルフは自ら先頭に立ち馬を走らせながらちらりと先遣隊に続く民兵の姿を見てそう確信した。

 

 ハルモニアの旗を掲げ進むガルフは手綱を手放し剣を右手で引き抜き市内戦に備える

 

 敵の反撃は砦の上からの弓…。

 

 …

 

 敵もまた砦の上よりその迫り来る軍勢を見ていた。

 

 「敵陣に動きあり!!

 只今開かれた門に向かい先頭の騎馬隊が突撃を開始しました!!

 クエル様! 直ちにご指示を!!」

 「クエル様!!」

 

 それに対し部下は指揮官に指示を仰いでいる。

 

 だが…それに対し指揮官であるクエルは完全に虚をつかれ思考停止状態に陥っていた。

 

 「あ…な…えっと…」

 

 思考停止している間にもハルモニアの軍勢はこの城塞都市に侵入してきている。

 

 門は閉まらず封鎖も不可能。

 なら…せめて後ろにいる走ってきている遅い民兵を弓で…。

 そう考えた時…今は門前の兵を下に下ろしていた事を思い出す…。

 

 駄目だ…後手に後手にと回っている。

 

 クエルは思考停止状態から急ぎ回復すると思考を開始した。

 

 最大の目標は…ヴェルデスタ様をお守りする事…。

 今はその盾は崩れた…ならば…。

 

 「急ぎ南と東の砦にいる兵を集め城に向かわせろ!!

 そこでもう一度立て直しを図る!

 そして北と西にいる兵は突入された西側から来る敵を攻撃しつつ後退!

 そのまま兵を南の砦に集中させ守りに徹し立て直す!!」

 

 そう叫び指示を飛ばしさらにクエルは街に火を放つ事、そして街で敵軍との交戦を命じる。


 …

 

 街にガルフ率いるハルモニアの友軍が到着した時。

 ヘレナは城へと続く階段を登りその光景を見た。

 この城は高く積まれた石垣の上に建っている為街や砦の上がが見渡せるのだ。

 その分カクカクと入り組んだ長い石階段を登る必要がある。

 幅は広く作られてあるがかなりの高低差。

 

 「ついに始まったか…」

 

 民家に火が放たれ燃えている。

 そして喧騒と剣の交える音、怒号や悲鳴が街の至るところから聞こえ始めていた。

 

 突入したハルモニア軍は砦の上に登り敵を制圧する部隊とこの城に向けた軍勢と別れ、それに対し敵はこの城に急ぎ兵を移動、市街戦や街を燃やすことで敵の行軍を遅くさせている。

 

 だが…この街にいる奴隷達はハルモニアの軍勢に加担し始めているので人数でいう戦力差は圧倒的にこちらが優勢。

 

 「時間の問題か…。

 だが…その前に奴を倒さなければ…。

 すべてが無駄になる…」

 

 ヘレナがやっとの思いで城に到着するとそこには…。

 敵兵がヴェルデスタに合流すると考えていた不安を消し去る様にコトミが城の入り口にて敵兵を倒し手をパンパンと叩きホコリをはらっている所だった。

 

 「カルブと…それにユウキ様は!?」

 

 ヘレナはコトミに急いで近づくと両肩を掴み聞く。

 それにコトミはニヤリと仮面の下で笑うと右手をグットマークにしてヘレナに見せた。

 

 「大丈夫っすよ 二人共」

 「大丈夫?

 どういう意味だ…だが…待て!

 ユウキ様はお前が連れ出す手はずだろ!?

 なぜここにいない!?」

 

 激高するヘレナに対しコトミはいったって冷静だ。

 

 「心配ないっす!

 愛の力ってやつっす。

 今…カルブちゃんは私と同じ様に本気で先輩を想い戦ってる…。

 だから負けるわけないんすよ。

 今は先輩がカルブちゃんの近くにいた方が良いんす」

 

 コトミは落ち着いた様子で城をふり返り見る。

 

 「今は先輩とカルブちゃんを信じる時っす。

 だから、二人が戦ってる間は、私達二人でここを死守するっすよ」

 

 そうコトミは話しヘレナの手を離し横を通り過ぎると下に広がる街の中を行軍しここえ向かって来ている敵軍を見据え笑った。

 

 「ここからが本番すよ!

 ヘレナっち!」

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