42 吠えろカルブ
復讐喰らい…その異名はヴェルデスタの能力に起因する。
彼女は復讐心…怒りや憎しみ怨みを持つ者の力とその能力を全て奪う事ができた。
それにより、これまで挑んできた者達はことごとくこの力の前には無力となり多くの血が流れた。
彼女の死を望む者達はそれを行う事に比例し増えに増え続ける。
故に彼女は敗北を2度。
1度は幼少期 そして2度目は魔王に魔王の座をかけ挑んだ時のみしか知らない。
だが…そんな中、一人の少女が現れた。
名をカルブ。
獣人にしてかつては父と母を眼前で殺された経験を持つ。
しかし…彼女こそヴェルデスタの天敵になり得る存在。
カルブの武器。
誰かを護りたいと願い想う心
それはヴェルデスタの憎しみの力を砕き今、その戦いの火蓋が切られようとしていた。
ヴェルデスタはコトミの攻撃を受けたがその代わり力の一部を奪う事に成功させている。
この状況はカルブにとって不利ではあったがカルブは一歩も引かずヴェルデスタが攻撃を仕掛ける前に剣を振るう。
カルブはヴェルデスタに近づきながらあの戦いの最後…この圧倒的強者に一撃を浴びせた事を思い浮かべ、イメージを繰り返してきた。
「力じゃ勝てない…なら!!」
速度で勝つ!!!!
しかしヴェルデスタもそう甘くは無い。
カルブが懐に飛び込んだ瞬間、ありったけの力で戦斧を振り下ろし襲う。
それでもカルブはその攻撃をヒラリと躱すと母の剣でヴェルデスタの胸を捉えた。
「はぁああああああ!!」
血が飛び散り床を赤く染める。
かに思われた次の瞬間。
ヴェルデスタは床についた斧に捕まり体を中に浮かせることでその攻撃を躱した。
「舐めるなよ…子狼!!」
バキ!
カルブの剣が空を切った次の瞬間ヴェルデスタの蹴りが逆にその小さな胸に命中し吹き飛ばした。
「ガァ!……ゲホゲホ…」
カルブは壁まで転がりながら飛ばされ、壁に衝突する事で止まった。
速度で戦ったが負けた…。
いや…読まれていた…戦歴の差が大きく出ている。
カルブは剣を杖にし立ち上がりヴェルデスタを睨む。
これは越えなければならない壁だ。
そして今それを出来るのは私しかいないっ…。
カルブは息を整えると再度ヴェルデスタに立ち向かう。
力で勝てない…戦闘の経験でも…。
それでも…私は大切な者を守る為に勝ちたい…勝たなきゃ…。
いけないっ!!
走りカルブは答えを出す。
力でも経験でも勝てない…でも…。
速さと小回りなら私は誰にも負けない!!
カルブはヴェルデスタと戦い…そして勝つ事を想像し自分の武器…。
大切な人を守るため今自分にできる最大の事を考え活かす。
いつもなら体の小ささと言う短所を嫌っていた。
でもそれが今では長所となっている。
カルブは再び攻撃を躱すとヴェルデスタに剣を振るう。
だが…それも避けられる。
斧によるもう一撃。
カルブはその小さな体を活かし転がり避ける。
そしてその持ち前のスピードを活かし立ち上がるとヴェルデスタの横腹に一太刀、浴びせて見せた。
剣がいつもより長い為か重い。
でも…その分深い…!!
「っう」
「まだ!」
もう一撃、浴びせようと後ろに回り込み攻撃を仕掛ける。
剣がそのまま逆側の横腹に剣がめり込む時、ヴェルデスタの斧を手放した手がカルブの腕を捉えた。
「なっ!?」
「小賢しい…」
「カルブ!」
力強く捕えたその腕は軽々とカルブを持ち上げ中に浮かせる。
「子狼…所詮貴様もこの程度か?」
「っう…離せ!!」
ジタバタと暴れるカルブにヴェルデスタは腕を握りつぶす勢いで力を込め見据える。
そしてもう片方の手で斧を掴もうとした時その腕にしがみつき邪魔をする者がいた。
「ユウキさん!?
何やってるんですか!
私の事は良いですから、コトミさんと早く逃げて下さい!!」
ヴェルデスタの手に必死でユウキはしがみつく。
そしてユウキはカルブに向け必死に叫ぶ。
「ふざけんな!!
カルブ!お前は俺の為に戦ってくれてる!
確かに俺は役に立たないかもしれない…でも…。
それでも…背負う権利くらいはある!」
そしてユウキは笑いこう続けた。
「それに今ここでお前を見捨てて逃げたとあったら。
漢がすたるってもんだろ?」
今までの人生で一度として使ったことの無いセリフ…。
「邪魔だ…」
それを言い終えた時、ヴェルデスタはユウキを軽く腕を振るう事で引き剥がしユウキを転がせる。
本当に何もできず…。
ユウキはそう思いながらも転がり止まる。
たったあれだけの事なのに体に痛みが走った。
おまけに少し頭を強く打ったせいかのか意識が薄れていく…。
勇気を振り絞り出てきたまでは良かったのだがが余りにも俺は弱すぎ…た…。
だが…その一連の行動はカルブに力を与えるきっかけを作りだす事に成功する。
カルブはそんなユウキに一瞬気を取られたヴェルデスタの腕に噛み付き手を離れユウキに駆け寄った。
「ユウキさんは私がっ必ず…」
カルブはそこに倒れるか弱いユウキを背に必ず守ってみせると堅く誓い、剣を再びヴェルデスタに向けた。
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