39 ハルモニア騎士団
突如現れた 計3万の軍勢。
その軍勢を率いるはハルモニア第4師団である獣騎士団 団長のガルフだ。
もとより準備していた急襲作戦を利用し兵を周りの街や村より集め急造ではあるが3万近い軍勢を作り上げた。
装備も当然ながら無く、皆それぞれ思い思いの武器を持ち一つの目的を果たそうとしている。
打倒ヴェルデスタ皆の標的はただ一つ。
夜中にあの要塞を抜け出し皆を集めて早くも昼。
しかし…間に合った。
ガルフは馬に乗り先頭でハルモニアの旗を掲げ皆を鼓舞し突き進む。
一方のヴェルデスタ陣営。
鍬や鎌、ただの木の棒に包丁を取り付けた貧相な武器を持つ農民や商人、街の人達が大半を閉めた兵。
それが遠くより近づいてきている姿を壁の上より見た。
「隊長、どうします?
外に兵を出して囲まれる前に打って出ますか?」
壁の守りを一任された者はその部下の声を聞きながらも落ち着いた素振りで迫り来る軍勢を見ると…笑みを浮かべた。
「心配するな、城攻めは通常3倍の兵力が必要となる。
あれでは…無理だろ。
それに敵は見た所素人、対してこちらは魔王軍の幹部であらせられるヴェルデスタ様、直属。
奴らが農具を持つ前より武器を持ち訓練と教育を受けた我らだ。
我らと奴らでは天と地程の差がある」
だが…それを知ってか知らずかガルフは一定の距離をとりそのヴェルデスタの住む城を取り囲み前衛に馬や虎、狼に乗った獣騎士達を前に出すのみであった。
……
ボシュン…
シーフの投げた煙玉は地面に当たると煙を散らし視界を悪くさせる。
そんな煙の中では罵声が飛び交いまさに混乱が起こっていた。
「煙!?」
「敵襲!! 敵襲ー!!」
「貴様、何も…がぁ!」
煙の中を敵か味方かもわからない影が複数駆け回り、それに応じて次々と倒れていく。
それに対してヴェルデスタとペネトラは冷静だ。
「ここは私にお任せください」
一歩前に出たのはペネトラ。
魔法剣…彼女は剣を引き抜くと剣に魔力を纏わせ風を巻き起こした。
「トルネード『竜巻』」
風は周囲の煙を散らし消しさる。
「なるほど…お前の仕業か…」
煙の消えたそこに複数人いたはずの部下は倒れ…ただ一人、剣を構えたヘレナ・ウルティムの姿しかなかった。
「ヘレナ!!」
ユウキはすぐさま走り出し安全圏、ヘレナのもとに駆け出そうとする。
が…ヴェルデスタは片手でユウキの襟をまるで親猫が子猫を持ち上げる様に軽く掴むとグイと引き寄せ腰を持つと脇に抱えた。
「ぬあ!? 離せ!」
ユウキは暴れるがどうやらそれで離してくれる相手では無いらしい。
自分を持ち上げる腕は全くびくともせず…それどころか更に力を強めた。
ヘレナに助けを求め見やるが、彼女は唇を噛み締めペネトラに剣を向けるのみだ。
しかし…。
ヘレナは声を震わせながらもはっきりと言い放つ。
「主様!…私達を信じお待ちください。
必ずや…いえ…必ず助け出して見せます。
ですので今しばらくのご辛抱を…」
ガキン!
だが…ヘレナが言い切る前にペネトラが斬りかかり話は遮られた。
「嘘はよくありませんね。
なにせ…あなたは私の剣で葬られるのだから!!」
いきなりの激しい剣戟でその戦いは始まった。
ペネトラは剣に纏わせた風を駆使しヘレナを圧倒している。
そんな光景を背にヴェルデスタはユウキを脇に捕まえたまま自らの城へと歩き向かう。
「待て!!」
ヘレナがペネトラの剣を受け止めヴェルデスタにそう叫ぶがそれを無視し歩きを止めずそのまま階段を登り姿を消した。
「余裕そうですねヘレナさん…」
再びその場にペネトラの声と金属音が響き渡った。
ペネトラの剣は風に覆われ、触れずとも鎌鼬となりヘレナを襲う。
それに対し今まで自分が磨き上げてきた剣術でヘレナは対抗する。
しかし、ペネトラの風は厄介だ。
剣を交えるたびに切り傷が手や腕に増えていく。
「どうやら、勝敗は見えたようですね…」
苦悶とした表情を浮かべるヘレナに対しペネトラは微笑を浮かべた。
…
ヘレナとペネトラが戦う一方、シーフは建物の影よりそれを覗き見していた。
「たく…なんだあの剣に風を纏う技は…聞いた事もない」
あと少しで見つかるところだった。
いや…気づかれていたのかもしれない。
先程の煙の中、ヘレナが陽動で私が本来はユウキを助け出す予定だった。
だが煙に入り途中の敵を短剣で斬り伏せユウキの近くへと駆け付けた。
しかしその近くにはヴェルデスタがいる。
煙で見えていない筈、とはいえ確かにあの時に感じた感覚は以前に奴と対峙した時と同じ。
まさに蛇に睨まれた蛙。
情けない事にユウキを助け出す事もできず何も出来なかった。
その後はあの風により目くらましの煙が消された為、すぐさま離脱した。
「失敗…か…」
昨日、ヘレナが考え立案した計画の失敗。
だが…全てでは無い。
シーフは次の作戦へと切り替え行動を開始する。
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