37 結婚式前夜
「………よし、誰もいないな…」
俺は抜き足さし足で早朝の廊下を歩いていた。
目標は脱出、夜は枷に繋がれ逃げれない為、朝に逃げる必要があるのだ。
廊下の奥で足音が聞こえる。
男奴隷は自分の他にも沢山いるが今は給餌をしている時間、そう考えると間違いなく兵士だろう。
すぐさま横の部屋に入る。
足音が過ぎ去って行き安全を確かめると胸をおろした。
それにしても…。
周りを見渡し壁を触る、石造りの城では無く木で出来た城。
おまけに、装飾は中国を思わせる様な物だ。
「昔の中国か…ここは…」
そんな、事を小声で呟きながら歩き外を眺める。
仕事で忙しくてよく見た事無かったのだが…高い…見た所6階程の高さだろうか…。
そして城下町を見下ろすとその大きさに圧倒された。
「んな…」
今やそこは、かつてカルブが住んでいた頃の面影はもはや無く、中華の街並みが広がっている。
おまけに警備が巡回しているのが見えるので例えこの城から抜け出した所で、すぐに見つかり捕まってしまう自分の姿が目に浮かぶ。
「どうだ? 美しいだろう…」
一瞬、心臓が飛び出しそうになった。
慌てて振り向く。
するとそこにはゆっくりと近づいてくるヴェルデスタがいた。
「……」
「所で…こんな所で一体何をしているのかな?」
ヴェルデスタは見透かす様に見つめる。
そしてそのままユウキの横を通り過ぎるとベランダに出た。
「明日、お前を私の夫に貰う」
「は?」
その話には何がなんだか分からず困惑させられた。
しかし、ヴェルデスタは一切笑わず手を上げ一言呟くのみだ。
「連れていき、化粧をさせ旗袍を試着させろ…。
式を明日に取り行う。
街の奴等にもそう伝えておけ」
「はっ」
気づけばいつの間にか横にいた兵士に両腕を捕まれ、奥に連れて行かれる。
「痛っ!」
もがき、逃れ用とするが力が強く振り払えない。
「大人しくしろ!」
そうやって暴れている時、早朝の霞んだ空に花火が打ち上がった。
ヒューン パーーン!!
懐かしい音が聞こえる。
「花火?」
そんな様子のユウキを見てヴェルデスタは笑う。
「花火が好きか?
ふっ残念だが、祭りごとでは無く侵入者の合図だ。
どうやらお前のお姫様が迎えに来た様だな…」
…
花火が打ち上がった中華の街中では兵士が一斉に集まり侵入者の捜索が開始されている。
「いたか!?」
「いや! こっちにはいない!」
騒がしい街中、その民家の一つに潜む者達がいた。
「行ったかな?」
「いや、まだ少し待ったほうがいい。
全く、私一人ならユウキの奴を盗み出せると言うのに」
「黙れシーフ、これはけじめだ。
騎士として…本来であれば隠れるなど、あってはならぬ事だ。
が…今回は主であるユウキの為だ。
私は汚水をすすってでも助け出す覚悟だ」
「そうっすよ、私もやられたんすから。
やられたら100倍返す。
100万返しっす!!」
こんな集団を纏めるリーダーはガルフ、今回はユウキ奪還のみを目的とした作戦を立案、この少数精鋭部隊を指揮している。
「いいから静かに…。
ここで見つかれば命は無いぞ」
5人組はひっそりと息を潜め時が過ぎるのをひたすらに待つしか無かった。
辺りを見渡すとそこはあまりいい環境とは言えない場所だ。
それもそのはず、そこは高い壁に囲まれた街の中に存在する人間奴隷が居住している地区なのだから。
「それにしても…ここ雰囲気悪いっすね…」
コトミはそう呟きあたりを見て回り物色を始めた。
「おい、何やってる?
全く、そうやって監視に見つかったのをもう忘れたのか?」
はぁ、とため息をつきシーフは呆れた表情でコトミを見やる。
ガルフの話によれば、この街は人間の奴隷達を使い、作られたと説明を受けた。
人間奴隷は近くの町や村、街、ヴェルデスタが支配下においた地域の女と男を集めたらしい。
女は肉体的な強制労働、街や城、壁を作らされ 男は城や街にて家事やその他、仕事を強制させられている。
そんな事をすれば、当然街の人達や村の住民は怒り、反旗を翻す物だが奴隷たちを人質にそして圧倒的な戦力差と逆らった者へ与える無慈悲さで完全に人間達を支配していた。
時はただひたすらに過ぎ夜。
民家の扉が開き大勢の女性が汗を拭き家の中へと入って来る。
これに対し、一行は屋根裏へ逃げる事で難を逃れた。
「ねえ、聞いた? 明日の牛魔王様がご結婚されるって話…」
「もちろん、皆集められて聞かされたよ、でもお陰で明日は休み、羽を伸ばせるってもんだよ」
「でも、その結婚相手って噂では人…らしいのよ確かユウキさんって名前で…」
「人? あのヴェルデスタ様が?
その娘…かわいそうに…」
「しっ!もしあいつらに聞こえたらどうすんのよ」
…
「今の聞いたっすか?」
「ああ」
「確かに聞こえた」
「明日までに策を練らねば…」
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