36 ヴェルデスタ
十二星龍が一人、復讐喰らいヴェルデスタの過去…。
それはまず燃え盛る村の中から始まる。
「お父さん!お母さん!何処にいるの!?
返事をしてよ!!」
しかしその呼ぶ声に母と父は答えてはくれない。
代わりに聞こえるのは燃える火の音…そして阿鼻叫喚の声だけだ。
時は夜、人間たちによる夜襲であった。
突如として現れた兵士達は女と老人を殺し略奪を行う。
「いいか!
食料と金品!男と子供を奪え!!
女と老人は殺してしまえ!」
敗残兵、彼らはこの街から数十キロ先の平原にて魔族軍に敗れた者達であった。
「ははは、魔族が!! 死ね!死ね!仲間の仇だ」
もはやそこには正義なんて物は無くただただ、憎しみと怒りと呼ばれる強大な魔物が這いずり暴れているだけだ。
狂気渦巻く混沌とした、故郷。
戦争とは、ほど遠かった緑の平原、そこで牛や羊を飼い平和に暮らして行く。
この時、ヴェルデスタの運命が大きく狂い初めたきっかけとなる事件であった。
そしてその十数年後には魔王幹部となる道を進むこととなる。
…
あれから数年、ヴェルデスタは奴隷として生きながらえた。
売られた場所は当時、ディスピア帝国と呼ばれた大国の王都。
そこでヴェルデスタは巨大な石を運び城や城壁を作ると言う肉体労働を強いられていた。
「おら! 奴隷共!サボるんじゃねぇぞー!!」
一瞬、気を抜くだけで鞭が飛んでくる。
おまけに劣悪な環境、扱いも酷くまるで彼女らはまさに家畜の様な扱いを受けた。
使い物にならなくなれば殺され、新しい奴隷を入れる。
そんな環境で育ったヴェルデスタ。
その内に燃えるどす黒い復讐の炎は次第に強く燃え上がって行くのも無理のない事であった。
それでも…希望はある。
「おい、ヴェルデスタ!
聞いてんのかよ?」
奴隷となり過酷な環境に労働、そんな中でも親友がいた。
名はホープ、彼女も奴隷だが苦楽を今まで長い事共にしてきた間柄だ。
「ん?ああ…」
ヴェルデスタの気のない返事にホープは呆れた顔をしながらも話を続ける
「だからさ…俺達で変えるのさ…」
「変えるって? なんの話だ?」
「だから…夢の話さ…」
「夢?」
…
それは城を建造時の事。
削り出した大きな岩を数十人係で運ぶ作業。
ヴェルデスタは前方で岩を引き、ホープは後ろでその岩を運ぶ為の丸太をどける作業を行っていた。
「もっと力を入れて引け!!」
鞭が飛び体に痛烈な痛みが走る。
おまけにここ最近は休みも許されず働き詰めだ。
集中力がきれ今日は何度も鞭を打たれる。
そして何度めか、苛立ちが頂点に達し、気づけば人を素手で殴り殺していた。
奴隷の反乱…それはこの事を気に広がっていく。
帝国住民への虐殺、兵士の抵抗、奴隷達の反乱。
ディスピア帝国の王都はこの日奴隷の反乱、そしてその後に起こった魔王軍、蒼眼の死霊 アルジュラによる攻撃により陥落した。
「ヴェルデスタ!しっかりしろ!」
「はぁ…はぁ…」
憎しみ怨み怒り、この街で起こっったそれ全ての感情をヴェルデスタは強く感じ取り頭を抱え目を伏せ息を弾ませていた。
今までの憎しみをぶつけ復讐を果たした筈なのにその感情は消えない、それどころか虚しさが増えただけだ。
ヴェルデスタはこの経験を始めに特殊な力を身に着けコントロールしていくことになる。
…
それからはヴェルデスタとホープはとある夢野為に魔王軍兵に志願し数多くの戦場を経験する事になる。
「と…言う訳だこれが奴の不敗伝説の始まり…」
アンジュはそう話し途中で飽きたのかまたゲームをいじり始めながら話を続けた。
「あいつの能力は復讐喰らい。
怒りや憎しみ怨みを持つ者の力や能力を根こそぎ奪う厄介な能力だ。
おかげで怒りや憎しみ怨みが蔓延る戦場ではまさに敵無し。
一人で幾つもの兵団を壊滅させるほどだ。
実力のみで魔王軍幹部に登り詰め今もその力は健在…」
そして…その倒し方…。
「もし…牛女に勝てるとすれば魔王のみかな?
例え私でも勝てない。
あるとすれば、怒りや憎しみを超越した奴か快楽で殺しをするイカれた奴。
初対面であいつを知らない、完全に関わりを持たない様な奴くらいだな…。
それも一対一でだ。
じゃ無きゃお前らみたいに弱みがバレて負ける」
そうアンジュは言うが皆の決意は変わる事が無かった
「だから馬鹿だと言うんだ…」
…
作戦決行日、当日。
傷を完治させたカルブはガルフに釣れられ森の奥へと来ていた。
そこには3つの墓並べられておりその内の一つには剣が一緒に供えられている。
「ここは?」
「母さんと父さんのお墓だ。
あと一つは、お前のだったが…もういらなくなったな。
大切な人を助けに行くんだろ?
それなら武器がいるはずだ」
ガルフはそう言い笑いかける。
カルブは黙りお墓に近寄ると指を組み祈りを捧げた。
母さん…父さん…あの時何も出来なくてごめん。
しばらくの間そう祈りを続け、立ち上がると剣を引き抜いた。
「私がユウキさんを助ける」
だから…母さん父さん、力を貸して。
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