再再就職先
カルブは夢を見ていた。
母が殺され…父が死んだ日。
あの頃の自分に戻り経験を追体験した…。
そしてユウキさんを守れなかった経験。
まずは一つ、奴隷にされそうになっている所…そして最後に父と母を殺した仇につれていかれる所。
じょう…か…しっ…しろ
「大丈夫か?」
はっきりとした声が聞こえ夢から引き上げられていく。
「んん…」
「起きたか?カルブ!」
まだ寝ていたい…。
あれ…私今まで何して…。
ユウキが連れて行かれそうになっている事を思い出しカルブは飛び起きた。
「ユウキさん!!
…痛っ」
毛布をどかしカルブは勢い良く起き上がると体中に痛みが走るのを感じた。
「無茶するなカルブ…」
そう横から声が聞こえたので見るとガルフが涙ぐみ飛びかかってくる所だった。
「お姉ちゃん!?」
ガルフはカルブをこれでもかと抱きしめ尻尾をこれでもかと振り、顔を擦り付け続ける。
「苦しいよ…お姉ちゃん…」
「ああ…ごめん、でも嬉しくて…つい」
ガルフはカルブを離し代わりに手を握った。
「ここは…?」
見渡すとそこは木でできた家の中だ。
よく周りを見るとシーフは壁により掛かって目をつむり、ヘレナは床に座りうつ向き剣をこれでもかと握りしめている。
コトミはと言うとまだ寝ている様子だった。
「ここは、レジスタンスキャンプだ。
あの街から少し離れた森だよ」
ガルフはそうカルブに優しく告げた。
「ユウキさんは?」
「……それは…」
その問いにガルフは目をそむける。
それで理解した…。
「また…また助けられなかった…。
もう、こんな思いはしたくなかったのに…」
自然に涙が溢れ頬を伝い落ちてゆく。
唇を噛み締め自分の弱さ、情なさを感じ自分に怒りを感じた。
しかし…。
ガルフがもう一度、今度はそっと抱き寄せカルブの痛みを辛さを同じく感じ分かち合った。
…
魔王軍に対するレジスタンス組織、ハルモニア…その行動目的は魔王軍の侵略された都市や国の開放。
そしてこの街十二星龍、復讐喰らい ヴェルデスタに派遣されたのは。
第4師団、ガルフ率いる獣騎士団が派遣されていた。
あれから傷が癒えていないにも関わらず拠点を出ようとするカルブを言い聞かせて留め、これからについて話し合う事となった。
当然ながら話は魔王軍の事だ。
まずは情報、ユウキがどうなっているかとヴェルデスタの所在、その能力。
まずユウキの件だが情報には無事と報告があった。
しかしヴェルデスタの城にて囚われているらしい。
そしてその所在、それはかつてカルブ達が住んでいた街に巨城を立てていると聞く。
そして能力の話になった時、思わぬ人物が説明を始めた。
怠惰なアンジュ。
彼女は上のハンモックに揺られ、ゲームをしながら話し出した。
それは明らかに愚かな人間共…と言う口調と視線で。
「やめとけ、やめとけ。
あいつだけには手を出さない方がいい。
悪い事は言わない、ユウキとか言う男を置いといてここから逃げるんだな。
あの牛女には勝てない」
全員はその声に耳を傾け上を見上げる。
そしてガルフは少し唸り、アンジュに聞く。
「なぜだ!?
確かに、数日前は負けたが今度は万全の体制で挑む。
確かに戦力差は劣るが、虚を突けば負けない筈は無い。
それに、街の住人は奴らを恨んでいる。
少しでも彼らの憎しみや怒りを扇動すれば戦力差はひっくり返せる!」
それにアンジュはゲームを止め下を見下げて話す。
「そう、問題はそれ、アイツ自身の特殊な力だ。
お前らはあいつの過去を知らない。
知ってるか?
どうやってあいつが人間の奴隷から魔王軍最強の幹部まで登りつめたのかを…ククク…」
それから、アンジュは少し昔の話を始めた…。
……
「ほらもっと腰を振れ!」
ハハハハハ
笑い声が聞こえとても騒がしい。
よく見ると奥の席にはヴェルデスタが赤い大きな器、大盃を片手で持ちそこに注がれた酒を飲みこちらを見ている所だった。
そして周りには鼻を伸ばして見る角を生やした獣人たちの姿がある。
あれから数日後動けるようになった後はこうして宴会の余興に使われていた。
そう…踊り子だ……。
今、布面積の少ない衣装を着せられ踊らされている。
こんな場所、あのふざけた魔法で吹き飛ばしたい所なのだが…できなかった。
どうやらそれはこの枷のせいらしい。
首輪と腕輪。
魔力を消すとかなんとか…。
試しにやったが…何も起きず恥ずかしいだけだった。
「おい!もっと近くに寄れよ」
なんで俺がこんな目に……。
カルブとガルフはどこに行ったんだろ…まさか死んだとかじゃないよな…。
「おい!そこの踊り子、もっと笑えよ!」
このふざけた世界、もうやだ…。
もっと楽しい異世界ライフを俺にくれ……。
そんな事を願っても当然何も起きない訳で仕方なくその後もユウキは踊りを続けた。
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