34 逃げるは恥だが…
私は、何をしているんだ…。
あんな小さい奴を残して来るなんて…。
シーフは頭の中で思考を巡らせていた。
あいつが言い出し望んだ事。
本当に馬鹿野郎だ。
命あってこその人生だと言うのに、仲間とはいえ他人、そこには絶対に分かり会う事の出来ない境界線が存在する。
他人を助けるなんてのは、自分を助けてからするもんだ…。
忠告はした…。
「クソっ、胸糞悪い…」
そう自分に言い聞かせ続けているのにその胸に残る気持ち悪さは拭う事は出来ない。
それどころか、それは増すばかりだ…。
そんな葛藤をする中、自分がまだ幼かった頃の事をなぜか…ふと…思い出した。
『人は助け合わなきゃ。
例えそれがどんな時でも…。
ほら、いつかそれが大きくなって帰ってくるかも』
声…懐かしいその声につられ昔の記憶が蘇る。
ボロの小屋が立ち並ぶ掃き溜め。
そこでは生きる事だけで精一杯で他人を助ける余裕なんて無かった。
明日、自分が生きているのかすら分からない。
盗みもしないで生き残るなんて夢のまた夢…。
そのくせ捕まれば命の保証は無く、運が良くて奴隷にされるか、金を持った奴らの価値観、道楽で殺されるかだ。
でも…それでも…そんな中でも、馬鹿はいる。
一人の男、そいつは道端に生えた花を摘んではそれを道端で売っているおかしなやつだった。
名をセレーネ、彼は私と同じゴミみたいな掃き溜めに住んでいながらも盗みをしない。
彼の暮らしは質素な物で信仰的だ。
教会への出入りは不潔だと言われ突き返されたにも関わらず毎日貴重な時間を使って外で神とやらに祈りを捧げている。
まあ、そんな奴の事が気になり時間をかけて付けている私もおかしかったのだろうが…。
…
そんな他愛もない記憶をたどりシーフは目を瞑りガルフを見た。
「悪い、少し…大きな忘れ物をした…。
ここで少し待っていてくれ」
シーフはそう言うと路地へとガルフを連れていき座らせる。
するとガルフが、うめき声を上げながらも手を伸ばし肩を掴んだ。
「カルブを頼む…たった一人の家族なんだ…」
「……」
シーフはそんなガルフを黙って見ると頷き頭をかいた。
「はぁ、まあ任せとけ。
戦いはしない、盗むだけだ」
そう言い終わると背後に人の気配を感じシーフは短剣を構えた。
…
「私が…護る…んだ…」
私が…絶対に皆を護るんだ……。
もう…あんな思いはしたくない…。
カルブは、ヴェルデスタに幾度と挑み血を流し、それでも幾度と立ち上がり武器を構えて見せた。
「全く、恐れ入るよ…お前のその力と執念。
いったい…何処にそんな力があるんだ?」
ヴェルデスタは疲れた表情も見せずカルブに近寄り斧を容赦無く叩き落とす。
ガキン…ギリギリ…バキン!!
「っつう…うあ!!」
カルブは一撃を受け止め耐えるが剣はその力に耐えきれずに折れた。
斧が地面に叩きつけられカルブの体をかすめようとする。
咄嗟に剣を捨て躱した。
武器も無く勝ち目も無い。
戦況は完全にこちらが不利。
それでも、カルブは逃げもせず立ち上がり、ヴェルデスタを見据え対峙する。
「ユウキさんを…返せ!!」
「それは出来ん相談だな。
人間なのは残念だが、魔力を持ちそしてあれ程の魔法を使う男…。
安心しろこいつを殺す気はない」
それを聞きカルブは少し心を落ち着かせた…。
「だが…こいつを夫にする事に決めた」
「んなっ…!!」
その言葉にカルブは言葉を失い絶句した。
「そんな事絶対にさせるない!!」
しかし…ヴェルデスタは強く勝てそうにも無い…。
それに今は体も意思のみで保っている状態だ。
「それでも…たとえ無理でも…助けたい」
「無駄だ」
カルブはヴェルデスタの斧を見て無意識であったが躱してみせた。
大振りの攻撃…パワーがあるけどそれでも…遅い。
その攻撃を抜け、折れた剣での一撃をヴェルデスタの腹部に見舞う。
「なに!?」
折れた剣ではあったが軽く腹をかすめ切り傷を与える。
力は上がっていても防御力の方は上がってはいないらしい。
「子狼が!!」
ヴェルデスタはすぐさま反撃し斧をカルブへと向けた。
避けようとするがこれまでの戦闘による疲労と痛みでそれが出来ない。
カルブは折れた剣でその一撃を受け止めた。
空中を飛びしだいに落ちていく。
まるで人形にでもなったかのように地面に打ち付けられ剣も何処かへ行ってしまった。
流石に限界が近い…そう感じながらも頭を上げヴェルデスタに抱えられているユウキを見る。
「ユウキさん…」
手を伸ばしても彼は届かない場所にいる。
あの時と同じだ…ユウキさんが連れて行かれる。
最後に伸ばしたカルブの手は届かずそんな思いの中、気を失った。
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