金欠にて
翌日、ヘレナは言っていたとおり、旅立ってしまった。
これで、ユウキは一人となり残ったものクロスボウと矢。
異世界の服、そして屈辱的な事にスカート、これはヘレナが勝手に買ったものだ。
叩いて使う火を作る道具とロープ、傷薬、バック。
そして取り敢えず金貨5枚はある。
これ、もとの世界に持ってたらいくらになんだろ。
そんな事を思いながら、取り敢えず食料が必要だと街に向かう。
料理は多少できるし、こっちには金貨がある。
そう考え早速とレストラン風の店に入った。
「いらっしゃいませ、お連れの方は?」
男性の店員がそういい席を案内してくれた。
「いえ、僕一人です」
ユウキはそう言い席に座った。
その店員は女装をした若い店員で何故かここでも男性がスカートを履いている。
ユウキはメニュー表に目を通し適当に頼んだ。
「えっとこのクリームシチューとパンください」
ここであることにユウキは気づいた。
メニューに書かれている言葉が自然にわかる。
それだけでは無い今更なのだが言葉も分かっている自分がいる。
ユウキは困惑した。
よく見ると見た事もない字でも分かる。
『主人公補正か? これが噂に聞く……て事は力も強いんじゃね?
女性が力を持つ中男性で俺だけが力を持つか』
ふっ
『題して、うーん、異世界転移してきた主人公、女性上位主義、社会の中チートスキルでSSS級、俺最強異世界ハーレムなんてどうだろうか』
ユウキはそう考えていると何だか急に安心しだし、ドンと構える事にした。
ユウキは食事を終えお会計をする。
「あっこれで」
ユウキが金貨を出すと店員がギョッとし辺りを見渡した。
「あなた、こんな所で堂々とこんな大金を…」
そういえば言ってた…確か金貨は1ヶ月、余裕で暮らせるくらいあるとか。…それもあの高そうな宿で……
そう思いだし金貨を引っ込め大銀貨を出す。
「間違えました、これです」
それでようやくお金を受け取り、銀貨のお釣りを何枚か貰った。
お腹もいっぱいになったので店を出る。
ユウキは人混みの中を歩き、意外と異世界…能力とか無くても余裕かも。
そんな事を思う。
その時、後ろからぶつかって来た女性がいた。
「うわっ」
石畳の道に倒れたので痛い。
女性は謝りもせずユウキの倒れた場所に来て何かを拾うと走り去ってしまった。
「大丈夫かい?」
手を差し伸ばされるユウキはその人の手を取ると立ち上がる。
ポッケからお金が落ちてないかと確認する。
「あれ…無い」
ユウキは地面を探すが金色のコインは見つからない。
さっきの女性、一体何を拾って…
そう考えるとユウキは走り出した。
やられた、お金取られた。
ユウキは走り探すが人混みで分からない。
それでも諦めず探す。
すると路地裏に消える先程の女性を見つけた。
「やろお」
ユウキはすぐさま追い路地裏へと入る。
そこは酷い場所だった異臭が凄い、それに道に寝転ぶ人達。
ユウキはそれを越え追いかける。
彼女も自分に気づいたようで走り出す。
「それ、返してください!」
叫び追いかけ息を切らしようやくと言う所で女性を追い詰めることに成功した。
「男一人…こんな危ない事はするもんじゃない」
次の瞬間ユウキは戸惑った。
女性が追い詰められて逆にこちらに向かってきたのだ。
「ち…近づかないほうがいい。
僕は、こう見えても…つ強いぞ!」
頼むぞ、神様〜、ここで一発、ギャフンと。
「ギャフン」
ユウキは一瞬で近づかれ壁に押し倒されていた。
「まっ待て!」
ユウキの制止は聞かず女性は悠々と去っていってしまった。
…
困った、帰り道がわからない。
ユウキは路地裏の辺りを見渡しながらもといた大通りを探す。
「お兄ちゃん、こんな所で何をしてるんだい」
声の方を見ると、明らかにそっち側の女が話しかけてきていた。
「い…いえ、僕は大丈夫ですので」
そういうなりユウキは走った。
何か言い切れない嫌な予感が走ったからだ。
ユウキが逃げたのを見て女が追いかけてくる。
速い…。
ユウキは今更ながら無鉄砲にも程があったと後悔した。
異世界来て早々捕まった奴が何でこんな馬鹿なまねを。
ユウキは走り、走り続けた。
転けてもすぐ起き上がって走り、服が柵に引っかかり引きちぎりれても走った。
結果…逃げ切る事に成功し大通りにも出る事に成功した。
「良し! なんとかなった…」
ユウキはゼイゼイと息を吐き、フラフラともとの宿に戻った。
「宿で休も…」
金は盗られ服はボロボロ、顔には泥。
散々な一日だった。
ユウキが宿に入ろうとすると、受付の男性に止められた。
「その様な格好での入店はお断りさせて頂きます」
「へ…」
ユウキは一瞬、積んだと思った。
しかしユウキはすぐさま思いつき訂正した。
「いや、ここに来る途中で、転けちゃって」
これに男性は「そうですか」と言い。
「それは申し訳ありませんでした。
では、鍵をお見せ下さい…」
「ああ、はいあります、ありま…」
か…鍵が…鍵がない。
一体いつ?
店員が怪しげな目で見ている。
ユウキの額から汗がダラダラと流れ落ちた。
「い…いや…落としちゃった」
その後も粘り、ヘレナの名も出したが本人の確認がいるの一点張りで入らせてくれない。
終いには女性店員を呼ばれつまみ出された。
「お…オワタ」
その日、ユウキは地べたに寝転がっていた人達の存在を思い出しそこに行く事にした。
そこは相変わらず、汚く臭い。
今は取り敢えず寝床が必要だ。
そう思い裏路地を気をつけながら徘徊し、なんとか誰もいないゴミ置き場の箱の隣にある狭い行き止まりの空間を見つけた。
ここなら裏路地を吹き抜ける冷たい風から身が守れる上に人目から多少逃れられる。
ユウキはその日、身を縮め寒い一夜を過ごした。
読んでいたたぎありがとうございました。
m(__)m