カルブの過去
魔王討伐での旅の道中、一行は満点の星空に包まれて、テントを張り野宿をしていた。
「あー、それ私のお肉っす先輩!
大切に育ててたんすよ!?」
「他にも肉あるだろ?
はぁ、分かったじゃあこれやるよ」
「やったー!」
「全部とるんじゃねぇ!」
「痛たたっ…いいじゃないっすか!
先輩のケチんぼ!!」
カルブはその喧騒から離れた場所で夜空を見て少し考えていた…。
過去の事を…。
…
時は数年程遡る。
まだカルブが冒険者では無く親のもとで暮らしていた頃の話だ。
「カルブ!?駄目よ。
外に勝手にでちゃ」
カルブの父は台所で料理しながら外に遊びに行こうとしていたカルブを止めた。
「なんで?」
カルブはその理由が当時は理解できず分からなかった。
「なんでもさ、まだお前は幼い。
お前を守る為さ」
「ガルフお姉ちゃん!」
カルブにはガルフと言う姉がいる。
ガルフはカルブの頭を撫でそう言い聞かせ外を見やった。
「母さん遅いな」
「今日は、お仕事で忙しいって言ってたからね。
先にご飯、食べちゃお」
そんな平和な日常、生活は貧しかったがカルブにとってそれは苦では無かった。
今、家族皆といる。
それがカルブにとっては何よりも価値のある一番の宝物だった。
父が食事を運ぶのを手伝い食卓に運ぶ。
テーブルに並ぶのはちょっとした料理、カルブ達はそれを食べ、話して笑い楽しむ。
そんな毎日を楽しく送っていた。
…
だが…。
「おらっ、気持ち悪いんだよ。
お前、頭の上から耳なんか生やしてさぁ」
「獣人は魔族の仲間なんだろ!!
この街から出ていけ!!」
ある日、カルブは言いつけを破り家から一人で街に出た時の事だ。
窓から外を見つめていると楽しそうに子供達が遊んでいるのが見えた。
一緒に遊びたい……そう思っただけなのに……。
世の中は辛く冷たい。
「こら!!私の妹を虐めるな!!」
「ヤベ、逃げろ! 魔族に殺されるぞ!」
…
「グスっ…ふぇ…お姉ちゃん」
「だから、一人で外に出るなと…」
石を投げられ傷を負った頭に包帯を巻きながらガルフは言い聞かせる。
「ああ、もう、女がそんなに泣くもんじゃない」
「なんで? どうして?
私何も悪い事はして無いのに…
ただ、友達になりたくて…」
カルブは訳が分からなかった。
「ねぇ、私も仲間に入れて?」
話しかけた瞬間に敵意が子供たちから溢れ出したのだ
種族差別…人間が繁栄したこの世界では当たり前に起こる事。
大人がそう他種族を見下し、嫌悪する、それを見て子供は学び周りに影響されそれを受け継ぐ。
負の伝統だ。
この日、カルブは自分が獣人である…と言う事実に嫌でも気付かされた。
…
カルブの母は街の警備をしている。
他の人間よりも低賃金だが、家族を守る為に働いていた。
その遠くを見れる目そのよく聞こえる耳を買われ雇われたのだ。
今では街を守る為に欠かせない存在となっている。
「おーい、飯を持ってきてやったぞ、一緒に食おう」
確かに街の住人達はよそ者であり獣人である彼らを嫌っているが、それでも受け入れてくれる人達も必ず存在している。
「ああ、もちろんだ」
「それで、この前怪我しちまったっていうお前さんの子供は大丈夫か?」
そうして監視の仕事をしている時にそれは突如として現れた。
遠くの平野より黒い装束を着た軍勢あり。
魔王軍幹部 十二星龍が一人
復讐喰らいヴェルデスタ
それを目を見開き確認するとすぐさま警告の鐘の音が街に響き渡った。
…
街は混沌とかし人々は逃げ惑う。
「魔王軍だ! 魔王軍が遂に攻めてきやがった!!」
怒号が響き、カルブが窓を覗くと外には荷物を抱え逃げる人や子供の手を引く親達の姿が目立った。
「ガルフ!、カルブをお願い」
「いや、父さんも一緒に!!」
「私は母さんを見てくるから」
父がフライパンを片手に家を飛び出していく。
カルブはこの状況を理解するにはまだ幼すぎた。
一体何が起こっているのだろう?
「父さん、待って。
私も行くー!!」
カルブが走って父を追おうとしているのを姉であるガルフが止める。
「お前はこっち!
逃げるんだ!」
「いや!!
お父さんの所に行く!!」
外に出て駄々をこねる妹を無視し抱き上げ無理にでも連れて逃げる。
街には火が放たれ遠くに黒い煙が立ち上っているのが見えた。
人がそれぞれ自分の事のみを考え横暴になっている。
ガルフはそう見て感じた。
「どけ!!獣人!
じゃまだ!」
「うあっ」
ズシャッ
押されバランスを崩しガルフは倒れてしまった。
咄嗟にカルブを庇い肩から地面に落ちる。
「お姉ちゃん大丈夫?」
心配そうにカルブが見つめている…。
「だいじょう…」
「うわっ」
目の前でカルブが人波に攫われた。
すぐさま肩を抑え立ち上がるがカルブの姿は無い。
目を開け叫ぶ。
「カルブーー!! カルブー!!」
そんな声も街の混乱する人の声で消えただ一人、流れる人波の中をかき分け探し続けた。
…
「なんとしてもここで食い止めろ!!
少しでも長く時間を稼ぐんだ!
一人でも多く、逃げれるように」
指揮官がやられた今、カルブの母が激を飛ばし前線を押し戦っている。
だが…それも長くは持たないだろう、自分の剣を持つ手が震えているのが分かる。
そしてそんな中…場違いな声が聞こえた。
「お母さん!!」
足に震え抱きつく子供が現れて戸惑う。
「カルブ!?
どうしてここに!?」
そんな事は起きてほしくなかった…。




