アイ・アムショック
都市の中には人々の喧騒が広がっている。
その中に服屋の前で騒ぐ二人がいるヘレナとユリファだ、そんな二人を置いといて店の中を見ると男性用と思われる場所に近づく。
どれも異世界の感じがして悪くない。
他に服がないかと探してみると奥の部屋に鎧などが売っているのを見つけた、興味本位で奥の部屋に向かう。
その部屋には剣が立て掛けてあったり鎧が数点と軽めの装備が何点かある。
剣を見ていると声がユウキに掛けられた。
「みゃーにも分かるかにゃ? 女のロマンが」
声の主はユリファだった。
「女のロマン?」
その問いにユリファは大きく腕を広げた。
「そうにゃ! この剣の装飾!! そしてこの鎧!! かっこいいのにゃ」
「おいユリファ、ユウキにお前の持論が分かるわけ無いだろう。
済まないなユウキ、男性用の服はこっちだ」
ユウキは剣を見ながら名残惜しそうに離れて男性用のスペースへと向かった。
そこは先程いた場所とは違い可愛らしい装飾が施された服が置いてあるスペースだった。
「えっとここが男性用ですか?」
「そうですが?」
ヘレナは当たり前のような態度だ、どうやらこれが当たり前らしい。
しかしユウキはあることに気づいたそれは女性用コーナーにもなぜかスカートがあったのだ。
「あの、これは?」
それに答えたのはユリファだった。
「それはスカートだにゃ。ファッション製を重視した一品なのにゃ。まあ男性のほうが着てる人、多いけどにゃ」
「そうですか」
ユウキの疑問は無くならなかったが分かる訳もなくそうゆうものかと自分を納得させた。
「ゆっくり選んでいてください少し私は少し買いたい品物を見に行きますので。
ユリファ、ユウキを少しの間頼んだぞ」
そう言いヘレナはユウキに銀貨を一枚渡してから店を出た。
「さ〜て、邪魔者も居なくなったし服を選んじゃうにゃ」
ユリファの顔に悪い笑みが浮かんだ。
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「なんですか? これは」
店の前には真顔で固まったヘレナがいた。
「どうにゃ、このミャーが厳選したサポーターの装備は」
ユウキはあの後、ユリファにあーだこーだと着せ替え人形にされ最終的に冒険者風にまとまった。
自分もあの男性服よりはよっぽどましだとこの服にした。
ユウキの服は腕や腰、胸だけに最低限の鎧を纏いその間には布だけという動きやすい防具を着ている。
そして背中にクロスボウと矢、腰にはダガーナイフを付けている。
「ユリファ、お前というやつは」
ヘレナは頭を抱えた。
「にゃはは、ヘレナったらユウキ君が可愛すぎて打ち震えているのにゃ」
「男性にその様な危ない格好はさせられない!」
ヘレナはそう言いユウキにひらひらのついた物やスカートを薦める。
それを着てたまるかとユウキはこの世界の女性物の服がいいと話をずらそうと粘る。
最終的にはいろいろな服を買うことになった。
「お会計は銀貨五枚にゃ。
でもユウキ君かわいいから三枚に負けるにゃ、冒険者装備はプレゼントにゃ」
ユリファは満面の笑顔でユウキを見た。
「ありがとうございます」
ユウキは腰にある金貨が入った袋に手を伸ばす。
「待ってくださいユウキ、ここは私が払います」
ヘレナは銀貨三枚を取り出しユリファに手渡し服の入った袋を持った。
ユウキは悪いですと服を持とうとするが、ヘレナは男性に荷物を持たせる訳にはいけないと断った。
店を出て歩いているとヘレナが口を開いた。
「これからなのですが、少し寄り道で冒険者ギルドへ行きます。
何か思い出すかもしれませんし」
ユウキはそう言われ断る訳にもいかず渋々それに従った。
ギルドは自分の異世界の想像とは違い寂れた所だった。
ユウキが中に入ると中には若い人も居るがおばさんが多く全員がこちらを見ている。
全員女性。
何だか嫌な視線だ。
感じた事の無い視線、ねったりと張り付くようなそんな視線。
ユウキは戸惑いながらも中に入り奥へと進む。
ヘレナは当たり前の様に歩きユウキを連れ席に座る。
「何か思い出しませんか?
依頼をしに来たとか」
ユウキは視線を感じ体を縮め首を振る。
「いや…記憶に無いかなー」
ユウキはあたりの人達が話している声を聞いた。
「あの子、かわいいな」
「ヘレナさんの弟さんか?」
ヘレナはユウキがあたりを気にしている姿に気づき立ち上がった。
「失礼、あなたの様な美しい男性がこのような小汚い場所に訪れる訳もありませんよね」
ヘレナはそう言うと立ち上がりユウキを連れギルドを出ようとした。
「いえ…そんなつもりは」
ユウキがそう言い否定していると横から声がかけられた。
「あの…ご注文は」
これにユウキはショックを受けた。
自分と同じ男性がミニスカートを履き短い袖の服、そこには男の受付嬢が立っていた。
…
ユウキは改めてこの世界に恐怖した。
何ここ…なんで俺はこんな所に…
そんな事を思いながらヘレナに付いていく。
ユウキの心は不安とこの先どうしよ、と言う問題で一杯になった。
取り敢えず思い浮かぶのはこのヘレナと言う女性に付いていく事。
だが、一生と言う訳にも行かず。
帰る方法もしくは自分で働き暮らせる様になるしかない。
今のユウキの手持ちは服と冒険者セット。
火をおこしたりする事はできる。
ここで一つ思い浮かんだのはサバイバルだ。
テレビでやってたしなんとかなんじゃね。
そんなあまい考えが浮かんでは消えていく。
「ユウキさん、これからどうしますか?
ユウキさんが宜しければ今夜も私の部屋に泊まれますが…」
ユウキはそれに「是非お願いします」と即座に答えた。
「ただ…わたくし、依頼が来ておりまして。
明日から何週間かこの街を離れなければなりません」
その返答にユウキは黒い絶望が足元に押し寄せて来るのを感じた。
「え…」
「なので、今私が泊まっている宿をお使い下さい。
そこなら2週間程のお金は払ってありますので」
ユウキはこの申し出にほっとした。
てっきり、いきなり放り出されるんじゃあ、と思っていたからだ。
ユウキはため息をつき取り敢えず雨風をしのげる宿がある事に感謝し、その日もあまえさせてもらいベットで眠った。
読んでいただきありがとうございました
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