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男女逆転から始まる異世界冒険譚  作者: ペンちゃん
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貴方を盗みに…

 「なんだって!? ユウキがいない!?」 

 

 ヘレナは宿の前でクロスボウと冒険者セットを渡され、その部屋は現在、契約期間が過ぎ空き部屋になっている事を知った。

 

 「そんな…どうして?」

 「はい、そういえば…鍵を無くされたとかで…」

  ヘレナはそう聞くとその男性に詰め寄った。

 「それで、どうしたんですか?」

 「えっと…本人確認が取れないので追い出しました…」 

  

 受付の男性はヘレナのあまりの気迫に目を半泣きにさせ弱々しく告げた。

 

 「その後は!どこに行ったのか知らないか!?

 彼は記憶をなくしているんだ!!」

 

 受付の男は首を振る。

 ヘレナは初めてユウキとあった時の事を思い出し、後悔した。

 

 「やはり、一緒に連れて行くべきだったか…」

 

 今頃この寒空のどこかで凍えているのかもしれない…いや…旅は約束の2週間をとうに過ぎている。

 もしかしたら野垂れ死に……。

 いや、きっと今も私を待っているに違いない。

 なんて馬鹿な事を…彼には私しか頼れる相手がいなかったと言うのに…私は…。

 

 ヘレナは情報を集める為宿から外へと出ると先の旅で知り合った女性が外で待っていた。

 

 「ヘレナっち、またせてた男の人とは会えたっすか?」

 

 …

 

 その頃ユウキは自分のご主人様となった貴族アミラの座る横で立ち命令を待っていた。

 アミラは赤毛の美しく格好いい…しかし偉そうで傲慢な性格をしている女性だ。

 今も机に頬杖を突き書類に目を通している。

 

 「おい、紅茶をもってこい」

 「は…はい!」

 

 これだ…

 命令の仕方と言い、なんだか癪に障る。

 ユウキは当然、そんな事は口にせず笑顔で紅茶を作りに行く。

 

 「どうぞ、ご主人様! 紅茶ができました」

 

 キビキビと動き元気よく仕える。

 メイドの基本だ。

 アミラは礼も述べずに紅茶を飲む。

 ユウキは作り笑顔でニコニコとしている。

 

 「おい、片付けろ…」

 「はい、ご主人様!」

 

 この仕事は本当に疲れる。

 精神的に…。

 このミニスカートもそうだ。

 

 ここでもまたミニスカが、現れるとは。

 こんなミニスカメイド姿を地球の…それも正常な人が見たらなんと言うだろうか?

 きっと笑い者にされるに違いない。

 

 特にあいつ…地球で仕事をしていた頃の後輩、コトミ。

 奴だけには、絶対見せられない。

 あはははは…なんすか!? 先輩その格好…はあ…あはははは…。

 容易に想像できる。

 

 絶対に見せられない…。

 

 …

 

 夜…ユウキは暗い自室の寝室に入ると窓が開いている事に気づいた。

 あれ? 閉めたはずなのに…

 

 ユウキがその窓を閉めようと扉を閉め中に入ると誰も居ないはずなのに声がかけられた。

 

 「全く世話を掛ける王子だな…」

 「誰っング…」

 

 振り向くと手を握られ唇を奪われた。

 女性は口を離し口を笑わせる。

 あの盗賊だ…。

 ユウキは頬を赤く染め今起こった現状に耐えきれず背中を見せ顔を隠した。

 

 いやいや…なんだこの状況…。

 俺…今何された!?

 

 盗賊の女性はユウキの前に回り込み言う。

 

 「私の名はシーフ。

 今宵は貴方を盗みに上がりましたよ、プリンス…」

 

 …

 

 ユウキはシーフに手を引かれ屋敷の中を堂々と歩いた。

 窓から二人で逃げるのは危険な為、無理らしい。

 

 「あの…シーフさん…一体どうやってこの屋敷に入ったんです?」

 

 この屋敷…と言うか城は魔法壁と呼ばれる見えない壁に囲まれて侵入不可能なはずだ。

 

 「ん?…なに、変装して堂々と入っただけの話さ。

 もちろん逃げ道も調べてあるから安心しな」

 

 シーフは自身ありげな…何処か楽しんでいる様な表情で話す。

 ユウキ達が最上階の5階から4階に降りた時…下の階から異変を感じた。

 金属がカチャカチャと音を立てる音。

 多くの鼻息…そしてその気配。

 シーフは立ち止まり瞳を閉じて耳をすませる。

 

 「…バレてたか」

 「ふわっ!?」

 

 そう言うと手を引きユウキを抱き寄せ、お姫様抱っこした。

 

 「しっかり掴まってな」

 

 ユウキは言われた通りにしがみつく。

 以前にもヘレナにこれをやられ絶叫系を味わったからだ。

 シーフはユウキを確認すると走り階段を駆け下りる。

 

 「あわわわわわわ…」

 「黙って無いと下を噛むぜ?」

 

 下の階には武装した女性達とその奥に貴族のアミラがいた。

 

 「全く、どこでそんな男を口説いたんだ?

 一昨日の子供と言い。

 ユウキ…悪い娘だ…」

 

 ユウキがシーフの首にしがみつきながら見るとアミラが笑みを浮かべてこちらを見ていた。

 それも沢山の兵士を引き連れて。

 

 「こっちに来い」

 「嫌です!!」

 

 ユウキは拒否しシーフに自分の命運を任せた。

 

 「だとさ…あいにく、私も一度狙った獲物は確実に盗む主義でねっ!!」

 

 シーフはそう言うと素早く走り兵士たちのいる頭上の壁を蹴り走り抜けた。

 

 「強気な男だ…ますます、気に入った…。

 …これだから、無理に心を奪う楽しみがあると言うもの…好きな者を奪われた女はどの様な顔をするか…」

 

 アミラはそう呟いたあとに周りの兵を見て怒鳴る。

 

 「おい、何をぼんやりしている…さっさと捕らえに行け!

 『はっはい!!』

 

 「まったく、ちょろいぜ。

 魔法壁に頼り過ぎる奴は……と…思ってたんだがな」

 

 シーフは屋敷中を逃げ回っていたのだが…今では窓のある廊下で兵士達に挟まれ追い詰められていた。

 

 「ちょっと…これ、どうするんですか!?」

 

 ユウキは、ああ言った手前もう後戻りできない。

 シーフはユウキを抱えたまま窓に背を向け後ずさる。

 外は、ちょうど湧き水が出ている滝のある湖が見える。

 

 「運がいいのか…悪いのか…」


 シーフがそう言い終わるや否やユウキに声がかけられた。

 

 「ユウキ…命令だ…こちらに来なさい」

 

 貴族アミラが兵たちを分け現れた。

 

 「何度も言いますが嫌でっ…」

 「チャーム『魅了』」

 

 アミラの目が突如、青く光を放ちユウキの瞳を見据える。

 それを見ていたユウキはなんだかお酒に酔った感覚に陥り思考が難しくなった。

 今やユウキの目は、とろんとした瞳に変わり頬を染めてアミラを見つめている。

 

 「魔法!?」

 「ユウキ…こっちに来なさい」

 「ふぁい…アミラ様…」

 

 ユウキがシーフから離れようともがき始める。

 

 「目を覚ませユウキ!!」

 

 しかしその声はユウキには届かない。

 暴れてようやくシーフから離れるとユウキはアミラの側に駆け寄り抱きしめられた。

 

 「今だ!殺せ!」

 「クソっ!!」

 

 シーフは咄嗟に窓に足をかけガラスを割り外に飛び出した。

 しかしその時に矢が飛びシーフの腕に命中した。

 

 「ぐあっ!!」

 

 シーフはそのまま暗い湖にへと落ちていく…落ちていく。

 

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