カルブの想い
カルブはある朝、クエストボードでママ活はじめました…と書かれた紙を見つけた。
「ユウキさんと…一日デート!?」
尻尾をブンブン振りその紙をよく見る。
。
一回50銀貨…高い…でも一回デート。
カルブは今持っているお金を全部出し数える。
銀貨60枚
……1日分…。
大切にそれを袋に戻しカルブは噴水広場に向かった。
…
ユウキは項垂れていた。
冷たい床に冷たい食事。
家畜みたいに鎖に繋がれ見世物にされている。
「お前は質がいいからな、ここで客寄せしろ」
道から見える人々は檻の中にいるユウキをまるで動物でも見るかのように見てくる。
首にはオークションの目玉商品と書かれた木の板をぶら下げられ紐が食い込んで痛い。
手足には手錠と鎖がカチャカチャと音を鳴らしている。
体操座りで顔を隠しているがそうしていると奴隷商人に見つかった際に鞭が飛ぶ。
だが…見世物にされるのは気分が悪い、そうしていると。
コンコン
と音がなった。
また客が顔を見せろと言いに来たに違いない。
しかし、かけられた言葉は安心する聞いたことのある声だった。
「ユウキさん、大丈夫ですか?」
はっと顔を上げるとカルブが格子越しにいた。
「カルブ? どうしてここが!?」
カルブはシーっとジェスチャーしてユウキを見て話す。
「鼻で嗅いできました。
ユウキさんの匂いは覚えているので。
私が絶対、ユウキさんを助けますからオークションが終わるまで我慢してください」
そう言うとカルブは去っていった。
ユウキさんを助けなきゃ。
カルブはその思いで胸をいっぱいにし急いで銀行へと向かう。
銀行には6金貨もの頑張って毎日ためた資産がある。
銀行に入り受付でカルブは言った。
「全部おろして!!」
…
オークションが始まりユウキは中へと連れ戻されていた。
ここに並べられた奴隷達は男子供ばかり。
いやいやと暴れているが連れて行かれる奴隷を見ると落ち込んだ気分になる。
次は自分の番だろうか…。
そんな考えたくもない思考が頭をよぎる。
「次、目玉商品! 早く連れてこい!!」
目の前に鞭を持つ女性が一人とユウキの鎖を持つ女性が一人…こちらを見ている。
「お前だ!! 早く立て!」
「うぁ」
鞭が飛び体に当たる。
痛みでしょうが無く立ち上がって歩く。
そしてユウキはオークションの表舞台に立たされた。
ライトに当てられて眩しい。
「さあ、本日の目玉商品が登場しました。
では、早速、参りましょう。
始まり値は3金貨…さあ!!どうだ!?」
女性の司会者が意気揚々と話を進めオークションを始める。
3から4 4から5と値が上がっていく。
そんな中カルブが手を挙げた。
「6!!」
カルブがそう堂々と言ったのだが一番前にいた貴族らしき女性が手を挙げた。
「20だそう…」
いきなり飛んで20…会場はざわめき、貴族に視線が集まった。
「相手がアミラじゃあ分が悪いな」
「20か…やっぱ貴族は違うな」
これでオークションは決着した。
カルブは体を震わせユウキを見つめる。
どうしよう…負けた…
ユウキが遠くに行ってしまった様に感じる。
笑顔で接してくれるユウキさん…頭を撫でてくれるユウキさん。
その顔、匂いがカルブの頭の中で巡る。
その全てが好きだった。
なんとかしないと…
…
ユウキはオークション会場から出て町中を貴族の護衛と共に歩かされている。
カルブは頑張ってくれた。
自分で蒔いた種…自分でなんとかしないと…。
ユウキがそう考えていると貴族の一行が止まった。
ユウキは何事かと前を見るとそこにはカルブがこの先へは行かせないというかの様に立ち塞がっていた。
「行かせない!!
ユウキさんを返せ!!」
「返せ?…訳の分からん事を…。
これは私が買った物だ」
貴族の女性が手を上げると周りにいた護衛がカルブを囲んだ。
「カルブ!!」
ユウキがその状況を見て叫んだ。
カルブはユウキの叫びに応えるかのようにカルブにあった小さな剣を引き抜き構えた。
「ユウキさんは…私が守る!!」
カルブは手前の兵士と対峙してそう叫ぶ。
ユウキはハラハラしながらその戦いを見る事しかできない。
最初は優勢かに見えたが徐々に追い詰められカルブは集団から袋叩きにされた。
見てもいられない。
ユウキは自分の鎖をもつ女性に体当りし押し倒すと、すぐさまカルブのもとへ向かった。
手は後ろ手にされ拘束されているが足は動く。
カルブが頭を押さえ耐えている中ユウキは今、自分ができる事。
カルブに覆いかぶさり代わりに蹴りや殴りを受けた。
「邪魔だ!! 奴隷!」
カルブはうずくまり震えて怯えていた。
「カルブ…僕は大丈夫だから…早く逃げて、自分で何とかするから…」
「おら! 立て、奴隷!!」
ユウキは髪を捕まれ無理やり起き上がらされる。
「うう…」
「男が…俺を突き飛ばしやがった!!」
カルブが不安そうに見るのでユウキは笑った。
大丈夫だか…
「がっ!」
髪を掴んだまま女性はカルブの目の前でユウキを殴った。
「あああ…」
「ユウキさん!!」
カルブが近付こうとするが周りの兵に押さえられユウキに近づけない。
「やめろ!! 俺の奴隷だ、貴様に傷つける権利は無い。
それとも、殺されたいのか?」
貴族の女性がそう言いユウキに暴力を振るった女を見て睨んだ。
…
カルブはその後も押さえつけられ何も出来ずユウキが連れて行かれるのを見る事しかできなかった。
貴族が去った跡は道の真ん中で再び袋叩きにされる。
それが飽きられると女達はふんずと持ち上げどこかえと連れて行く。
カルブは力も無く、だらんとした状態で首を掴まれ、路地裏にあるゴミ捨て場に投げ捨てられた。
カルブは泣いていた…。
確かに血が出ているが痛いからではない。
悔しい。
涙が止まらない。
救えなかった…。
目の前で大切な人を傷つけられ、連れて行かれた。
守らなくちゃいけないのに、逆に心配され守られた。
「守れなかった。
守れな…かった……」
嗚咽が混じり言葉が続く。
「ちくしょう…ちくしょ…う」
カルブは寝たまま床を拳で叩く。
「……強くなりたい……」
読んでいただきありがとうございました
m(_ _)m




