呼び名
一度、完結にします。
いくつか番外編として捕捉する予定です。
番外編の投稿は週に3回程度になると思います。
いつのまにか3月になった。強い北風が吹くことが減り、木の芽が膨らみを見せるようになってきた。
この日の放課後、フレデリック王子、キャサリン、エドワードの3人はサロンに集まっていた。
「キャシー、婚約おめでとう。」
エドワードがキャサリンに祝いの言葉を告げる。
先週、フレデリック王子とキャサリンの婚約が正式に発表されたのだ。
「ありがとうございます。エディ様から面と向かって言われると、なんだか照れてしまいますね。」
キャサリンはエドワードを向いて、はにかんだ笑顔を浮かべる。
「来月からはお妃教育が始まるのだって? 頑張りすぎないようにね。」
「はい、無理しないように気をつけます。そういえば、エディ様は殿下の側近として、王城にお勤めになるのですね。」
「うん、そう。まずは、文官としての仕事を習う事になるかな。キャシーよりも僕の方が、学ぶことが多そうだ。」
「エディ様なら大丈夫ですよ。」
「なんなんだ、お前たちは。恋人どうしか?」
2人の会話を聞いていたフレデリック王子が、不機嫌な声を出す。
「2人で甘い会話なんかして、キャサリンは私の婚約者だぞ。」
「拗ねているのかい?」
エドワードがフレデリック王子を揶揄う。
「拗ねているわけではないが。なぜキャシーはエディと愛称呼びなのに、婚約者である私のことは敬称呼びなんだ? 面白くない。」
フレデリック王子が仏頂面で言うのを、エドワードは珍しいものを見るようにみつめる。
「殿下、すみません。殿下を嫌な気持ちにさせるつもりはないのです。エディ様は幼馴染だから、ついつい気安く話してしまうのです。これからは愛称呼びはやめますね。」
キャサリンがフレデリック王子に詫びるが、王子は首を横に降る。
「いや、そうではない。これからも愛称で呼べばいいさ。2人の仲の良さに嫉妬したんだよ。」
「じゃあ、キャシーは殿下のことを愛称で呼んだら?」
気落ちした様子の2人を見て、エドワードが提案する。
「愛称ですか?」キャサリンはキョトンとした顔をする。
「うん? 父上や母上は、公務外では『フレディ』と呼ぶが、、、」
「では、私も『フレディ様』とお呼びしますね。」
そう言って微笑むキャサリンを見て、フレデリック王子もつられて微笑む。
「君のことは『キャシー』と呼んでもいいかい?」




