攻防の始まり
年が明けて年始休みも終わり、学校の授業が始まった。
フレデリック王子はエドワードと一緒に、エミリーの身辺を探っているようだ。
そんなある日、キャサリンが級友のスーザン達と、中庭に置かれたテーブルでお昼ご飯を食べているときに、エミリーがやってきた。
「キャサリン様、ちょっとよろしいかしら?」
キャサリンが、サンドイッチを頬張ったまま顔を上げる。
エミリーは、キャサリンの周りに座る生徒たちを見回し、眉をひそめる。
「内密の話がしたいのですが、お友達とご一緒なのですね。」
そしてキャサリンを見つめて言った。
「2人で話せる場所へ移動しましょう。来ていただけます?」
キャサリンが返事をする前に、エミリーが歩き出そうとする。
「あっ、待ってください。私たちが移動します。」
そう言うと、スーザンが皆を連れて、そそくさと立ち去った。
私が一言も言えないうちに、話がまとまったみたい。
エミリー様と2人きりで話したいことなんて何もないのに。。。
スーザン達もどこかへ行ってしまうし、はぁ、、、なんの話かしらね。
キャサリンが考え事をしている間に、エミリーはキャサリンの向かいに腰を下ろす。
「前にお会いした時に『フレデリック殿下との婚約はしていない』とおっしゃっていたけど、あれは嘘だったのかしら?」
エミリーが詰問してきた。
「あの時に私がお伝えしたのは、『私の婚約が決まったと父から聞いていない』です。それは嘘ではありませんし、今も父から聞いたことはありません。」
キャサリンがゆっくりとだが、はっきりと答える。
フレデリック王子との婚約については、王子からキャサリンへと提案されたことである。国王が承認したことも、キャサリンは王子から聞いた。父からは「この話を進めていいのか?」という確認をされただけである。
キャサリンが言ったことは嘘ではない。
「でも、王城舞踏会で、王族方と一緒に入場したのを見ましたわ!」
エミリーの口調は強く、反論させないつもりのようだ。
「フレデリック殿下には、現在は婚約者がいらっしゃいませんもの。パートナーとして適当な女性を選ぶことになりますし、それが、たまたま私だっただけでは?」
「適当な女性に、わざわざドレスは仕立てないわ!」
キャサリンの静かな口調とエミリーの激しい口調とが、全く対照的だ。
「それに、第一王子殿下のお子様方とも仲良くしていたし、婚約者じゃないなら、一体、どういうつもり!?」
エミリーは体を前に乗り出し、キャサリンを威圧しているかのようだ。
「ステファニー嬢がいなくなってチャンスだと思ったのに、なんであなたがいるのよ!?」




