犯人
舞踏会の次の日、キャサリンはフレデリック王子に呼ばれ、王城を訪れた。
フレデリック王子の私室には、ギルバートもいた。
「お久しぶりです、カートレット公爵。」
キャサリンがギルバートに挨拶をする。ギルバートは王族を離れた時に、カートレット公爵を名乗ることになった。
「キャサリンから『公爵』呼びは、寂しいね。前と同じようにギルバートで構わないよ。フレデリックから聞いたけど、大変そうだね。」
ひととおり挨拶をした後で、フレデリック王子が真面目な顔をした。
「さて、昨日キャサリンを別の控え室に案内した騎士だが、エミリー嬢の兄の可能性が高い。」
フレデリック王子がキャサリンに告げる。
「彼は近衛騎士として王城に勤めている。昨日の午後は休みだったが、騎士姿を見た者がいる。さらに、門番に確認したところ、昨日キャサリンを案内した者の特徴が彼と同じだった。」
フレデリック王子の説明に、キャサリンが頷く。
そして、王子は目線をキャサリンからギルバート移し、言った。
「兄上が昨日見た光景から、目的も見当がついた。」
ギルバート様が見た光景? 私を舞踏会に出させないこと以外に、何かあるってことかしら?
キャサリンの不思議そうな顔に、ギルバートが説明を代わる。
「私がキャサリンを探したんだが、その時に彼に会ったんだよ。もちろん彼も貴族だから、舞踏会に参加する目的で来たとしても不思議でないが、王族の入り口近くにいたんだ。」
舞踏会に普通に参加する者なら、王族の入り口へ来ることはない。確かに、それは怪しいかもしれない。
「そして、彼が連れている女性が、エミリー嬢だったようなんだ。女性は後ろ姿だったし、私は彼女と学年が違うから、断言はできないが。」
エミリー様?エミリー様は成人前だから、舞踏会に参加しないはず。王城にいるのも変だわ。
「たぶんだが、2人はフレデリックを見ていたようだった。フレデリックのパートナーとして、エミリー嬢を推す予定だったのじゃないかな。エミリー嬢はかなりドレスアップしていたよ。」
フレデリック王子が、ギルバートの説明を引き継ぐ。
「王族がパートナーなしで入場するなんて、ほとんどあり得ない。キャサリンが行方不明となれば、『誰でもいいから』という判断をするかもしれない。そして、エミリー嬢を急きょのパートナーにすれば、婚約者筆頭と思わせることができるからな。実際は、兄上がマーガレット嬢を寄越してくれたがね。」
「今、1番の問題は、それを考えたのが誰かってことだ。2人だけなのか、クーパー男爵も関与しているのか、別の誰かか。さて、どうやって調べるか。。。」




