特技
エドワードがドアノブを回したり扉を叩いたりして、なんとか開けられないか試行錯誤している。その様子を眺めながら、キャサリンは独り言のようにつぶやいた。
「エディ様と私を閉じ込めて、どうするつもりなのかしら?」
「ん? 目的は、君とフレデリック殿下の婚約の阻止じゃないの?」
キャサリンの声は小さかったが、エドワードにはしっかり聞こえたようだ。
「そうなんですけど、、、ギルバート殿下の時とは状況が違うと思うんですよね。だって、私とエディ様は幼なじみで仲もいいし。2人で過ごしたことなんて、何度もありましたよね?」
「まあ、ちょっと表現が悪いけど。一緒の馬車で移動したりとか、お互いの家を訪ねてお茶を飲んだりとかね。」
エドワードはキャサリンの質問に答えながらも、キャサリンの考えがまだわからず、首を傾げる。
「今までも時々2人でいたことがあったのだから、今さら2人で閉じ込めて、醜聞になるのかしら?」
「ああ、なるほどね。君はまだ殿下の婚約者と公に発表されていないから、今までと同じように僕と2人でいても、簡単に言い逃れできるってことか。」
エドワードはキャサリンの言葉に納得し、そして、考え考え、話し続けた。
「そうすると、、、犯人は深く考えずに行動したか、キャサリンが問題あり令嬢だと噂の種にしたいか、、、てっ!キャサリン!何しているの?」
キャサリンが突然床の上に寝転んだため、エドワードは驚きの声をあげてしまった。
「何って、ドアを開けようと思って。こういう扉って、蝶番のピンを1本抜くと、簡単に外れるようになっているものがあるんですよ。えっと、、、これは抜けるタイプだわ。」
キャサリンはそう言うと、下の蝶番からピンを1本抜いた。
エドワードは目を丸くする。「どこで、そんなことを知ったの?」
「ステフから聞きました。よくブランドン邸の屋根裏部屋に入れられるので、どうやったら出られるかを庭師さんに教えてもらったんですって。私も何度かおば様にお仕置きされてしまったから、役に立ちましたよ。」
キャサリンの説明に、エドワードは数年前を思い出した。
確か、ステフが13歳ごろだったかな。ステフのお転婆がどんどん激しくなるから、母上がステフを、たまに屋根裏に閉じ込めていたっけ。最初の頃はステフも嫌がっていたけど、そのうち平気になってしまって、慣れたのかな?と思っていたけど、そうか、勝手に抜け出していたのか。。。
エドワードが昔を思い出しているそばで、キャサリンは今度は棚をよじ登っている。
「ちょっと、次はなんなの!?」
「え? 上の蝶番に手が届かないので、、、ここには台が見当たらないし、、、エディ様を踏み台にはできないし、、、ダメでした?」
キャサリンが、どこが問題なのかわからないとキョトンという顔をして、エドワードを見下ろしている。
「いいから、早くピンを抜いて、下りて!」
「わかりました。エディ様は、ドアが倒れないように抑えてください。」
焦っているエドワードとは対照的に、キャサリンは冷静に指示を出す。
上の蝶番からピンを抜き、棚から下りたキャサリンを見て、エドワードは安堵の息を吐く。
「キャシーも、ステフと一緒に庭を駆け回っていたことを忘れていたよ。」
「ステフとは違いますよ。ステフだったら『窓から外の木に飛び移ろう』と言ったはずです。私はさすがに、それは言いません。」
キャサリンは、ステファニーと一緒にされたことに不満の声を上げた。




