恋心
学園パーティーから1週間が過ぎた。
ノエア草事件に関する調べがほぼ終わり、今後の対策を立てるため、フレデリック王子はエドワードを寮の私室に呼んだ。
「やはり、クーパー家のエミリー嬢が怪しいか。。。」
報告書を見ながら、フレデリック王子がつぶやく。
「そうだね。でも、エミリー嬢のほかに誰が関わっているのかは、まだはっきりしていない。」
ここにはフレデリック王子とエドワード2人だけのため、エドワードの口調はくだけたものになっている。
フレデリック王子は報告書から顔を上げ、頬杖をついた。
「しかし、どうもすっきりしない。。。それまで彼女は、ステファニーに嫌味を言ったりと直接的な攻撃をしていたのに、今回のは路線が違う。」
「もしかしたら、計画したものが別にいるのかも。。。?」
「黒幕がいるなら、下手にエミリー嬢に手が出せないな。こちらがエミリー嬢を疑っていることが相手にバレたら、彼女だけを切り捨てるかも知れん。」
フレデリック王子の眉間にシワが寄る。
「では、とりあえず様子見かい?」
「ああ。俺の婚約者はまだステファニーだし、彼女は領地にいるから、今のところは向こうも動かないだろうさ。」
エドワードのは無言でうなずいた。
「そういえば、昨日の陛下との相談はどうでした?」
フレデリック王子の動きは早かった。学園パーティー翌日、国王に「次の婚約者はキャサリンにしたい」と伝えた。さらに次の日はアスター侯爵に会い、一連の事件の経緯を話し、キャサリンとの婚約の申し込みを行った。
「8月下旬に、ステファニーとの婚約の解消を発表することになった。すぐに次の婚約を発表するわけにはいかないから、半年程度空けて、2月にキャサリンとの婚約を発表する。12月の王城舞踏会では、仮の婚約者として出席してもらう。こんなスケジュールだ。」
フレデリック王子の説明に、エドワードは、了解、と首を縦に振った。
「それにしても、ステフのことは、本当にいいの?」
エドワードがフレデリック王子の顔色をうかがうようにして尋ねた。
フレデリック王子は右眉を上げて、エドワードに先をうながす。
「好きなんでしょ? 婚約を解消したら、もう無理だよ。」
「ふん。別れ際に『婚約者で楽しかった、好きでした』と、あんな良い笑顔で言われてみろ? ステファニーが俺のことをどう思っているか、身に染みたわ。少しでも恋愛感情を持っていたら、ちょっとでも寂しそうにするだろうさ。」
フレデリック王子が投げやりに答えるので、エドワードは苦笑いした。
フレデリック王子は、悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべた。
「俺のことよりも、お前のほうは実らせろよ。」
エドワードは、曖昧にうなずいた。




