控え室
学園パーティー当日、エドワードがキャサリンをアスター邸へ迎えに来た。学校に着くと、2人で控え室に向かう。そのままフレデリック王子を待つはずが、エドワードが控え室の扉を開けると王子はすでに部屋にいた。
「遅くなってしまいましたか、、、すみません。」
「いや、私が早くに来た。仕事が一区切りついたから、誰かに見つかる前にここへ逃げてきたんだ。」
キャサリンの謝罪を否定して、フレデリック王子は口端をあげる。
「ドレスが似合っている。直しが間に合ってよかったな。」
さすがは王城に勤める侍女たち。日曜の午後に試着したドレスは、キャサリンにピタリと合うように手直しされ、水曜にアスター邸へ届いた。
その後、3人でたわいもない話をしていたが、不意に会話が途切れた。
「殿下、不躾なことですがお尋ねしたいことがあります。」キャサリンはチラリとエドワードを見る。エドワードの前で質問してもいいか迷ったからであり、エドワードにはキャサリン意をくみ部屋を出ようとした。
「エドワード、居てもらって構わない。」フレデリック王子がエドワードを止める。
「では、なぜステフとの婚約解消を選んだのですか?」
「なぜって、これから起こるだろう事件を防ぎ、ステファニーを守るため、かな。」
フレデリック王子は、苦笑いのような笑みを浮かべて答える。
「その説明は先週おうかがいしましたが、それだけでは婚約解消の理由には弱いと思います。殿下なら、婚約を続けたまま、ステフを守る案も考えられましたでしょう? ステフを大切に想っていらしたのに、とても不思議なんです。」
「えっ!? 殿下がステフを? 本当に?」
キャサリンの言葉に先に反応を示したのは、エドワードだ。目を丸くしてフレデリック王子を見つめる。
「ああ、本当に君は聡いね。おまえにそんなに驚かれると、なんだか腹が立つな。」
フレデリック王子はキャサリンに言った後に、エドワードをひと睨みした。そして、表情を引き締めて、キャサリンに向き直る。
「ノエア草を誰が仕組んだかはまだ不明だが、この犯人には感謝もしているんだ。ステファニーを手放す口実を与えてくれたのだから。」
「ステファニーの目は、いつも外を見ていただろう? 私が臣下に下る予定のままなら、それでもよかった。将来は王家が持っている土地をもらって、そこに住めばいい。でも兄上のことがあって、王都を離れるどころか王城内に住むことになった。彼女は、籠の中の鳥には、なれないさ。」
フレデリック王子はそう言うと、寂しそうに笑った。




