夏休みの計画
「こんなに雨が続くとイヤになりませんか?」
ステファニーは、サロンの窓から降り止む気配のない雨を見ながら、向かいに座るフレデリック王子に言った。今日は6月の半ばなのに、今月になって雨が降らなかった日は3日しかない。晴れた日なんてゼロだ。
「そうだな、恵みの雨とはいえ限度があるな。」
フレデリック王子がステファニーの言葉に頷く。
「君は外で動き回るのが好きだから、こう雨ばかりでは気が滅入るだろう?」
「気分が沈む時は、楽しいことを考えるといいですよ。気持ちが晴れます。」
ステファニーがにっこりと微笑む。
「なるほど、楽しいことか。。。ステファニーの楽しいことは何だい?」
フレデリック王子がニヤリと口元で笑って、聞いた。
「今、1番楽しいのは、夏休みに領地でどうやって過ごすか考えることです!」
ステファニーが何故だか胸を張って答えた。
「今年の夏休みは、キャサリンがブランドン領に来る予定なんです。一緒にどこに行こうか考えるのは、とっても楽しいですよ。」
「去年は、君がアスター領に行っていたな。どんなことをして過ごすんだい?」
「アスター領では市場で買い物が多いです。珍しいものがいっぱいあって、毎日通っても飽きないんですよ!」
「アスター領には大きな街道があるから、隣国からも物が多く入ってくるだろうね。」
フレデリック王子は頬杖をついて、ステファニーの話を聞いている。
「ブランドン領ではどうするの?」
「うちの領地の北西部には『魔の森』と呼ばれる森があります。竜や精霊が住むと言われていて、森の奥深くまでは誰も行ったことがないんです。森を少し入ったところに森番の小屋があって、そこで数日過ごすのが楽しみです。」
ステファニーの目がキラキラしている。
「そこで過ごすって? 護衛や侍女を数えたら森番の小屋には、入りきらないだろう?」
「大丈夫です。一緒に行くのは従者のティムと護衛2名ほどですから。侍女は要りませんし。」
「侍女が要らない?ご令嬢は着替えにも侍女が必要だろう?」
「キャサリンも私も、身の回りのことは自分でできますよ。スープ程度の簡単な物なら作れます。」
「料理もできるなんて、君らしいといえば君らしいね。」
ステファニーは目をキラキラさせて話し続ける。フレデリック王子は、そんなステファニーを静かに見ていた。




