下された処分
年が明けて、学校が始まった。
休み中にジェシカは退学した。ジェシカの退学に生徒たちは数日騒がしかったが、本人が不在だと噂のしがいがないのか、ジェシカに関する話はあっという間に消えた。
また、バーグマン男爵は隠居させられる事になった。バーグマン男爵がギルバート王子を閉じ込めた事が公になると、男爵の家族にも累が及ぶ。それを避けるために、男爵1人が払えば良い程度の罪を作り上げた。自分の家の使用人に過度な暴力を振るった事にした。使用人に対する懲罰権は家長にあるため、男爵が自分の家の使用人に多少の暴力を振るっても罪には問われない。そのため「生死に関わるほどの過度な暴力」という事にした。
男爵位は12歳の息子に譲らせたが、さすがにまだ幼いため、ジェシカの母の実家から補佐役を招くことになった。
男爵は始めは「自分は無実だ」と主張していたが、「王族に対する傷害罪でバーグマン家を取り潰し家族そろって平民になるのと、どちらがいいか」と問われ、隠居を選んだそうだ。
ちなみにこの件は、アスター侯爵との関わりは伏せた方がいいだろうと判断され、第一王子が陣頭指揮を取る形にしたそうだ。
ダイアナは、ギルバート王子と今年最初のお茶会の最中だ。誰にも聞かせられない内容なので、特別にサロンの個室で話している。
ダイアナはバーグマン男爵の処分について侯爵から聞かされていたが、今、ギルバート王子からも説明を受けた。
ギルバート王子は説明を終えると、最後に言った。
「ジェシカ嬢と私の閉じ込めに関しては、特に何かする事はない。ジェシカ嬢は泥を被ったままだ。どうにもならないな。。。」
ダイアナはギルバート王子の言葉に返事を返さなかった。
代わりに、一呼吸つくと「殿下、提案があるのですが、聞いていただけますか?」と言った。
「提案? お願いということかい? どちらにしても、ダイアナには珍しいことだね。」
ギルバート王子は少し驚いた顔をしたが、すぐに微笑んだ。
ダイアナは、努めてゆっくりと言った。
「婚約を解消しませんか?」




