表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子様との婚約って大変!  作者: 宿月ひいな
第一章 アスター侯爵令嬢 ダイアナ
19/72

ダイアナの思い

ジェシカと別れた後、ダイアナはずっと考え事をしていた。

帰りの馬車の中でも夕食時でも、ジェシカから相談されたことをずっと考えていた。


婚約をしていない男女が2人きりになった事は、男性にとっては全くダメージがない。男性の中には、結婚前に色鮮やかな交際を繰り広げる者もいる。それでも結婚に影響はない。

しかし、女性には大スキャンダルだ。ふしだらな令嬢とレッテルを貼られ、まともな結婚は望めなくなる。醜聞の相手が責任を取って結婚してくれれば良いが、そうでないなら、一生独身で過ごすか、金持ち貴族の後妻に入るかになる。


ギルバート殿下は王子という身分があるため、男爵令嬢のジェシカとの結婚は有り得ない。ならジェシカは日陰者として生きるしかない。閉じ込めが不運な事故だと思っているギルバート殿下は、ジェシカの境遇に責任を感じるだろう。そうなれば、ジェシカの父バーグマン男爵の思惑通りに、ほとぼりが覚めた頃、例えば数年後になんらかの取り引きが行われるかもしれない。


昼に話したジェシカは、自分の結婚について憂えてはいなかった。殿下を騙すのが辛いと言っていた。ダイアナにはそれが不思議だった。ジェシカがギルバート殿下を見つめる瞳には、恋慕の想いが溢れているように見えた。一途で真っ直ぐな恋する心が眩しく、正直に言うと羨ましかった。



そろそろ就寝時間という頃、ダイアナは父の書斎を訪ねた。

ダイアナが部屋に入ると、公爵は書物机に座ったまま、柔らかな口調で言った。「その顔は頼み事かい?」


「はい。お父様にお願いがあります。バーグマン男爵令嬢の力になりたいのです。」

ダイアナがきっぱり言った。

侯爵には思いもよらないことだったのか、目を丸くし、ダイアナに尋ねた。

「バーグマン男爵令嬢というと、いま噂のジェシカ嬢だね。なぜ、彼女を助けたいと思うんだい?」


ダイアナは、ジェシカから受けた相談について、全て話した。

侯爵は途中に口を挟まず最後まで聞くと、「なるほどね。。。」と呟いた。


「殿下が閉じ込められた事については、こちらでも調べたよ。あのドアノブは普段から調子が悪くて、回らないことがたまにあるらしい。あの時は皆んなが殿下を探す事に気を取られて、ドアに鍵がかけられていたのか、それとも単なるノブの不具合か、誰も確認しなかったそうだ。今からでは事件か事故かわからず、とりあえず事故として処理する事になったんだ。」

「でも、ジェシカ嬢の話が本当なら、これは事件だ。しかも、王子への罪だからかなり重い。ジェシカ嬢が証言してくれるなら、男爵の家族に対しては考慮できるかもしれない。明日、国王陛下に奏上してみよう。」


父が陛下に取りなしてくれると聞いて、ダイアナはほっと安心した。肩の荷が下りた思いだ。

「お父様、ありがとうございます。」そう言って退室しようとしているダイアナを、侯爵は呼び止めた。


「ディーは、どう思っているんだい?」

「・・・どう、とは?」父の言うことがわからない。

「ディーの相談はいつも周りの人のことばかりだね。ディー本人は何を望むの?」

「私の望み・・・」

「そうだよ。ジェシカ嬢は、『殿下を裏切りたくない』が彼女の個人としての思いだろ? 王子の婚約者とか、侯爵家の娘とか、そういったものを全て取り払ったときの、ディー個人の思いはなんだい?」侯爵が、ゆっくりと噛み砕くようにして、言う。

「一度、自分の心を見つめてごらん。本当の気持ちをしっかりと探して、そして、自分の進む道を自分で選びなさい。どんな選択をしても、父は応援するよ。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ