うわさ
ダイアナがジェシカと会ってから約10日後の昼休み、ダイアナは親友のブリジットと中庭のベンチに座っていた。西街区に新しく出来たカフェに今度行こうと話していたところ、突然、ギルバート王子から声をかけられた。
「ダイアナ、ここにいたのか。探していたんだ。」
ギルバート殿下に探されていた事に、ダイアナはとても驚いた。用があるときは事前に手紙が届く。殿下自らが探されるなんて、一体、何があったというのだろうか?
「こんにちは、ブリジット嬢。お邪魔してもかまわないかな?」ギルバート王子が、ダイアナの隣に座っているブリジットに話しかける。ベンチから立ち上がろうとするブリジットに、その必要はないと手で告げると、ブリジットが返事をする前に、ギルバート王子がさらに尋ねた。
「あぁ、その表情はもしかして、噂を聞いているね?」
ブリジットは困った表情で返事をした。「はい、耳にしております。」
うわさ?殿下のこと?私のこと? ブリジットの顔を見ると、きっと悪い内容なのだろう。ダイアナには全く心当たりがなかった。
ベンチのそばに置いてあった1人がけの椅子にギルバート王子は腰をかけた。
「ダイアナは聞いたことがないみたいだね。ブリジット嬢、申し訳ないけど、あなたが聞いたものを教えてくれないか?」
ギルバート王子は、ダイアナの顔色から、噂についてダイアナは知らないのだろうと予想すると、ブリジットに向かって言った。
ブリジットはギルバート王子とダイアナの様子を交互にうかがいながら、ゆっくりと話し始めた。
「私が聞いたのは、ギルバート殿下に親しい女子生徒がいるという噂です。2人で人目のつかない道を楽しそうに歩いていたとか、薬草園でデートをしていたとか。お互い愛のこもった目で見つめ合って踊っていた、というのもありました。」
ブリジットの話を聞いたダイアナには、思い当たることがあった。「それって、ジェシカさん?」
「えっ、ダイアナ、知っているの? 名前は知らないけど、小柄で可愛らしい子だって聞いたわ。」ブリジットはダイアナの言葉に目を丸くした。
「私が聞いたのも、同じような話だ。ダイアナの予想通り、ジェシカ嬢のことだろう。」ギルバート王子が頷きながら言う。
ジェシカを知らないブリジットに、ダイアナは、この前の出来事を説明した。ギルバート殿下と歩いているときにジェシカさんに会ったこと、迷っている彼女を薬草園まで殿下が案内したことを。
「ダンスについては、7月のパーティーのことだろう。彼女とも踊ったから。」ギルバート王子が付け加えた。




