夏休み明け
パーティーが終わると2ヶ月の夏休みに入る。
夏休み中、ダイアナとキャサリンは、アスター侯爵領で過ごした。ステファニーとエドワード兄妹が1週間ほど遊びに来たが、特に何かをする事もなく、のんびりとした日々だった。
10月になると後期の授業が始まった。
ダイアナたち3年生の中には、卒業後を見据えて学校に戻ってこない者もいた。ダイアナの友達であるジョセフィン嬢も、婚約者がかなり年上のため卒業後すぐに結婚することになっており、学校には来ず、嫁ぎ先の伯爵家でしきたりを学ぶことになっていた。男子生徒の中には、騎士になるための訓練に励む者もいる。
級友が少し減った教室は、あと半年で卒業だという現実をつきつけられるように、ダイアナには感じられた。
その日は先生の都合で午後の授業が休講になったため、ダイアナは、ギルバート王子からサロンでのお茶に誘われた。
「こんなふうに君とゆっくり過ごすのは、久しぶりだね。夏休みはどうだった?」
「領地ではのんびりと過ごしました。ほとんど邸にいましたが、父と2人で馬で出かけたのがとても楽しかったです。」ダイアナが言うと、ギルバート王子は目を丸くした。
「ダイアナは馬に乗れるの? 知らなかったよ。」
「駈歩は無理ですが、速歩なら乗れます。」
「女性で速歩に乗れたら十分じゃないかな。機会があったら、一緒に馬に乗ってみたいね。」そう言うと、ギルバート王子はダイアナに微笑んだ。
ダイアナが馬に乗れるようになったのは、ステファニーのおかげだ。ステファニーの兄エドワードが7、8歳頃に彼の乗馬練習が始まった。自分も乗りたいと駄々をこねるステファニーに始めは難色を示していたブランドン伯爵だったが、なぜだかダイアナとキャサリンも加わるという条件で、練習の許可を出した。
ダイアナは速歩までだが、キャサリンは駈歩も乗れるし、ステファニーは馬の全速力である襲歩も乗れるらしい。
「そうか、ずいぶんを楽しい休みを過ごせたようで、良かったね。」
ダイアナが話すのを微笑んで聞いていたギルバート王子は、ダイアナが話し終わるとにっこりと笑った。
「殿下はどんなお休みでしたか?」
「私は兄上のそばで、公務についていろいろと教わっていたよ。」ギルバート王子は少し疲れた顔をした。
「それは、お忙しかったですね。」
「書類の山の整理は、かなり辛かったね。私が1つ処理する間に次の案件が加えられる感じで、やってもやっても終わらない。」ギルバート王子は、わざと大きなため息をついた。
ダイアナは約1年後にギルバート王子との結婚する。そのため卒業後は、王妃の補佐をしながら公務のこなし方を少しずつ覚えていく予定だ。ギルバート王子は、夏休み中にしっかりと教わったようだ。
どんな夏休みだったのかをお互いに話していたところ、あっという間に時間が過ぎる。
すると、サロンの周りがガヤガヤとしてきた。授業の終わった生徒たちがお茶をしにきたらしい。
「おや、もう授業が終わったのか。楽しい時間は過ぎるのが早いね。」
「ええ、私も楽しかったです。」ダイアナは同意すると、ギルバート王子に失礼のないように言葉を続ける。「妹が馬車で待っていると思うので、おいとまいたします。」
「馬車溜まりまで送っていくよ。キャサリンを待たせたお詫びをしないとね。」
そう言うと、ギルバート王子はダイアナと一緒に歩き始めた。
明日、11日の投稿はお休みします。




