プロローグ
初めての投稿です。
温かい目で見ていただけると、有り難いです。
よろしくお願いいたします。
「見て!じゃじゃーん! 秘密の地図を見つけたのよ!」
ここはリエヴォード王国王都にあるブランドン伯爵邸。
今年の夏に7歳になった、ブランドン伯爵の長女ステファニーは、自信満々で叫んだ。
遊びに来ていたアスター侯爵家のダイアナとキャサリンの姉妹は、ステファニーが掲げる黄ばんだ紙を見つめた。ステファニーと同い年のキャサリンは「面白そう」と期待を込めた瞳で、2歳年上のダイアナは「またなのね」と呆れを含んだ目で。
「これはね、太古のお宝の場所が書いてある秘密の地図なの。」
ステファニーが声を潜めて2人に説明を始めた。「この線はエナマ川で、この丸印がオグコックの町で、、、」
説明を真剣に聞いていたキャサリンが、ふとつぶやいた。「へえ〜、太古のお宝って、近くにあるのね。」オグコックの町は、王都の隣、歩いて半日ほどの距離だ。
「太古のお宝が王都の近くにあるとは思えないのだけど。」とダイアナが冷めた声で言う。
「ダイアナ、それは素人の考えよ。幸せは近くにある物なの。青い鳥も自分の家にいたじゃないの。」ステファニーは少し怒りながら言った。
そんな3人の様子を、一歩離れたところで見ていたステファニーの1歳上の兄のエドワードが、後ろに控えている従僕のティムに聞いた。
「あのボロ紙は、どこで見つけたんだ?」
「昨日、屋根裏で見つけました。」ティムが丁寧に答えた。
「屋根裏ね。。。おじいさまの荷物か。。。」
「はい。昨日は雨でしたので木登りをやめて、洞窟探検の練習を行いました。」
胸を張って報告するティムに、エドワードがため息混じりに言う。
「父上が君をステフの従僕にしたのは、冒険の練習仲間としてじゃないと思うよ。」
ステファニーのお転婆が激しく、侍女では木登りや藪の中でのかくれんぼには付いて行けないと判断され、12歳のティムがステファニー専属の従僕として3ヶ月前に雇われた。
秘密の地図の説明が終わったステファニーが、部屋を見渡して言った。
「では、これから森の探検に行きます!一緒に行くのは誰?」
「は〜い」
「はい」
キャサリンとティムが手を挙げる。
「私は遠慮させてもらうわ。読みたい本があるの。」ダイアナはにっこり微笑んだ。
「僕も行かないよ。第一、うちのどこに森があるんだい?」
「もう、お兄様は意地悪ね。庭に木があるでしょ。それが森よ! じゃ、行くわよ!」
胸を張り大股で歩くステファニーの後ろを、キャサリンが小走りでついて行く。
ティムは秘密の地図をしまうと、残る2人に礼をしてから部屋を出た。
「さあ、行くわよ! 大冒険が私たちを呼んでいるわ!」
ステファニーが青空を指差す先に、白い鳥が飛んで行く。