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電話

作者: 翡翠


 ・

 風呂にも入り、そろそろベットに入ろうとしていた時、突然携帯の画面が光り、着信があった。

 予想は的中。やっぱりこいつからだった。いつも通り泣いている。

 彼氏と喧嘩した。

 このセリフを聞くのは、もう何回目だろう。

「またすぐ仲直りするんだから元気出せよ。」

 いつもそうだ。こいつは彼氏と喧嘩するとすぐに泣いて俺に電話をかけてくる。

 こいつとは幼馴染で小さい時からよく一緒にいた。

 気が強くていつも喧嘩腰で、わがままで男勝りで、とにかく俺からすれば可愛げのないやつだった。

 そんなこいつが、今は一人の男のためなんかに泣いているんだから、笑い話だよな。

 最初は真剣に話を聞いていたけど、数日経つとインスタにはまた二人が笑って並んでいる。都合のいい男か、俺は。

 そんなことすら考えるのもやめた。

 なんでそんなに辛い思いをするのに別れないんだろう。やっぱり、こいつの考えてることなんて昔からよく分からない。

 こいつは変わったよ。高校入ってからは、なんか可愛くなったし、気が強かったのに今ではそんなことないし、いつも髪の毛は綺麗に巻いてるし、爪にマニキュアなんて塗ってさ。やっぱお前のことなんてよくわからない。

 誰かのために泣いて、誰かのために喜ぶなんて、俺にはとうてい理解なんてできなかった。自分のために時間を使えよ。

 でも、だからといって、電話越しで泣いているこいつにこんなことを言えるはずもない。

 落ち着くまで話聞くからもう泣くなよ。

 こんなセリフしか言えない自分に、なぜかイラつく。

 さっさと別れればいいのに。

 きっとこのセリフを俺が言ったらお前はどれだけ傷つくんだろう。それが分かっていたから、俺は言えないでいるんだろうな。

 昔から一緒にいたのに。昔からお前と遊んでいたのに。彼氏より前からお前のことがすきだったのにな。

 お前は変わっちまったな。

 いや、俺がなにも変われてなかったのかもしれない。ずっとずっとお前に対しての気持ちに気づかないフリをしていたのかもしれない。

 なあ、俺ならお前を泣かすことはしないよ。

 あんな奴のために涙なんて流すなよ。 

 でも気づいてしまったんだ。俺じゃ、お前をこんな風に、泣かすことすらできないんだなって。

 ・

 ああ、また喧嘩した。なんで私のこと分かってくれないんだろう。いつもいつも私は泣いてばっかり。気づけばいつも通りあいつに電話をかけていた。

 またすぐ仲直りするんだから元気出せよ。

 わかってるよ、きっと明日には元に戻ってる。彼のことは大好きだし、別れたくない。でも私のことを一番に理解してほしい。

 こいつと付き合ってたら泣かなくても済むのかな、なんて考えてしまう時がたまにある。

 噂に聞くと一途らしいし、優しいらしいし。

 なんて、噂に聞かなくても知ってるよ、昔から一緒にいるんだからさ、なんで私はこいつと付き合ってないんだろう。

 恋愛って難しいよ、分からないよ、幸せになれる道に進みたいのに進めないんだよ、わからないよ、わからない。

 

 きっと分からないくらいがちょうどいい、恋愛なんてそんなもん。

 どうか、来世では結ばれますように。

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