ブラコン妹は、お兄ちゃんの真似をしてVRMMOを始めてみた
現代にもしフルダイブVRがあったらっていう話。
兄ちゃんは部屋によく籠っている。
お母さん曰く、VRゲームをしているらしい。
私もVRは持っている。先月あった誕生日に買ってもらったものだ。
ゲームも一つだけではあるものの、やっている。
兄ちゃんは一体何のゲームをプレイしているのだろうか。
そんな興味に駆られ、こっそりと兄ちゃんの部屋に忍び込み、ゲームパッケージを漁った。
あった!
いろいろなゲームが仕舞われていたが、私はある一つのゲームに惹き付けられた。
『異世界オンライン』……VRMMORPGだと書かれている。
MMORPG……ってなんだろう。
ネットで調べてみると、このゲームはオンラインでいろんな人と協力しながら、モンスターを倒したり武器を作ったり、いろいろ出来るファンタジーものらしい。
楽しそう。
これはお母さんに頼むしかない……!
お母さんに頼んだら、半年後のクリスマスに買ってあげると言われた。
そして半年後、私は『異世界オンライン』を手に入れた……!
とても長い戦いだった。
まだ来年の誕生日にと言われなかっただけ、マシ。
兄ちゃんと同じゲームが出来るなんて、嬉しすぎて胸のバクバクが止まらないぜ……
止まったら死ぬけど。
いそいそとゲームの準備を整え、起動した。
タイトルがどーんして、キャラクリエイト空間が出来た。
すごい。
今までやってたVRゲームはキャラクリなしのやつだったから、なんだか新鮮だ。
肌・髪・目の色、前横後ろの髪型、顔の輪郭に体の大きさ・つくり……
たくさんの選択項目がある。
多い多い。
あれ、このゲーム性別選べないのかな?
『性別は選択不可能です』
そうなんだ。
『プレイヤーは基本的に無性となっています』
え、あ、そうなんだ!?
あ、でも胸の大きさとか決められるから女の子っぽくは出来るし、体をガッチリさせれば男の子っぽく出来るのか。
うーん、どうしよう。
私ゲームって言ったら、性別男でやること多いからなあ……
よし、ちょっと男の子っぽくしよう。
ワンチャン、兄ちゃんと鉢合わせた時兄弟プレイが出来るかもだし……!
でも、かっこよくとかさせ過ぎるのは、私恥ずかしいし普通の男の子っぽく……
出来ました!
『本当にこれでよろしいですか?』
はい!
容姿選択たちが消えると、今度は使用武器選択というのが出た。
『後から変更することも可能です』
なるほど。
私は、選択できる武器に目を通した。
剣とか弓とか魔法……あ、刀もある。すごいな。
魔法いいな……と思ったけど、なんか難易度が高いって説明に書いてあるなぁ。
だがしかし、私はもう既に使う武器を決めている!
弓くん君に決めたぜ。
昔やったゲームの体験版で、自分には近接は向いてないって分かってしまったからね。遠くから狙うなら出来るはず。
『本当にこれでよろしいですか?』
もちろん。
『ゲーム内におけるプレイヤーネームの設定をしてください』
“ハナ”と入力した。
三度目の最終確認に頷き、そして、世界が開けた。
『これより、チュートリアルを開始します』
『スキップしますか? Yes or No』
Yesです。
* * *
はっはっはー!
チュートリアルを終えた私は最強!
あと、チュートリアルで出た女の子すごい可愛かった。
可愛い女の子と共闘しながらモンスター倒すとか、最高かな?
弓のやり方もだいたい分かった。
よく考えたらゲームのアバターじゃなくて自分が動くんだよね、と気づいたのがチュートリアル戦闘前だったけど、ゲーム補正でなんとかなった。
そして、今立っているのは“始まりの街”らしい。
なんか、メインストーリーって言うのが始まってる。
うんうんなるほど?
よく分からん。
とりあえず、出されたクエスト通りに進めば問題ないかな。
そして、一週間が経った。
……なんというか、MMORPGってさ、ぱーてぃー必須なゲームなんだなって……
ふぅ……
武器を強化するとか、素材でアイテムを作るとかあるみたいだけど、なんかよく分かんないし。
ネットで調べるのもなぁ……って感じだし。
あのクソドラゴン絶許なので、とりあえずレベルくっそ上げてクソドラゴンもどきに目にもの見せてやりたいわ……
洞窟内で黒いドラゴンみたいなのと戦うことになったんだけど、洞窟でお察しだろうけど、戦闘フィールドが狭いわけ。
私、武器が弓じゃない?
安全な遠くから攻撃したいのよ。
でもね、どんなに離れても私より上の速度で迫るドラゴンと壁に為す術もなくやられちゃった。
弓以外の武器挑戦したけど、やり方わからずにただ振り回されただけっていう……
経験値がすごい貰えるクエストあるけど、周回が何よりも嫌いな私に向いているはずもなく……
私、VRMMORPGに向いてないんだわ。
何も考えず脳筋プレイが私のプレイスタイルなのに、私より10も上のレベルモンスターを当てられたら一発でプチッよね。
そして私は40レベルまで行き、ゲームを一度止めた。
そんな一週間後。
「奈緒、『異世界オンライン』やってるってほんと?」
神は私に味方した!
なんと、兄ちゃんが私に話しかけてくれたのだ。
「え、あ、うん。そう……だけど?」
「どこまで進んでる?」
「その、えっと、メインストーリーの二章……くらい」
ドキドキと緊張する心臓がうるさい。
なんて言ったって、兄ちゃんと対面して話すのは四年ぶりくらいだぞ!!
ああ、いつ見ても兄ちゃん顔が受け……
「ねぇ、一緒にやらない?」
マジですかぁ!!!?
神は私に味方しすぎでは……?
心臓働きすぎて死ぬぞ……?
私は、嬉しい感情が出ないように細心の注意を払い、頷いた。
こうして、私はこのゲームを一生することに決めた。
兄ちゃんと兄弟プレイができて最高でした。
妹は心の中でイキってるコミュ障