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村人、頼みを受け選択する

 冒険者になって欲しい理由を述べたリオネスにガロンはと言うと


「いや、近いうちに冒険者登録しようと思ったからいいけど?」

「「・・・マジで!?」」


 またもやナチュラルに冒険者になる予定という衝撃発言をし、リオネスとエミルは揃って驚愕した。

 そんな二人に構わずガロンは続けて


「いやー、しばらく前から母さん達に『冒険者になりたい』って相談しててさ、家業が落ちつた頃合いを見計らって近くの街で冒険者登録しようと思ったんだけどね。」

「税が上がるなら早めに登録しに行ったほうがいいかもしれませんね。通行税が値上がりしたらもったいないですし。」

「確かにもったいないな。よしいい機会だからガロン冒険者登録をしに行きなさい。」

「母さん・・いきなり・・は・・無理・・だと思う・・ガロ兄・・も・・準備ある・・。」

「そうだぞベルスタ姉、何事も早けりゃいいってもんじゃねえんだ。もっと落ち着いていけよ。」

「あら?せっかちなハロンが珍しいわね」


 そう言って不思議なものを見るような顔をするベルスタに対してハロンは一つため息を吐くと。


「俺だって自分の息子じゃないとは言え大事な息子分が『準備不足で怪我した』なんてことになったら嫌なんだよ。」

「ふふ、ハロンも丸くなったわね。」

「うるせえ」


 そう言ってそっぽをむくハロン。その横顔をはどこか赤く、どうやら照れているようだ。


「そういうわけで、ついでだけどその話受けてもいいよ」


 そう言ってガロンは未だ驚いた表情をしているリオネスに向かって手を差し出しそう言った。

 それに対してリオネスはというと座っていた椅子から勢いよく立ち上がりガロンの差し出した手を両手思いっきり掴み感謝の言葉を述べた


「ありがとう。本当にありがとうございますガロンさん!」

 

 そう言って何度も頭を下げるリオネスに対してガロンは


「差し当たって今すぐっ、てわけにはいかないけれどそれでもいい?」

「はい!大体一、二年は何も災害がなければ運営できるほどの資金がありますので!」

「・・・・ちなみにその出所は?」

「ははは・・、恥ずかしながら俺の懐からです。」


 そう言って後頭部をかきながら罰の悪そうに言うリオネス。

 それに対してガロンは取り敢えず釘を刺しておく。


「頼むから破産はしないでくれよ」

「・・・善処します」


 そう言って素直に頷くリオネスにその場にいたガロン一家とエミルは同時に思った


((((((((絶対無理だな))))))))

(今のうちにお金の管理の仕方しとこう)


 こうして領主リオネスとの話し合いは、ガロンが冒険者になるついでにこの村のギルドマスターになってもらう人をさがすということで決まった。


 その後リオネスは一つの不安の種から解放された喜びからか、先ほどのかルアよりわりかし安いがそれでもただのエールよりも高い酒を浴びる様にガブガブと飲んでいき最終的には酔い潰れて帰っていった。

 そんなリオネスを抱えるように連れて帰っていったエミルはガロンに対して小声で「ありがとう」と言いながら小さく頭を下げ、そんなエミルに対してガロンは軽く手を上げる。そしてそのまま背を向けて帰る二人を見てガロンは『領主って大変だなー』と思っていた。





















 その夜


「ギルドマスター、か・・・」


 自室にてガロンはリオネスに頼まれたギルドマスター候補者探しについて、ベットに寝転びながら考えていた。


「まずギルドマスター候補者ってどう探すんだ? 流石にギルドに行けばすぐ見つかるってわけじゃないだろうしな・・・」


 そう言いながら「どうやって探そうか」と、独り言を呟くガロン。そんなガロンの部屋のドアからドアを叩く音が聞こえた。


  コンっ  コンっ


「どうぞ、鍵空いてるから」


 そう言ってガロンはベットから起き上がりベットの端に座り直した。


  ギイーーー・・・


 木製のドア特有の軋み音をさせながらガロンの自室のドアが開くと


「ガー君ちょっといい」


 そう言って黒髪を下ろした母マイルがいつもと同じニコニコ顔をしながらガロンの部屋に入ってきた。


「なに母さん?」


 そう言いなが何事もなくマイルを部屋に入れるガロン。そんなガロンに母マイルは自然な動きでガロンの座っているベットの端にガロンと並ぶように座ると。


「さっきのリオネス君の話。ガー君はどうやってこの村に来てくれるようなギルドマスター候補を探すの?」


 そう言ってマイルは隣に座るガロンの顔を覗き込むようにして聞いてきた。


 それに対してガロンはというと


「そうだね・・・・。取り敢えず冒険者登録をして、ギルドマスター候補がまだいる国から手当たり次第勧誘・・その中で来てくれる人を探す、かな?」


 そう言ってサラッと計画性のない無謀な方針を口に出すガロン。そんなガロンにマイルは「やっぱり・・」とため息を吐きながら項垂れるのであった。

 母親であればこその直感なのか、それを感じ取ったマイルはガロンに今後の計画を聞けば、自身が予想したような答えが帰ってきって内心「聞いといて良かった」と思っていた。


「ガー君、そんな無謀で無計画じゃ何年かかっても無理だと思うよ?お母さん今日初めて息子の将来がちょっとだけ不安になっちゃたよ。」


 そう言って真剣な眼差しでガロンを嗜めるマイル

 そんなマイルにガロンはしばし腕を組み眉間にシワを寄せ「ウーン」と唸ってから


「でも俺、この村以外に伝が無いし、やっぱり地道に一つずつしらみ潰しに探していかないと見つからない気がするんだ。」


 そう言って真っすぐな目をしてマイルの方を見るガロン。そんなガロンにマイルはしばし考えるように目を瞑り、暫くして何か決まったのか小さく「よし!」と呟いたかと思うと勢いよく立ち上がりそのままガロンの目の前に立った。そして


「ガー君、私から一つ挑戦を受けてみない?」


 そう言ってマイルは懐から一通の封筒に入った手紙を取り出すと


「今から一年以内にガー君が冒険者ランク『A』以上になればこの手紙を冒険者ギルドに見せて。そうしたらガー君とリオネス君が今抱えている問題が全部一気に解決します。」


 マイルは手に持った手紙をヒラヒラさせながらそう宣言する。ガロンはマイルの手の中にある手紙を目で追いながら


「その手紙、何が書いてあるんだよ?」


 素直な疑問をマイルにぶつけた。


 そんなガロンにマイルはというと、悪戯をするような笑みを浮かべた後


「ヒ・ミ・ツ・!」


 と言いながらそっと人差し指を鼻の前で立てた



「それじゃあガー君。この挑戦受ける?受けない?」


 そう言いながらマイルはガロンに自身が出した挑戦を受けるか受けないかの選択を迫る。


 そんなマイルにガロンはしばし考え、そしてしばらくして、ガロンは答えを決めた



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