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村人、理由を聞く。

「冒険者になりませんか?」


 突如リオネスにそう提案されたガロンはというと。


「・・・・はい?」


 一瞬何を言われたか分からず少しばかりフリーズし、そして聞き返すように間抜けな声を出していた。


「えっと・・なんでうちのガー君を冒険者に?」


 突然の提案にガロンの母であるマイルがそう言ってリオネスに聞く。

 するとリオネスが少しづつ理由を話した


「この村が、いえ今の状態だともはや街となりつつある規模になっているのは知っていますよね?」

「まあ・・それは・・知っていますが」

「それとウチのガロンを冒険者にするのになんの関係があるんだよ」

「その理由を今から説明します」


 そう言ってリオネスは、座っているバーカウンターに肘を立て目の前で組み静かに語り出した。


「まず、今の状態だとこの村は街と名乗るることができません何故だかわかりますか?」


 リオネスはそう言って周りにいるガロンの家族に質問をする。


「あ?まだ人が足りねえからか?」


 そう答えるハロン、しかしその答えはベルスタが否定した


「違うでしょ。街になるにはまずは一定数の住人、次に住人の住む基盤たる家、そして領主館、教会、最後に各ギルド会館が必要なのよ。」

「「「「「「「おおー、なるほどー。」」」」」」」


 そう言ってかけている眼鏡をクイっと持ち上げるベルスタ。周りのガロン一家がそんなベルスタに感心したような声と拍手を送る。


 そんなマイペースなガロン一家にリオネスはもう一度咳払いをし、話の続きをする


「ゴホン! 話を進めていいですか? 先程ベルスタさんが言われた通りなのですが現在住人、居住地、そして領主館、教会そして各ギルド会館が急ピッチで作られそれに勤める人員も見繕ってもらっているのですがただ・・」

「冒険者ギルドだけがまだなんの音沙汰もないのよ」


 そう言って言い淀むリオネスに替わるようにエミルが言った。


「なんの音沙汰もない?冒険者ギルドがか?」

「はい、どうもギルドマスターに空きがないらしく、そのせいでこちらにギルドを出せないようでして」

「それは変ね?普通ならギルドマスターなんてなりたい人が腐る程いるはずだけど」


 そう言って不思議そうな表情をするハロンとベルスタにリオネスは懐から一枚の新聞を取り出した。


「とりあえずこれを見てください」

「ん?なになに『暴かれた冒険者ギルドの闇‼︎ ドルト王国約半分のギルドマスターが関与‼︎』何これ?」

「どうにも隣のドルト王国で不正なランクアップや各ギルドによる賄賂が横行しているという密告が有り、それについて現在全ギルド支部に監査が入ったそうです」

「ドルト王国って確か上位ランク者に貴族が多かったわよね。全然ランクとあっていない強さだったと記憶しているけど。」

「だな、ムカつく奴らが多かった覚えがあるな。思えばやたら上位ランクに貴族の冒険者が多かったのはそのせいか。で?それとここに冒険者ギルドが来れない理由になんの関係があるんだ?」


 そう質問をするハロン。それにリオネスは躊躇うように答える。


「この密告の後、ドルト王国の冒険者ギルドは総入れ替え。しかし替えのギルドマスター候補達もランク詐称の嫌疑が掛かり調べてみたら半数以上が不相応なランクという体たらく。よって現在ドルト王国のギルドマスターは他国のギルドマスター候補者達が代行として運営しているのですが・・・・・・なにせドルト王国は腐っても大国、その半数以上のギルドのギルドマスターが入れ替えとなると、かなりの数となると言いますか・・・・その候補者達のほとんどがこの国から出されたと言いますか。」


 そう言って言い淀むリオネス。そんなリオネスの言いたいことはなんとなくわかる。


 つまり


「なるほど、この国にはギルドマスター候補者が現在いないということね。」

「はい、それに他国から呼び寄せたとしてもどんな人が来るのか分からず、それに呼び寄せるにも負担はこっちに来るので現在俺は余計な出費が出せれないため呼ぶに呼べない状態なのですよ。」

「なるほど・・・・で?それとガロンを冒険者にさせるのとなんの関係があるんだ?」


 大体の事情を聞いたガロン一家、それを踏まえて代表でハロンが最初の質問をする。

 それに対してリオネスはというと。


「はい、それで思ったのですこうなったらガロンさんに冒険者になってもらってどこかでギルドマスターを勧誘してきてもらおうと!!」

「「何がどうしてそういう考えに至った!!」」

「・・・・」


 ベルスタとハロンがリオネスの考えにタイムラグなく突っ込む。しかしマイルだけは無言となり何か考えるように口元に手を当てていた。


 そんな中急にリオネスは笑い出し


「ハハハハ!最初は知り合いの冒険者にギルドマスターになってくれないかと頼んだんですけどね!その知り合いもドルト王国に行っちゃったらしいですし!かと言って代わりの目星いギルドマスター候補の上位ランク冒険者を全部ギルドマスターにしてしまったらこの国の冒険者事業も悪くなるし!現在バランスを取るためにあっちこっちの冒険者ギルドは忙しいし!そのせいで新たな冒険者ギルドを作ることもできないし!そのせいで俺の胃もボロボロなんですよ!俺も初めての領地経営に悪戦苦闘しているのなんでこんな時に余計なことするかな‼︎ドルト王国冒険者ギルド‼︎」

「リオネス落ち着いて。はいこれ胃薬」

「ああ・・すまないエミル」


 笑ったり怒ったりと忙しいリオネスに懐からビンに入った薬を渡すエミル。慣れたような一連の動作に日々の苦労が見えるようであった。

 

「うぐ・・ん。はーー・・・それで俺は思ったんですよ。こうなったら誰か一人でも冒険者をしてもらい別の国からギルドマスター候補を勧誘してもらってその人にギルドマスターになってもらおうと。」

「あ?でも現在どこもギルドマスター不足なだろ?見つかんのか?」


 リオネスは自分の案を言うがそれに対してハロンが反論する。しかしリオネスはそれにこう答えた。


「ギルドマスター不足なのはこの国とその周辺だけで二つ跨いだ向こうでは、まだギルドマスター候補者はいるようなので。」

「それって、大丈夫なの?」

「本人の了承があれば大丈夫です」


 そういってリオネスは手元にあるコップ入った酒を一息に煽る


「それに、俺としては早めに国からここを街として認めてもらわないと困るんですよ」

「どうして?」


 リオネスの呟きに疑問を浮かべそう言うガロン。

 

「内密にですが村と街じゃ税の多さが違うんですよ。もちろん一人一人の税の負担は変わらないんですけど国から出る補助金に差が出るんですよ。今の現状で村ほどの補助金だと税が増える可能性が・・・・」

「マジか!!」

「なので俺としては早く街として認めてもらいたいのです。」


 そう申し訳なさそうに言うリオネス。



 そして


「だからガロンさん冒険者になりませんか?」


 そう言って再度質問をした。


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