村人、ゴブリンと人間の冒険者を相手取る
「痛え・・痛えよ・・」
「ちくしょう・・ちくしょう・・」
呻き声を上げ、今はない腕の痛みを抑えるようにその根本、断面部分手前をもう片方の手でそれぞれ抑える双子。
傷口部分を圧迫し抑えているためその断面から先程までの夥しい量の出血は減っていき、潰し切られた腕の様子がよく見て取れた。
潰し切られた双子の腕は血が出続けているとはいえよくよく見れば腕が切られたと言うのに血は勢い良く出ると言うことはなく、あくまでチョロチョロと溢れるように出ているだけであった。
その断面を見れば潰し切られたと言うだけあって傷口は潰され、半ば圧迫止血の要領で傷口が潰されている状態であるため、双子は失血死すると言うことはないだろうが血を流しすぎたため、もう今は立つことすら難しいだろう。
そんな重症の双子、ゴーブとリンゲをガロンは目の前でただ見下ろしていた。
追撃するわけでもなく、ましてや助けるわけでもない。
ただ目の目でもはや立つことはできず地面に這いつくばる双子を表情は仮面に隠れ分からないが、ただジッと見下ろしていた。
そしてそんなガロンに見下ろされていた先では双子がその体を這いつくばり痛みに顔を歪めながらも血が薄らと止まった片腕から手を離し、もう一つの手をガロンの足元に転がるちぎれた腕に向かって両方が手を伸ばしていた。
「俺の・・・俺の腕・・・」
「早く・・・早くくっつけないと・・」
呻くような声を出しながら必死に手を伸ばしてそれぞれのちぎれた腕に手を伸ばすゴーブとリンゲ。
後少し、後ちょっとで千切れた腕に手が届くと思われたその瞬間
“ダンダン!! メキ メキ!!”
「「グギャああああああああああ?!!!」」
突如としてガロンの足がブレたかと思うと何かを踏みつぶした音とともにゴーブととリンゲの双子の絶叫が闘技場に響いた。
見れば双子の手、千切れた方じゃない、先程まで千切れたそれぞれの片腕に向かって手を伸ばしていた手がまるで何かハンマーのようなもので叩かれたかのようにひしゃげ、五本の指の数本が別の方向に曲がっていたり、肉が裂けてまた新しく血を流していた。
無論、ゴーブとリンゲの手を潰したのはガロンである。先ほどの一瞬でゴーブとリンゲの伸ばした手を足で踏み砕いたガロン。
ただでさえ血が少なくなり貧血気味のゴーブとリンゲは、もはやその場で痛みに転げ回ることはできないのだが、唯一まともに動く口で絶叫を上げ顔を歪め目に涙を溜め痛みによって流し始めた。
「ううううう・・痛え・・痛えよ!!」
「両腕が・・・これじゃもう使えねえ・・くそおおおおおお!!!」
ただ痛みに涙を流し泣き始めるゴーブと、両腕が使えなくなったことにより怒り叫ぶリンゲ。
そんな全然反応が違う二人を直ぐ近くで見下ろすガロンは、仮面の下の表情がどうなっているのか分からないが、ただジッとのたうち回る二人を見下ろしていたガロンは
「・・・うるさい」
“バキッ!!!”
特に起伏を作ることもなく、あくまで平坦な口調で泣き、叫び続けていたゴーブとリンゲの顔を蹴り飛ばした。
「グフ?!!」
「ガハ?!!」
口から血と蹴られて折れた歯を吹き出しながら嫌な音を顔から鳴らし静かになる双子。
どうやら気絶したようで二人とも未だ血を薄らと口や潰れた手から滲ませながらもピクリとも動かなくなった。
“バシュ・・・”
つい先程沈めた双子をガロンは直ぐそばで見下ろしていると、その背後から気のせいかと聞き間違うほどの小さな音が聞こえた。
その音にガロンは条件反射の如く振り向き様に鎌を一閃。すると
“カラン カラン”
一閃された鎌に斬られ音を立てて地面に落ちるそれ、地面に落ちた瞬間に見えるようになったかのように見えたそれは先端に明らかに「何か塗られていますよ」と言わんばかりに毒々しい液体がついた矢が真っ二つになって地面に落ちた。
ガロンはそんな毒矢を見ると顔を上げその毒矢が来た方向に視線を向ける。
そこには次の矢を構え今にも放とうとしているゴークズが見えた。
“バシュ・・・”
またもや矢が放たれた音がするが、肝心の矢が見えない。
ただ飛んでくる音だけが聞こえる毒矢、それをガロンは片足を半歩後ろに下げて避ける。
“タン!!”
「?!」
小気味良い音を響かせガロンの背後地面に突き刺さった瞬間その姿を表す毒矢。
ゴークズは自身の毒矢が交わされたことに一瞬驚くが、次には顔を憎々しげに歪ませ乱暴に腰の矢筒から新たな矢を取り出し弓に構え再度打つ。
だが
“ヒョイ ヒョイ”
そんな毒矢をガロンは次々と避けていき、それに驚き一瞬手が止まったゴークズに向けてガロンは睨みつけると直ぐに駆け出し始めた。
「つっ?!くそ!!」
ゴークズは駆け寄ってくるガロンに額に汗を一筋垂らしながらも次々と毒矢を放っていく・・・・・が。
そんな毒矢はガロンに次々と軽々と避けられゴークズは自然と焦り始めていき、そして
「これで・・・どうだ!!」
そう言いながらゴークズは、片手の指の間にありったけ持てる毒矢を挟んで弓につがえると
「‘散弾毒矢’!!」
“バシュシュシュシュシュシュ!!!!”
そう叫びながら一瞬で毒矢の弾幕を作りガロンの逃げ場を消した・・・・だが
「すげえ技だが・・突破させてもらう。‘群生する鎖群’」
ゴークズの技の凄さを純粋に褒め称えたガロンは、気を引き締め片手を毒矢の弾幕の方へ向けるとその魔法を起動させる。
そして次の瞬間、弾幕の方に向けたガロンの手から夥しい程の鎖がジャラジャラと音を立てながら召喚されていった。
そして召喚されたその鎖はまるで意思を持っているかの如く各々不規則な動きをしだしたかと思うと、向かってきている毒矢を金属音をさせながら次々と撃ち落としていった。
“キンキンキンキンキンキン!!”
「な?!くそ!まだだ!!」
毒矢が次々と打ち落とされるその光景にゴークズは驚くが、直ぐに頭を左右に振ったかと思うと更に矢をつがえて毒矢の弾幕を追加していった
“バシュシュシュシュシュシュ!!!!”
“キンキンキンキンキンキンキン!!!”
毒矢が放たれる音が断続的に鳴り響いたかと思うと、次にはその矢が打ち落とされる音が断続的に鳴り響く。
そしてしばらく毒矢と鎖の攻防が続いたが、放つ毒矢が尽きたことによってその攻防は終わりを迎えた。
「しまった!」
ゴークズが矢筒に手を伸ばすが、矢筒にもう毒矢がないことに気づいたゴークズは焦りそう叫ぶ。
そしてその隙を見逃さずガロンは鎖を操り、ゴークズの体に鎖を巻きつけていった。
「?!! くそ!!離せ!!」
体に巻きつき手足を封じられたゴークズが憎々しげにそう叫ぶが、ガロンはそんなゴークズの言葉を無視しゴークズに巻きついた鎖の束を掴むと
「落ちろ」
そのまま鎖を振りかぶりゴークズを宙に浮かせると、勢いをつけてゴークズを頭から地面に向かって勢いをつけて落としていった。
“ドズーーーーーン!!! パラ パラ ”
砂煙が巻き上がり舞い上がった小石が落ちる音を聞きながらガロンはゴークズに巻きつけていた鎖を外しガロンの手の中に戻るようにして消した。
砂煙が晴れればそこにあるのはクレーターとその中心に手足が衝撃と鎖の締め付けで念入りに折られているゴークズだったものがピクピクと痙攣しながら突き立てられていた。
申し訳ありません。
私用が入り、更新の方が難しい状態となりました。
次回の更新は間が空き、土曜日とさせてもらいます。
更新を楽しみに待ってもらった方々、大変申し訳ありません。




