村人、数日後
数日後
あれからリオネスとエミルはこの国の王様に結婚の報告をするため一度王都に戻ることになった。
流石にあの未曾有危機からこの国を救った英勇二人の結婚を国王に、しかもいきなりかつ事後報告にしてしまうのは流石にやばいと感じたのかリオネスはまだ村の人たちと談笑していたエミルの腕を引っ張り急いで王都に向かって馬を走らせていった。
その際リオネスが必死の形相をしていたように見えたが恐らく気のせいだろう。
たとえそれがガロンが「王様に早く報告しないと勝手に婚約されるんじゃないのか?」という独り言を呟いたのがきっかけなのか、それは急いで王都に戻ったリオネスしか分からない。
そして更に数日後
「エミルちゃんおめでとう!」
「リオネス様いらっしゃい‼︎」
「これでこの村は安泰だ‼︎」
「あの二人は伝説の夫婦になるぞ‼︎」
「バンザーイ! バンザーイ!」
「「「エ ミル!・エ ミル!・エ ミル!・エ ミル!」」」
「「「リ オネス!・リ オネス!・リ オネス!・リ オネス!」」」
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etc
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村の人達による祝いの言葉の雨と『エミル』、『リオネス』コールと共にちょっと豪華な馬車に乗ったエミルとリオネスがこの村へもう一度帰ってきた。
二人は王都で正式な夫婦となり、ついでにこの村を含める数個の村を領地とした領主としてこの土地にやってきた。
ちなみに領主として住む館を建てる場所としてはエミルの強い希望で、彼女の生まれ故郷であるこの村に立てることに決まった。
そのおかげかこの村には連日多くの移民希望者がやってきては村はお祭り騒ぎ状態であり、リオネスと一緒にやってきた騎士達(前回来たもの達も含め)は連日大忙しで、増えた住民の居住地の予算作成や犯罪者への予防、巡回と走り回っていた。
エミルもそんなリオネスを支えるべく仕事を手伝っているようでよく村・・というよりは最早『街』という規模になりつつある村を中心によく走り回っているのを見かけていた。
そしてそんな大忙しの中ガロンはというと。
「あらよっと!」
スパンっ!!!
ズウウウウーーーーン!!!!
「ふー・・・大量大量‼︎ 良い猪肉が手に入ったなー」
村近くの山で狩り・・・・という名の害獣駆除を行なっていた。
「しっかし、リオネス君も隙がありすぎるよねーー、領主の仕事で忙しいのは分かるけどこんな害獣を放っておいたらダメだろうよ。」
そう言いながらガロンは先程仕留めた獲物を見下ろす。そこには周りの巨大な木々にギリギリ隠れるほどの巨体をもった大猪が横たわっており、ガロンはその多猪の背中に腰掛け乗っている大猪のふかふかの毛皮を軽く叩いていた。
本来ならこのような大猪がこの山で現われることはないのだが、恐らく最近何処かから流れてきた大猪だったのだろう。
「まっ、仕方ないかあっちあっちでは初めて尽くしのてんやわんやなんだからこれくらいはしてあげないとね。それにあのエミルが見つけてきた大事な旦那さんが過労で倒れられたら俺も目覚めが悪いからな。」
そう独り言を呟きながらガロンは多猪の上から降り、大猪の体に手をかざすと一瞬で大猪の体が消えた。秘密はガロンの腰のベルトに取り付けられたポーチにある。このポーチは魔法袋であり大猪はガロンの腰のベルトに取り付けられた魔法袋の中に収納されたのであった。
「さてと、それじゃあ帰りますか。」
そう言ってガロンはその場を離れ帰路について行った。
ガロンの家は村から少し離れた小高い丘の上にあった。
その家ではガロンの母とその母の妹二人そしてそに妹二人の子供三人、計七人で暮らしていた。
ガロンの家族は村で唯一の食堂兼酒場をしており、昼や夜には村人たちが集まりよく宴会をしていた。そんなガロンの家の前では現在小さな二つの人影が動いていた。
「あっガロンにいちゃんが帰ってきたぞ、ミリー!」
「見えてるよリットル、お土産なんだろう?」
山から降りてきたガロンを見つけた二つの人影、ガロンの妹弟であるミリーとリットルはガロンに向かって手を振る。
二人に気づいたガロンも同じように手を振りながら家の前まで来ると、すかさずミリーとリットルはガロン抱きつき。
「にいちゃん! にいちゃん! おかえり!お土産何⁉︎」
「食べれるものだったら良し。更にお肉だったら尚のことよし!さあ早く見せろー」
「お前らいきなりそれかよ・・・・」
労いよりもまず成果を聞いて強請る二人に苦笑しながらガロンは腰のベルトに取り付けた魔法袋を外し二人の前に差し出す。
「今日は大猪がいたからそいつを狩ってきた。だけど本当にでかいから裏庭でハロン母さんと一緒に解体しろよ。」
「うん分かった‼︎ いくよミリー‼︎ ハロンママー‼︎お兄ちゃんが大物取ってきたーー!!」
「大猪かどう料理しよう・・って、ちょっとリットル!私を置いて行かないでよ!」
魔法袋を受け取ったリットルはすごい速さで店舗兼家のドアを開けの中に走って行った。ミリーはそんなリットルに置いて行かれるようになり慌ててリットルの跡を追いかけるように家の中に入って行った。
そしてミリーと入れ違うように新しい人影が家の中から出てきた。
「全く相変わらず騒がしいですね、あの二人は」
「はは、そう言うなよキュウ、あの二人は元気なあれが良いんだから。」
「まあ、それはそうですけど・・・けど家の中ではあまり走らないで欲しいんですけどね、・・・埃が舞うから。」
「ハハハ、それもそうだな。」
綺麗な銀髪をポニーテールにした少女、キュウがそう悪態をつくとガロンは苦笑を浮かべながら同意した。
「それよりも兄さん、早く手伝ってください。夕方の開店に合わなくなります。」
「はいはい、分かりました」
そう言いながらガロンも家の中に入って行った。




