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村人、取引する

 リリスアーナとリリスティア、両者は目を合わせたまま一向に動かないでいた。


 そして未だリリスティアに抱きつかれたままのガロンはというと


「えーっと、どこしまったけ・・・ルーさんちょっとごめんね」

「むにゃむにゃ・・んっ」


 動ける範囲で動く手を使って、腰に付けられた複数の魔法袋の中を漁りながら何かを探していた。

 途中ルールリアと自身の間かに潰されるようにあった魔法袋の中を探すため、未だ眠っているルールリアに小さく謝り、その手をその間かに入れた。

 その時ルールリアが小さな声をこぼしたがガロンはとにかく無心になりお目当てのものを探す。すると


「・・・・あった。」


 そう言ってガロンはその魔法袋から瓶に入った何かを引き抜き、取り出した。


 引き抜く際、その瓶がルールリアの体をかすめルールリアが一瞬身動ぎしたかと思うと次には抱きついているガロンの腕に更に力強く抱きついてきた。

 その際、これまた存在感を際立たせる二つの果実が思いっきりガロンの腕に当たっているが、ガロンはとにかく無心で、何も考えずにその瓶に入っていた液体を三つの小さな飲み入れに入れていた。

 その間、ガロンは鼻から赤い滴が垂れ落ちそうになったり、手に持ったその瓶を自分の頭に振り下ろそうかという考えが何度か過ぎったが、それを何とか踏み止まり注ぎきった。


 そしてガロンは注ぎ切ったその液体を


「はい、どうぞお二人共。せっかくの宴会なんですから、そんなしかめっ面はよしましょうよ。」


 そう言ってなみなみと注ぎ切きったそれを二つ、リリスティアとリリスアーナに渡した。


「え?いいの!ありがとうガロンくん」

「あら?ありがとう。これは・・・ライス酒かしら?」


 リリスティアは素直に喜びすぐに口をつけると美味しかったのかすぐに飲み干し、リリスアーナはしげしげとその液体、ライスを使ったの当方の国の透明な酒、ライス酒を観察する。リリスアーナはいろんな角度からそのライス酒を見ると静かに口をつけ呑んでいく。

 すると美味しかったのかリリスアーナまでもが目を見開きすぐに一杯を飲み干してしまった。


「うーん!美味しいわねリスティア!・・リリスティア?」


 返事がないリリスティアにリリスアーナは彼女の方を見ると。


「ふ〜〜〜〜〜え・・・・・・そー〜だね、おね〜ちゃ〜ん」


 顔を真っ赤にして呂律の回っていないリリスティアが足元をフラフラさせながら立っていた。


「リ、リリスティア?大丈夫なの?」


 妹のあまりのフラフラさに、流石のリリスアーナも心配そうにリリスティアに声をかけるが、当のリリスティアは真っ赤な顔をさせながらリリスアーナの方に顔を向けると


「大じょ〜〜う、グ〜ーー・・・」


 大丈夫と言いたかったのだろが途中で力つき、リリスティアは後ろに倒れながら眠った。

 リリスアーナは倒れるリリスティアの手を慌てて取ろうとするが間に合わず、そのまま彼女の手をすり抜け

落ちていくが


「ほい、っと。危ない危ない。」


 地面に落ちる前にリリスティアは片手に「何で起きないの!」と言わんばかりに未だ眠っているリリスアーナを片手抱っこさせ、もう片方の手で倒れたリリスティアを上手にキャッチした。


「やっぱ『鬼神殺し』はきつかったか。やはりここは『鬼倒し』くらいが」


 ガロンはリリスティアを抱えながらぶつぶつとそう呟いていると急に目の前に影がさした。

 その影に気づきガロンは顔を上げると


「ん?・・・・あ」


 一瞬で顔を青くさせた。

 その影はというと


「・・・・・・・・・・(にこっ)」


 笑顔なのだが、後ろに得体のしれない魔神を召喚したかのように錯覚させるオーラを放つ誰が見ても『怒っている』と答えるであろうリリスアーナが髪を逆立てながら仁王立ちで立っていた。


 冷や汗をダラダラとかきながらリリスアーナを見上げ弁解のしようと色々と考えるガロンであったが、その前にリリスアーナが口を開き。


有罪(ギルティ)♪」


 可愛らしい声とは裏腹に、えげつないほどの『黒』の魔法が瞬時にガロンだけを覆った。


「ギ、ギルドマスター?!!せめて弁解を?!!わざとですけど理由があるんですからーーー?!!」


 そんなガロンの叫びを無視して、ほんのり顔が赤くなっているリリスアーナはそのままガロンに魔法をかけると、ガロンはその場に倒れ伏し苦しそうな表情をしながら眠っていた。

 しかし何の意地なのか、その場で倒れ伏すと感じたガロンは両腕に抱きかかえていたルールリアとリリスティアを倒れながらも自身がクッションなるように抱き直してそのまま倒れたのであった。


「・・・・ヒック!」


 リリスアーナはそんな庇うようなガロンの行動に満足したのか、それとも酒が入り少し思考がまとまらないのか一つしゃっくりをした後、ガロンに『悪夢の魔法』をかけただけにしてそのまま踵を返しギルドの中に帰って行った。

 その際、最低限の慈悲なのか、リリスアーナは周りに見えないように不可視の結界をガロン達の周りに張ったままにしたのだった。


 そして翌朝、朝日と共に悪魔夢から解放され目覚めたガロンが最初に見たのは、道の真ん中で何故か自身を抱き枕にして眠るルールリアとリリスティアの姿であり、ガロンは一瞬目を疑ったという。













 そして場所は変わってギルドマスター執務室。

 現在そこでは


「さて、ガロンくん。言い訳(時世の句)の準備はできてるかしら?」


 そう見ても言ってることと意味することが違う言葉をいうギルドマスター(魔神)が降臨していた。

 そんなギルドマスターにガロンはというと


「大変、申し訳ありませんでした。」


 綺麗な土下座を披露していた。そんな土下座をするガロンの後ろ、来客用のソファーにもたれているルールリアとリリスティアはルールリアは顔を赤くし恥ずかしそうに頭を抱えながら俯き、リリスティアはソファーの肘掛けにもたれかかりながらグロッキーであった。

 そんなカオスな空間の中ティロスだけは平然としており、今もリリスティアに二日酔い用の薬茶を煎れて差し出していた。


「はー。まあいいわ、冗談はさて置き頭を上げなさいガロンくん。」


 絶対冗談じゃないでしょ!本気だったでしょ?!という言葉を飲み込み、ガロンは頭を上げるが、反省を態度で示すため未だ正座を続ける。

 そんなガロンにリリスアーナは再びため息を吐きたくなるがそれを飲み込み


「昨日のことは不問にしてあげる」


 そう言うとガロンは驚きの表情をして口を開こうとするがリリスアーナの「ただし・・」の一言に再び口を閉じた。そしてリリスアーナは口を開き


「ただし、引き換えに昨日言った依頼。そこにいるリリスティアも連れて行きなさい」


 そう言って交換条件に依頼にリリスティアも連れて行けと言った。

 思いもしなかったその言葉を聞いたその場にいた三人は


「「「え?何で?!!」」」


 純粋に疑問符を浮かべながら同時にそう言った。

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