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村人、今後を語る

「エミルと結婚してくれてありがとう」


 ガロンからの渾身の祝福の言葉に、リオネスは内心目の前のガロンにこの世で思いつく限りの罵詈雑言を吐いていた。


『ふざけんじゃねえぞこのやろう‼︎ さっきの話を聞いてこの女と結婚したいと思う奴がどこにいいんだよ⁈  ああん‼︎? 脳味噌腐ってんじゃねえのか‼︎ 今すぐそのニヤケヅラ叩き割って砕いて砂にして火山の火口に放り込んでやろうかこのクソ野郎‼︎ てめえ絶対『いい生贄が来てくれたラッキー♪』って思ってるだろ クソが‼︎ おれはぜってー、おれはぜってーこんな女と結婚しねーぞ‼︎ そもそも・・・・・・・・・・・・・・』


 とりあえずリオネスは心の中で思いつく限りの罵詈雑言をガロンに向かって放ち続けるが、勇者と呼ばれるが故のプライドか、決してそれを悟られぬよう笑顔でガロンに形ばかりの礼を述べた。

 

「ありがとうございます。えっと確か・・・」

「ガロンだ」

「はいガロンさん、俺の全身全霊を持って応えます(せいぜい夜道に気をつけなこの〇〇〇〇(ピーーー)野郎、)」


 外面と中身が全然合っていないが未だに器用に笑顔を顔に貼り続けるリオネス。そんなリオネスにガロンは不意にリオネスの肩に置いていた片手をそのままリオネスの首に廻す所謂肩ぐるみをし始めた。


「? どうしましたガロンさん?」


 一瞬ガロンの行動に警戒をしたが、すぐに嫌悪感を出したリオネスだが、これまた器用にまた笑顔を貼り付けリオネスはガロンにそう尋ねる。

 当のガロンはそっとリオネスに耳打ちをする。


「(不満なのは分かるがここは素直にエミルと結婚した方がいいぞ、その方がまだお前の幸せのためだ。)」


 ガロンのその言葉にリオネスは先程まで貼り付けていた笑顔を崩し目を見開きガロンを見るが


「エミル、ちょっと俺勇者くんと話があるからちょっとだけこの場を離れるわ。だからその間お前んとこの親にも知り合いにもちゃんと報告してこいよ。」

「わかった! ガロン!リオネスに変なことしないでよ?」

「するかよ、俺は男に興味ねえっつうの」


 そう言ってガロンはリオネスの首に腕を廻したまま半ば引き摺るように先程までいた村の中央から人気のない方へと歩いていった。

 途中エミルとリオネスの護衛としてここまでついてきていた護衛の騎士達(半ば空気だったためリオネスにも存在を忘れられていた)が、ガロンに小さく止まるよう指示したがガロンはそんな騎士達を無視して・・・・・・というか一緒についてこいといわんばかりに顎を振る。

 騎士達はそんなガロンに不快感を示しながら警戒するが、未だリオネスの首に廻された腕と村人達と笑顔で話しているエミルが近くにいる為動けないでいた。しかしこのままではらちが開かないと悟ったのか、ガロンの後ろをついて行った。そのまま騎士達を伴って村から離れたまだ何も植えてない畑の真ん中に立ちそこでガロンはリオネスの首から腕を外した。

 リオネスはガロンの腕が離れた瞬間瞬時に騎士達の近くまで移動しガロンに対して直ぐに警戒態勢を取るが。


「おいおい、俺は別にお前とやり合うつもりはねえぞ。だからその拳を収めろよ な?」


 当のガロンはそう言いながら両手を上げ降参の姿勢を取る。

 しかしリオネスと騎士達はそんなガロンに対して一切警戒を解かず、ガロンは肩を竦めながら両手を下ろし「やれやれ」と言った表情で首を振る。


「『エミルと結婚した方がお前のため』とはどういうことだ?」


 リオネスが先程までの張り付けたような笑顔から一転、国内最強騎士『勇者』としての顔となりその身から殺気にも似た覇気を醸し出しながらガロンを問い詰める。


「どうも何もそのままの意味だけど。もしもお前がエミルと結婚しなかったらお前に待っているのは俗に言う『地獄の毎日』ってやつだろうな。・・・・・あっ、ついでに後ろの騎士の皆さんも多分巻き込まれると思うんで」

「だからどういうことだって言ってんだよ!! さっさと言えこの野郎が!!」


 ガロンのはぐらかすような言い方に苛ついたリオネスは『勇者』にあるまじく大きな怒声をあげて再度ガロンを睨みながら問い詰める。

 そんなリオネスの態度にリオネスの後ろにいた騎士達が「ギョッ!」としながらリオネスを見るが流石そこは国の騎士、すぐに気を取り直してリオネスと同じようにガロンを睨みつけるが、当のガロンはそんな視線を受け流すような態度をしながら一言。


「だってエミルと結婚しなかったら多分君の結婚相手、第一王女のヤリージョもしくは王妹のショタスキーだと思うから。」

「「「「「・・・・・・え?」」」」」


 その瞬間リオネスと騎士達から一瞬にして血の気が引きだんだんと顔が青白くなっていく。

 

「は・・はは・・・、ガガガガ ガロン さん、 そ、そそそそ それは、じょじょ冗談ですよね?ねえ!?」


 リオネスは先程までガロンを殺さんばかりの覇気がすっかりと抜けたかと思うと何かに怯えるようにガロンにそう尋ねる。ついでに後ろにいた騎士達もガロンに縋るような目になっていた・・・・


 






















 ・・・・・が、ガロンはというと


「いや冗談じゃねえぞ。つーかよく考えてみろよ、悪竜をたった数名で倒すような超精鋭を国が放っておくと思うか? 俺が王様だったら身内を差し出してでも無理矢理にでも縁を作ろうとするぞ。

 しかもその相手が地位の高くない平民や貴族だったら手に余る身内無理やり差し出して娶らせて使い道が無くなれば何かと罪や理由を擦りつけてまとめて消して廃棄。王家は不安材料を一気に消せて万々歳の一石二鳥ってね、 ハハハハハ!」

『『『『『ハハハハハ! じゃねえよ!! 十分はっきりと想像できるわ!!』』』』』


 笑いながら明るくそう考察するガロン。しかしそれを聞いたリオネスと騎士達はそんな未来を想像してしまったのか青くなっていた顔を更に青くさせていた。


 しかしそこでガロンがボソリと


「まあでもこれはリオネスくんがエミルと結婚しなかった場合の話だし。ちなみにもしも二人が結婚したなら所謂国内最強の精鋭の夫婦だから多分国もそこまで干渉できないと思うし。ついでにここら辺を領地としてもらって領主として引っ込んで暮らしたら、リオネスくんも、後ろにいる騎士さん達も下手な暗殺や下心満載のハニートラップの雨霰から逃げられるとおもうから『お前の幸せのため』って言ったんだけどどうする?」

「今後ともよろしくガロン君」


 そう言いながらリオネスは光に速さと見間違うくらいのスピードでガロンの手を握り心からの笑顔で握手をしていた。そしてその後ろでは騎士達が笑顔を浮かべ心からの拍手をしながら見ていた。

 そして当の握手をされたガロンはというと


『いやどんだけ王妹か第一王女との結婚が嫌なんだよ・・・・・』


 笑顔の目の端でうっすらと光るものが見えるリオネス、そして騎士達をを見ながらこの国の闇を感じていた。

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