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村人、ギルドマスターと会う

「は?『無色魔法』?『瞳属性』?‘千里眼‘?・・・どゆこと?」

 

 混乱しているのかあ頭にハテナをたくさん浮かべ始めるルールリア。


 そんなルールリアにガロンは眼を逸らし困ったかのようにほおを描くと


「あー・・簡単に言えば視力を身体強化したってことですよ。」


 そう言って本当に簡単に説明をした。

 普通ならそれだけの説明では納得すろことは容易ではないのだが、ルールリアは


「へー、そうなんだー」


 と、言いながらすんなりと理解していた。いやもしかした今日色々とあったせいで脳の処理のキャパを超えてしまってまともな判断ができなくなってしまっているだけかもしれないが、取り敢えずガロンは深くは考えないようにした。


「(まあ、簡単に納得してくれたらそれに越したことはありませんからね。)」


 そう思いながらガロンは、一回手を叩くと


「それじゃあ、帰りましょうか。ついでに寄り道もして」


 そう言って歩き始めた。

 しばらくするとルールリアはハッ!となって我に帰り少し先を歩くガロン背中を走って追いかけそのまましばらく樹海の中を歩いていった。









 そしてしばらくすると


「あー、いたいた。ルーさん確かあれって依頼書にありましたよね?」


 そう言って後ろにいるルールリアにガロンは指差しながら尋ねるようにそう聞く。

 ルールリアはガロンの前に出てガロンの指差す方向を見る。するとそこには


「フゴフゴ!!」


 地面の匂いを嗅ぎながら歩く大きく立派な牙を生やした巨大な猪がいた。


「『ワイルドボア』、確かに依頼書にあったわね・・・」

「やっぱり?じゃあ狩っていきましょう。臨時収入ですね!」


 そう言いながらガロンは背中から鎌を取り出し目の前の『ワイルドボア』に向かって襲い掛かろうと構えるが、それをルールリアが手で制す。


「待って」

「ん?なんですかルーさん?早くしないと気づかれますよ?先手必勝で行かないと」

「違う違う。ここは私に任して」

「え?」


 そう言うや否やルールリアは腰の鞘から二本の短剣を引き抜くとジャンプをし、近くの木の枝に飛び乗ると。


「それ!」


 勢い良く『ワイルドボア』に向かって飛びかかった。『ワイルドボア』は飛んでくるルールリアに気づき体の向きを変えようとするが時既に遅し、『ワイルドボア』のすぐ側まで迫ったルールリアは短剣を逆さに持ち『ワイルドボア』の首に向かって振り下ろした


「プギャあ?!!」


 短い悲鳴を上げたのち、ルールリアの斬り裂いた傷口から真っ赤な血を、まるでシャワーのように吹き出しながら倒れ伏す『ワイルドボア』。そんな『ワイルドボア』の血を被らないようにすぐに避け、絶命するのを短剣を持ったまま立って待つルールリアにガロンは素直に


「すご!」


 語彙力が足らないが、すぐに出た純粋な賛辞の言葉を口に出す。

 するとガロンの賛辞が聞こえたのかルールリアは耳をピクピクさせながら後ろ頭をさするようにして振り向くと


「どう?私の実力?」


 照れたように顔をほんのり赤くしてはにかんでいた。

 それに対してガロンはと言うとすぐにルールリアの側まで駆け寄ると彼女の両手を掴み


「すごい!凄すぎですよルーさん!」


 手をブンブンさせながらルールリアに「すごい!」と連呼していた。

 そんなガロンにルールリアは上体を少し逸らしながら一緒に眼を逸らし


「そ、そう?そうかな?!」


 上擦ったようなような声を出しながら耳と尻尾を振っていた。

 そんなルールリアにガロンはさらに言葉を続けた


「半島に凄すぎですよルーさん!俺でもあんな風にスマートに、かつ気づかれる前に一撃で倒すことなんてできませんよ。それにあの洗練された太刀筋!あんな硬い皮膚をしている『ワイルドボア』を刀ならまだしも短剣で切り裂くなんてまさしく達人の領域!それに!」

「わかったわかった!!そこまでにして!!逆に恥ずかしくなってきた!!」


 ルールリアはそう言って未だ繋いでいるガロンの手を外すと後ろを向き顔に手を当てた。その顔は真っ赤ながらもどこか嬉しそうに口角が上がっていた。



 しばらくすると『ワイルドボア』の血が止まったのか、先程まで吹き出していた血の噴水が小さくなり収まっていた。そこまでくると今度は肉質が硬くなるのを防ぐためガロンとルールリアは急いで解体をし、取り敢えず解体した素材をまだ空きのあるガロンの魔法袋の中に収納することにした。








 その後、まだまだ魔法袋の中に空きがあるのを確認したガロンはルールリアに話し、まだ時間もあるため薬草採取から狩に変更することにした。


 樹海の木々を駆け抜け、覚えている限りの依頼書にあった動物や魔物を、次々とルールリアの持つ短剣の一撃必殺で、ガロンの持つ鎌でまるで競うように狩っていくのであった。

 夢中になって狩り続けていくといつの間にか夕刻近くなったのに気づいたガロンとルールリアはキリのいいところで狩をやめ、程よい疲れを抱えてエルドラへと向けて帰路についた。











 そして日も暮れかけたこの時間。冒険者ギルドでは



「な・ん・で・す・か!! これーーー?!!」


 怒っているのかそれとも驚いているのか、ケイティーの大きな声が外まで響いてきた。


 その理由はガロンたちが狩ってきた依頼書の討伐対象の魔物や動物なのだが、問題はその量であった。


「なんでっですかこの量は!!あり得ないでしょう?!!馬鹿なんですか?!!いや馬鹿でしょう!!」

「ちょ?!ケイティー?!なんで確定するの」

「馬鹿じゃなかったらなんなんですかこの討伐対象の量?!!一体全体どうすればこうなるんですか?!!それにあんたら二人の受けた依頼ってなんだったっけ?!!」

「「薬草採取」」

「でしょう?!!一瞬私、違う依頼許可したのかと思って焦ったわ!!」


 そう言ってケイティーはガロンたちの横にある山、高いギルドの天井にも届きそうなほど積み上げられた素材やまだ解体していない魔物や動物の山を見て目眩を覚える。

 そんな素材の山の近くではちょうどほとんどの冒険者が依頼から戻ってきていたということもあり、多くの冒険者たちが素材の山を見上げたり指差したりして人だかりができていた。

 素材の山の根本ではギルドの他の受付嬢がケイティーに呼ばれ総動員で素材の査定をヒイヒイ言いながら一部涙目でやっていた。


 そしてその当の犯人たちは


「いやー、調子に乗りすぎましたねルーさん」

「そうだねガロンくん。まさかいつのまにかこんな量になっていたなんて・・途中から数えてなかったとは言え私の痛恨のミスね」

「いえいえ、何言ってるんですかルーさん。預かっていたのは俺なんだから」

「いやいや、私はガロンくんよりもランクは上だし」

「いえいえ、俺もちょっと調子乗っていたし」

「いやいや・・」

「いえいえ・・」

「いやいや・・」

「いえいえ・・」

「ああ〜もううるさいーー!!いやいやもいえいえもないわよ!!二人とも共犯よ!!」


 謝罪合戦を繰り広げ始めたガロンとルールリアに怒りながらそう叫ぶケイティー。すると


「怒ってばっかだとせっかくの可愛い顔が台無しよ、ケイティー」

「誰?!って!ギルドマスター!!」


 カウンターの横、二階席へと上がる階段をゆっくりと降りてくるその人物がケイティーにそう声をかけるとケイティーは怒り顔のまま声のした方向に顔を向け、次に驚いた表情をしそう叫ぶ


 ギルドマスターと呼ばれたその人物は女性で、透き通るような真っ白な肌と光沢を放つ薄紫の髪、あらゆる男を手玉に取りそうなほどの美貌とそれに釣り合うような放漫な体を持ち、その頭からは特徴的な真っ黒な羊の角が生えていた。

 ギルドマスターと呼ばれたその女性はまるでパーティーに行くかのような黒いドレスの上から真白な毛皮のストールを羽織りハイヒールの足音を鳴らしながらゆっくりと階段を降りカウンターの、正確にはガロンの前まで来ると


「あなたが・・・噂の新人くんね」


 そう言ってガロンに声をかけてきた


「噂の?」


 ガロンはそんな彼女の言葉に、ハテナを浮かべながらそう聞き返すと彼女はクスクスと口に手を当てて笑うと


「ふふふ、ごめんなさいね」

 

 そう言って誰もが振り向くような妖艶な微笑みを浮かべガロンを見た。

 そんな彼女の微笑みを遠巻きながらも見ていた他の冒険者達は男も女も関係なく顔を赤くしてしていた。


 しかしガロンはと言うと


「いえいえ大丈夫ですよ」


 何故か通常通りであった

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