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村人、観察する

「予想って・・ガロンくんは知っていたのこれを(・・・)?!」


 そう言いながら眼を見開きガロンを凝視するルールリア。

 しかしそんなルールリアに、ガロンはあくまで落ち着いて


「知っていたわけではありません。あくまで可能性での話でしたが、まさか当たるとは・・・」


 そう言いながらも声の端からは、なぜか楽しそうな感情が見て取れた。



 ワナワナと震える手でもう一度双眼鏡を目に当てるルールリア。

 

 そして薄らと汗をかきながら口を震わせながら開くと


「そんな、そんな・・・あ、あんなのって・・・」


 そう戦慄した声音を出したかと思うと


「反則でしょ〜〜。あんな可愛いい(・・・・)の〜〜!!」


 打って変わって、蕩けるような表情と声を出しながらそう叫ぶルールリア。

 








 その理由はというと

 

 ルールリアの視線の先、木と木の間の向こう側はちょっとした開いた空間があり、そこには


「「「きゃんきゃん!!」」」

「「「クーン、クン!!」」」

「「「わフュー〜・・」」」


 ふわふわモコモコ、そしてよちよち歩きのまだ生後間もない『ケルベロス』の赤ちゃんが遊んでいた。

 ケルベロスの赤ちゃんは合計三匹おり、一匹は真っ白でもう一匹は逆に真っ黒、最後の一匹は白と黒のツートンカラーと実に愛らしい見た目も相まってルールリアは食い入るようにその三匹を双眼鏡で見ていた。


「はわー〜ー・・私、ケルベロスの赤ちゃんなんて始めて見ましたよ。」


 双眼鏡から眼を離さず、前のめりになりながら蕩けた声でそう言うルールリア。そんなルールリアにガロンは苦笑しながら「そうですか」と答える。


 そんな中しばらくすると三匹のケルベロスの赤ちゃん達が遊ぶのをやめ、ある方向を見たかと思うと物凄い勢いで尻尾を振り出した。

 ルールリアはそんな赤ちゃんたちの視線の先が気になりその方向に双眼鏡を向けると


「ぶふ?!!」


 物凄い勢いで吹き出したかと思うと、慌てて双眼鏡から眼を離しガロンの方を向き


「ちょ、ちょっとガロンくん!!あ、あれって!!」


 そう言いながら震える手でそれを指差した。



 その先には


「ガウア!」


 「ただいま」とでも言っているかのように吠えながら姿を現し、左右の首で咥えていた二匹のボアを地面に‘ドスン!’と落とす、先ほどの純白の『ケルベロス』がいた。

 ルールリアは、この『ケルベロス』を見ていなかったので、遠目から見ても分かるその姿に恐怖を覚える、がそれに対してガロンはと言うと


「ああ、あれが俺がさっき言ってた親の『ケルベロス』ですね」


 そう言って視線の先で姿を現した純白の『ケルベロス』に何のことはないように言うガロン。

 そんなガロンにルールリアは何か言いたげな、かつ焦ったように身振り手振りするが


「親の方はこっちに気づいてるんで今更逃げても遅いですよ?それに逃げるよりもこちらが無害であると言うことを向こうに知ってもらったほうがいいので、大人しくしといたほうがいいですよルーさん。」

 

 そう言って視線を外さずそう言い切ったガロンにルールリアは息を飲む。そしてガロンの言葉に納得したかのように静かに頷くと再び双眼鏡を覗き見る


 双眼鏡を覗くと現在『ケルベロス』たちは食事中のようで、親は三つの頭が順番に辺りを警戒しているのに対しその子供の方は寝そべっている親の乳を競うように一生懸命飲んでいた。


 時折兄弟に邪魔されてコロンと転がってはまたよちよちとおっぱいに近づき頑張って飲もうとしている姿にまたもやルールリアは「可愛いい〜〜」と、言いながら蕩けていっているがガロンは取り敢えず放っておくことにした。



 その後、お腹がいっぱいになったのか、うつらうつらと船を漕いだり大きなあくびをする三匹の『ケルベロス』の赤ちゃんた。

 そんな赤ちゃんたちを親の『ケルベロス』がそれぞれの首で一匹づつ口周りについた汚れなどを舐めとると近くにあった穴、おそらく巣穴だと思われる地面に掘られた大きな穴に運び込み、しばらくすると親の『ケルベロス』だけが出てきてそのまま巣穴の前に陣取るように座り、置いてあったボアのを食べ始めた。


 そこまでの一部始終を見終わるとルールリアは静かに双眼鏡を外しガロンに手渡す。ガロンはルールリアから手渡された双眼鏡を魔法袋に詰めると


「それじゃあ帰りますか?」

「そうね、帰りましょうか」


 ルールリアにそう聞くガロン。

 それに対してルールリはいいものを見れたためか未だ緩むほおを直さずガロンに対してそう返事をする。

 

 するとガロンは「それじゃあまた失礼して」と言いながらルールリアの足と体を持ち上げ先ほどと同じようにお姫様抱っこをする。

 今度は慣れたのかスムーズに抱えられガロンの首に手を廻すルールリアにガロンは特に気にした様子もなく足に力を入れながら「‘ブースト’」と、強化魔法を唱えると『ケルベロス』のいる方向から逆の方に向かって勢いよく飛んで行った。






 その時、ボアを食べていたケルベロスの頭がチラッとこちらを向いたのだがもう既に飛んで行ってしまったガロンたちはそのことに気づくことはなかった。














「あ、そういえばガロンくんさっき双眼鏡使っていなかったけど、何でケルベロスを見ることができたの?」


 抱き抱えられながら移動し、十分離れた位置で降ろされたルールリアはふと気づいたようにガロンにそう聞く。

 ガロンたちが先ほどまでいた場所からケルベロスがいた場所まではかなり距離があったため、双眼鏡など遠眼鏡が無ければ小さなケルベロスの赤ちゃんなど見えないはずなのだが、ガロンは遠眼鏡も覗いていなかったのにルールリアと同じくらい、もしかしたらそれ以上に詳細に見えているかのようであった。


 そんなルールリアに対してガロンはと言うと、何のことじゃないように


「え?『無色魔法』の『瞳属性』の‘千里眼’で見ていたんですが?」


 っと、言っている意味のわからない魔法を使ったことを堂々と言った。



 それに対してルールリアはと言うと


「は?」


 ただその一言を発し頭の上にハテナを浮かべていた。



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