村人、武器屋に行く
冒険者の本登録を終え、奥の部屋から出て来たガロンとルールリア。
そしてそんな二人の後ろから一歩遅れるようにして出てきたケイティーは
「うう〜、痛いよ〜・・」
両方の頬が真っ赤に腫れており、涙目でその頬を両手でさすっていた。
「勝手に人の情報ベラベラと喋るからよ」
「だからって、うら若き乙女の頬を赤くなるまで抓る普通?」
「あなたどうせ言ったて聞かないでしょう?」
「ううー〜、ルールリアが厳しい・・・」
むすっとした表中のままケイティーの方を振り向いたルールリア、そんなルールリアにケイティーは抗議するが、ルールリアの一言に何も言えなくなり、負け惜しみのような恨み言を呟く。
「はははは・・・、まあ今回はケイティーさんが悪かったんですから大人しく受け入れましょう。それよりも本登録が終わったので依頼受けれるんですよね?」
ガロンはそう言いながらカウンターの向こうに移動し、先程持っていた依頼書をもう一度取り出しケイティーの前に差し出す。
ケイティーはそんなガロンに「うう〜、ガロンくんまで・・・世間は厳しい・・・」と、ぼやきながらもガロンから依頼書を受け取り目を通す。
「ええーっと、Fランク依頼で・・『薬草採取』ですね。これだけでいいのですか?なんだったら重複で受けることも可能ですが?」
「ああー、そんなこともできるんですか?それなら・・・」
「いや、ガロンくん、ここは別に無理に受けなくても大丈夫だよ。一応狩った後でも討伐部位を後でギルドに提出すればその依頼は完了扱いになるから無理に受けなくても大丈夫だから。」
「へえ〜、そうなんですかルーさん」
「ちょっと、ルールリア?私の仕事取らないでよ」
「ふふ・・さっきのお返し」
「小さい!小さいよ!ルールリア!!」
ルールリアの小さなお返しにツッコミを入れるケイティー、そしてケイティーは「コホンッ」と、一度咳払いをし
「えー、先程そこのルールリアが言った通り、依頼書に書かれてある討伐対象を狩った際、その討伐部位をギルドに提出すればその依頼は完了となり報償金が出ます。
しかしあくまでそれはクエストボードに依頼書が残っている場合です。別の人がその依頼を受けている場合ですと討伐部位を提出しても報償金は出ませんのでご注意ください。
あっでも素材を持って来たらその素材は買い取りをしますので心配しないでください。それでは依頼の受付を始めますので先程作った冒険者カードを出してください。ついでにルールリアも」
「え?私も?」
「なに?昨日来たばっかの新人くんをあのアルモニア樹海に一人で向かわせるのルールリアは?それにあなた今までパーティー組んでないんだから一度くらい組みなさいよ。それにガロンくんとは知らない中じゃないんだし。いいよねガロンくん?」
「え?俺は別に構いはしませんが・・・」
「よし!なら決まり!さあルールリア、カードを出しなさい」
「わ、わかった・・」
そう言いながら、ガロンとルールリアの冒険者カードを受け取ったケイティーは、手元でガロンの出した依頼書を見ながら何か帳簿のようなものをつけると、カウンター端にあった機械の前まで行きそこにガロンとルールリアの冒険者カードをさし機械のパネルに指を走らせ、しばらくするとカードを機械から取り出しガロンとルールリアの前に差し出す。
「はい、これで依頼の受付は完了です。この依頼は期限はありませんがなるべく早くの納品をお願いします。」
「分かりました」
「分かってるって」
「それでは特別に、いってらっしゃい!」
そう言って受付嬢スマイルでガロン達を送り出すケイティー。
ガロンはルールリアに連れられて一度ギルドの外へ出るとルールリアがガロンの方を振り向き。
「ガロン君、ちょっと付き合ってもらえないかな?」
「?いいですよ」
手を後ろに回しながら上目遣いでそうお願いをするルールリア。ガロンは特に断る理由がなかったし、先ほど受けた依頼も期限はないと言われ余裕があったので二つ返事で了承した。
「良かった!それじゃあついて来て」
そう言ってガロンの手を引いて歩き出すルールリア。ガロンはルールリアの引っ張れるがままに人の行き交う大通りを歩いていく。
途中行き交う人たちがガロン達を、正確にはガロンと手を繋ぐルールリアを見て微笑ましいものを見るような笑顔を見せていたが、ルールリアもガロンも全く気づかないまま大通りを歩いて行った。
大通りをしばらく歩いていくとガロンはすれ違う人たちが微妙に変わっていっているのに気づいた。
先程までは普通の服を着ていたこの街の住民達とよくすれ違っていたが、今のこの道ではそんな住人たちは極端に減り代わりに鎧や剣など武器を帯刀している者たちや、いかにも職人と言わんばかりの人たちが多く行き交っており、先程の大通りとはまた違った熱気に包まれていた。
「ルーさんここは?」
ガロンはこの場所が気になり未だ手を引っ張りながら前を歩くルールリアに質問すると、ルールリアは顔だけを半分だけこちらに向けて答えた
「ここはエルドラの職人街。ここでは冒険者ギルドに所属している冒険者たちの武器や防具を作ってくれる工房が密集している場所なの。ああでも、別に武器防具だけ作っている工房だけじゃないからね?エルドラの人たちが使う家具や服、それに食器や建築に使う木材の加工まで。所謂この街の心臓部と言っても過言ではないのがこの職人街なんだよ!」
「へーーー・・・」
そう言って歩きながらこの職人街のことを教えてくれるルールリアにガロンは納得した顔をしてそう言った。
そうこうしているうちに前を歩いていたルールリアがある一つの武器屋の前まで来るとその扉を開き中に入る
「お邪魔しまーす!おじさんいるー?」
そう言いながら未だガロンの手を引き武器屋の中に入るルールリア。ガロンはそんなルールリアに続くように店の中に入ると辺りを見渡す。
武器屋は壁も床も石造りで天井は木であるが火で炙って燃えにくく工夫されていた。そして店の中は武器屋と言うだけあってあたり一面に様々な武器が置いてあった。樽の中に無造作に入っていたり棚や壁に掛けていたりと置き方は様々だがドアから入ってすぐの目の前、カウンターの奥に飾られるように置いてある数種類の武器はガロンでも名品とわかるほどのオーラを放っていた。
「だれだー?おおー!ワンコの嬢ちゃんじゃねえか!!どうした?!」
野太い声を出しながらカウンター奥の部屋から出て来たのは、長い髭に樽体型、典型的なドワーフのおっさんであった。
おっさんは部屋から顔を覗かせルールリアを見た瞬間そう言いながら店のカウンターの部分に肘をかける。
「急にごめんなさいおじさん。ちょっと武器を新調したくって・・・」
「ああ?この前新調したばっかじゃなかったか?なんだ無くしたのか?」
「えっとその・・・折れちゃって・・ははは・・」
ルールリアは力無く笑いながら腰から短剣を鞘ごと外し折れた刀身をおっさんに見せた。
おっさんは折れた短剣を見て目を見開き声を荒げる。
「はーー〜?!!古くなったらまだしも新品だったろこれ?!!」
そう言いながらルールリアの持っている折れた短剣をひったくるように手に持つと、その折れた刀身をマジマジと見て検分し、呟いた。
「こりゃあ劣化じゃねえ・・それ以上の強い力と硬いもので折れてやがる・・・嬢ちゃん、一体何とやりやがった?」
鋭い視線を向けながらルールリアを見るおっさん。そんなおっさんにルールリアは昨日のことを話す。
しばらくして話を聞き終わったおっさんは静かに目を閉じて何か考えるように上を見ると
「よし、わかった。ならこれよりもっと頑丈なのを出してやろう!待ってな!!」
そう言って店の奥に消えていった。
そんなやり取りの間ガロンはと言うと
「おおー・・樽の中の安い武器でもかなりいいな・・・あっこれ料理するときにいいかも」
店の中の武器を物色していた。・・・・使い方は別として




